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8 実践を試みる私
さて、計画を立てたならあとは実践あるのみ。
私は数日前までとは打って変わって、晴れやかな気持ちで起床することができた。
ああやって計画を練ることで自分の気持ちにもきっと折り合いが上手くついたのだろう。
それまではああでもないこうでもないとグズグズ自分の悪いところばかり目がいって、なんの解決にもならない反省ばかりしていたのだ。
(そうよ、よく考えたら嫌われていないだけマシだわ)
断れない縁談だからってキリアンも嫌いな相手と結婚するなんてさすがに言わないだろう。
自分の目で見たことはないけれど、お兄様によれば彼はかなりそういう面で好き嫌いがはっきりした性格だから、どうしても受け入れられない場合はお父様に言っていたはず。
それを考えれば、私は初恋の人と結婚できるのだ。
好かれていなくても嫌われていない――そう、私が欲をかきさえしなければ、幸せなことじゃないか。
夫となる人は騎士爵を持ち、将来を有望視される見目良い人。
兄の友人という立場もあって、きっと不義理な真似はしないだろうからいずれ授かる子供たちには良き父として、そして私に対しては良き夫として接してくれるに違いない。
(……恋人のように、甘い関係さえ望まなければ。平和で穏やかな結婚生活になるはずだわ……)
そのためには私の恋心なんて、ガッチガチに封じ込めるのが一番なのよ。
欲張らなければ好きな人の傍にいられるのよ?
「お嬢様、おはようございます」
「おはよう、ナナネラ」
ナナネラに支度してもらって部屋を出る。
きっと朝食の場にはすでにお兄様とキリアンもいることだろう。
いつもの私だったらみんなに挨拶をしたらキリアンにばかり話しかけて、今日この後の予定を聞いたり時間に余裕があるなら一緒に過ごさないかって言うところだけど……。
それを! しない!
……という確固とした決意を持って臨みたいわ。
(キリアンを前に、ちゃんとできるかしら……)
いいえ、いざって時はお兄様に話を振ればなんとかなるでしょう。
きっと、ええ、きっと!
そんな決意を持って食堂に向かえば、案の定お兄様とキリアンが先に来ていた。
二人はいつも早起きなのよね……城勤めのおかげだってお兄様は仰るけれど、それを言ったらお父様もそのはずなんだけどなあ。
「おはようございます。お兄様、キリアン」
いつものように。いつものように笑顔よ、フィリア!
でも『いつもの』って思えば思うほど表情筋が固くなっているのは気のせいかしら?
そもそも私はいつも笑顔で挨拶していたっけ!?
それとももっとデレデレしていたかしら……ああやだ、そんなこと考えたら恥ずかしくなってきちゃった!
もしみっともない表情でキリアンにまとわりついていたんだとしたら、そりゃ彼だって呆れるわよね……。やだもう!
最後に両親が来て、和やかな朝食の時間を送れたと思う。
私は食べ終わってついまたキリアンに話しかけようとしてしまって、自分でも習慣になっているんだって衝撃だった。
「フィリアは今日の予定はどうだ?」
「わ、私は……あの、家庭教師の件でいくつかお手紙を書いたり調べ物があるので調べ物をしに行こうかと」
「おいおい、せっかく婚約者が来ているんだぞ?」
「ソ、ソウデスネ……」
普段なら『ナイスアシスト!』と心の中で喜べるはずのお兄様の言葉だけれど、今は喜べない。
だって! 距離を置こうとようやく決めたのに!!
困惑する私を、キリアンが睨むように見ている。
ああー……またコイツ鬱陶しいなあとか思われていたらどうしよう!
それとも昨日『避けている』って言っていたことについて、苦情があるのかしら……。
うん……じゃあ、もう腹を括ろう。それしかない。
「……キリアンの時間に余裕があるなら、庭園を散歩でもしませんか」
「ああ」
私の提案に、キリアンはいつものように短く応じる。
そしてすっと差し出される腕に、私もそっと手を添えた。
(プラン変更よ!)
