(完結)その『悪役令嬢』は幸せを恋い願う

玉響なつめ

文字の大きさ
42 / 56

第41話 それぞれが歩む道

しおりを挟む
 それから程なくして、私とレオンは婚約発表をしました。
 結婚式は来年の夏頃に予定しています。

 マルス様の婚約者が来年の秋頃にこの国を訪れるからその前に式を挙げるよう、そう陛下からお言葉を賜りました。
 どうやら陛下は嫁いでくる南方の公女様の国内後見を、ワーデンシュタイン公爵家に任せるおつもりらしい。

 公女様が嫁いで来るのは当然ながらもっと先の話だが、この国に滞在する間は王城で……そして傍で歓待するのは、王妃でも第二妃でもいけないということなのでしょう。
 妃殿下方からすれば面白くないでしょうが、アベリアン殿下の件であれこれと派閥が揺れ、ここで妃殿下方が我が儘・・・を通そうものなら……盤上の駒は簡単にひっくり返るのでしょうか?

 我が家としては厄介なことこの上ないとため息が出てしまう話ですが、我が家と別の公爵家は妥当な人員がいませんので仕方がないでしょう。
 コリーナ様がいればよろしかったのでしょうが、あの方は嫁いで隣国と縁があるわけですし……一つの家に他国との繋がりを偏らせるわけにはまいりません。

 少なくとも同格の貴族が望ましいでしょうが、そうなるとあとは男性か、年上の方ばかり。
 結果としてワーデンシュタイン公爵家以外にはいないということになるのでしょう。
 そこで婚姻を済ませていることが必要になるのだと思います。
 そうすることによって、他国からの縁談が舞い込むことはございませんもの。

 しかもその相手が没落貴族の子息であり、我が家の家人……ということで国内貴族は不満を呑み込むしかなくなるというわけです。

 まったく、どこまでが陛下の手の平なのでしょう?
 王妃様も第二妃様も、陛下と愛を育まれていれば今頃とんでもなく幸せな王家ができあがっていたような気がしないでもありませんが……まあ、そんなことを考えても仕方ありませんね。

「レオン、どうだった?」

「……殿下は本当に諦めが悪いな。もう卒業間近なのだろう?」

「そのはずだけれど……イザークから返事は?」

「まだ来ていない。あいつもそろそろ年末考査で勉学が忙しいんだと思う。この間の連絡じゃ、イザークが子爵家に戻ったからかアベリアン殿下は一切無視してくるとあったからな」

「そう……」

 ここ最近、また殿下が面会を申し込んでくるようになったのです。
 それも、私に対して。

 初めは曖昧にお断りしていたのですが、あまりにもしつこくて……円満に解消したとは言えない関係だから、会いたいと言われるのも迷惑だと一度はっきりお断りもしたのです。
 それでも止まなくてお父様にもご相談したのですが……。

 どうやら殿下は、学園での言動以前に成績の下がり方で卒業を待たずに爵位と所領について決定したらしく。
 それらを陛下から言い渡されたから困っている……とのことでした。

 私への手紙は基本的に面会の申し込みをする内容ばかりで他は特に意味も無く、最近ではレオンが全て変わって断りの手紙を書いてくれています。

「まったく……婚約発表も済ませているのに、どうして私が会うと思っているのかしら」

「婚約をしたから俺が傍にいれば問題ないとでも考えたんじゃないか?」

「それでも普通、あんな騒ぎを起こした相手に会いに来るかしら」

「謝罪がしたいとか?」

「それならまずは文章でよこすのではなくて?」

「まあな」

 そうです、あの日のことを謝罪もなくただ会いたいとか!
 いえ、謝罪をされても今更……という感じなのですが、礼節というものがあるでしょう?

 本当に何を考えているのかさっぱりわかりません。

 最低限の礼節も尽くさず、再度の醜聞になるかもしれない行動をとってまで地位と名誉にしがみつきたいのでしょうか。
 そんなことをしたら余計に失うものの方が大きいと、普通に考えたらわかりそうなものですが……。

「……他に頼るあてもないんだろ」

「だとしてもよ?」

 あれだけ私のことを蔑ろにしておいて、今更縋られても困ると言いますか。
 レオンも呆れつつ笑っています。

 その件に関してはイザークも呆れているようで……ああ、ちなみに反省してからのイザークは元々優秀だっただけあって、今では学年トップになっているようです!
 周囲の目は相変わらず厳しいものはありますし、恋人もいないようですが……それでもきちんと『自分なりに将来を見据えて、文官試験を受けるつもりでいます』と書いてくれていたので……。

 いずれ子爵家を出て平民になってもイザークならばきっと文官試験に合格して、良い人に巡り会えると私は信じています!