キリアンの負担になるかと思って黙って実行しようと思ったけれど、彼にこれまでのことを謝罪して少しでも好感度を上げる良いチャンスだと気持ちを切り替えていかなくっちゃ!!
私は数日前までとは打って変わって、晴れやかな気持ちで起床することができた。
ああやって計画を練ることで自分の気持ちにもきっと折り合いが上手くついたのだろう。
それまではああでもないこうでもないとグズグズ自分の悪いところばかり目がいって、なんの解決にもならない反省ばかりしていたのだ。
(そうよ、よく考えたら嫌われていないだけマシだわ)
断れない縁談だからってキリアンも嫌いな相手と結婚するなんてさすがに言わないだろう。
自分の目で見たことはないけれど、お兄様によれば彼はかなりそういう面で好き嫌いがはっきりした性格だから、どうしても受け入れられない場合はお父様に言っていたはず。
それを考えれば、私は初恋の人と結婚できるのだ。
好かれていなくても嫌われていない――そう、私が欲をかきさえしなければ、幸せなことじゃないか。
夫となる人は騎士爵を持ち、将来を有望視される見目良い人。
兄の友人という立場もあって、きっと不義理な真似はしないだろうからいずれ授かる子供たちには良き父として、そして私に対しては良き夫として接してくれるに違いない。
(……恋人のように、甘い関係さえ望まなければ。平和で穏やかな結婚生活になるはずだわ……)
そのためには私の恋心なんて、ガッチガチに封じ込めるのが一番なのよ。
欲張らなければ好きな人の傍にいられるのよ?
「お嬢様、おはようございます」
「おはよう、ナナネラ」
ナナネラに支度してもらって部屋を出る。
きっと朝食の場にはすでにお兄様とキリアンもいることだろう。
いつもの私だったらみんなに挨拶をしたらキリアンにばかり話しかけて、今日この後の予定を聞いたり時間に余裕があるなら一緒に過ごさないかって言うところだけど……。
それを! しない!
……という確固とした決意を持って臨みたいわ。
(キリアンを前に、ちゃんとできるかしら……)
いいえ、いざって時はお兄様に話を振ればなんとかなるでしょう。
きっと、ええ、きっと!
そんな決意を持って食堂に向かえば、案の定お兄様とキリアンが先に来ていた。
二人はいつも早起きなのよね……城勤めのおかげだってお兄様は仰るけれど、それを言ったらお父様もそのはずなんだけどなあ。
「おはようございます。お兄様、キリアン」
いつものように。いつものように笑顔よ、フィリア!
でも『いつもの』って思えば思うほど表情筋が固くなっているのは気のせいかしら?
そもそも私はいつも笑顔で挨拶していたっけ!?
それとももっとデレデレしていたかしら……ああやだ、そんなこと考えたら恥ずかしくなってきちゃった!
もしみっともない表情でキリアンにまとわりついていたんだとしたら、そりゃ彼だって呆れるわよね……。やだもう!
最後に両親が来て、和やかな朝食の時間を送れたと思う。
私は食べ終わってついまたキリアンに話しかけようとしてしまって、自分でも習慣になっているんだって衝撃だった。
「フィリアは今日の予定はどうだ?」
「わ、私は……あの、家庭教師の件でいくつかお手紙を書いたり調べ物があるので調べ物をしに行こうかと」
「おいおい、せっかく婚約者が来ているんだぞ?」
「ソ、ソウデスネ……」
普段なら『ナイスアシスト!』と心の中で喜べるはずのお兄様の言葉だけれど、今は喜べない。
だって! 距離を置こうとようやく決めたのに!!
困惑する私を、キリアンが睨むように見ている。
ああー……またコイツ鬱陶しいなあとか思われていたらどうしよう!
それとも昨日『避けている』って言っていたことについて、苦情があるのかしら……。
うん……じゃあ、もう腹を括ろう。それしかない。
「……キリアンの時間に余裕があるなら、庭園を散歩でもしませんか」
「ああ」
私の提案に、キリアンはいつものように短く応じる。
そしてすっと差し出される腕に、私もそっと手を添えた。
(プラン変更よ!)
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