「……早く、殿下も目を覚ましてくださればいいのに」

 思わずそんなことを呟いてしまいましたが、レオンは聞かない振りをしてくれたのでした。
しおりを挟む
感想 45

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されたのでファンシーショップ始めました。 ― 元婚約者が、お人形さんを側室にしようとして大恥をかきました ―

鷹 綾
恋愛
隣国の王子から「政略的にも個人的にも魅力を感じない」と婚約破棄された、ファンタジア王国第三女王タナー。 泣きも怒りもせず、彼女が考えたのは――「いつか王宮の庇護がなくなっても困らない生き方」だった。 まだ八歳。 それでも先を見据え、タナーは王都の片隅で小さなファンシーショップを開くことを決意する。 並ぶのは、かわいい雑貨。 そして、かわいい魔法の雑貨。 お茶を淹れてくれるクマのぬいぐるみ店員《テイデイ・バトラー》、 冷めないティーカップ、 時間になると小鳥が飛び出すアンティーク時計――。 静かに広がる評判の裏で、 かつての元婚約者は「お人形さんを側室にしようとして」赤っ恥をかくことに。 ざまぁは控えめ、日常はやさしく。 かわいいものに囲まれながら、女王は今日も穏やかにお店を開けています。 --- この文面は ✔ アルファポリス向け文字数 ✔ 女子読者に刺さるワード配置 ✔ ネタバレしすぎない ✔ ほのぼの感キープ を全部満たしています。 次は 👉 タグ案 👉 ランキング用超短縮あらすじ(100字) どちらにしますか?

処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜

放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!? 「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」 不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

婚約者様への逆襲です。

有栖川灯里
恋愛
王太子との婚約を、一方的な断罪と共に破棄された令嬢・アンネリーゼ=フォン=アイゼナッハ。 理由は“聖女を妬んだ悪役”という、ありふれた台本。 だが彼女は涙ひとつ見せずに微笑み、ただ静かに言い残した。 ――「さようなら、婚約者様。二度と戻りませんわ」 すべてを捨て、王宮を去った“悪役令嬢”が辿り着いたのは、沈黙と再生の修道院。 そこで出会ったのは、聖女の奇跡に疑問を抱く神官、情報を操る傭兵、そしてかつて見逃された“真実”。 これは、少女が嘘を暴き、誇りを取り戻し、自らの手で未来を選び取る物語。 断罪は終わりではなく、始まりだった。 “信仰”に支配された王国を、静かに揺るがす――悪役令嬢の逆襲。

【完結】亡くなった婚約者の弟と婚約させられたけど⋯⋯【正しい婚約破棄計画】

との
恋愛
「彼が亡くなった?」 突然の悲報に青褪めたライラは婚約者の葬儀の直後、彼の弟と婚約させられてしまった。 「あり得ないわ⋯⋯あんな粗野で自分勝手な奴と婚約だなんて! 家の為だからと言われても、優しかった婚約者の面影が消えないうちに決めるなんて耐えられない」 次々に変わる恋人を腕に抱いて暴言を吐く新婚約者に苛立ちが募っていく。 家と会社の不正、生徒会での横領事件。 「わたくしは⋯⋯完全なる婚約破棄を準備致します!」 『彼』がいるから、そして『彼』がいたから⋯⋯ずっと前を向いていられる。 人が亡くなるシーンの描写がちょっとあります。グロくはないと思います⋯⋯。 ーーーーーー ゆるふわの中世ヨーロッパ、幻の国の設定です。 完結迄予約投稿済。 R15は念の為・・

クリスティーヌの本当の幸せ

宝月 蓮
恋愛
ニサップ王国での王太子誕生祭にて、前代未聞の事件が起こった。王太子が婚約者である公爵令嬢に婚約破棄を突き付けたのだ。そして新たに男爵令嬢と婚約する目論見だ。しかし、そう上手くはいかなかった。 この事件はナルフェック王国でも話題になった。ナルフェック王国の男爵令嬢クリスティーヌはこの事件を知り、自分は絶対に身分不相応の相手との結婚を夢見たりしないと決心する。タルド家の為、領民の為に行動するクリスティーヌ。そんな彼女が、自分にとっての本当の幸せを見つける物語。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

婚約破棄されたので、戻らない選択をしました

ふわふわ
恋愛
王太子アルトゥールの婚約者として生きてきた 貴族令嬢ミディア・バイエルン。 だが、偽りの聖女シエナに心を奪われた王太子から、 彼女は一方的に婚約を破棄される。 「戻る場所は、もうありませんわ」 そう告げて向かった先は、 王都から遠く離れたアルツハイム辺境伯領。 権力も、評価も、比較もない土地で、 ミディアは“誰かに選ばれる人生”を静かに手放していく。 指示しない。 介入しない。 評価しない。 それでも、人は動き、街は回り、 日常は確かに続いていく。 一方、王都では―― 彼女を失った王太子と王政が、 少しずつ立ち行かなくなっていき……? 派手な復讐も、涙の和解もない。 あるのは、「戻らない」という選択と、 終わらせない日常だけ。

婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました

Blue
恋愛
 幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。

処理中です...