対ソ戦、準備せよ!

湖灯

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★vs張学良★

【張学良VS柏原④】

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 目の前を強い光が横切り、慌てて飛行機の操縦桿を切る。

 光の筋はまるで獲物を探す竜のように、うねうねと暗い夜空を漂い、やがて二本三本と増えてゆく。

 やがてその一本が私の機を捉えると、他の光も私が操縦する飛行機に集まり一本の太い光の束となる。

 真っ暗な夜空の景色が真っ白な光の闇に包まれ、それまで見えていた計器類が真っ暗になる。

 光の逆転⁉

 いやコレはサーチライトだ!

 九四式水偵の上空で大きな赤い光が開き、すぐそのあとで機体が揺れ、ドーンという破裂音が響く。

 “敵の偵察機と間違われている!”

 私は高度を下げ、主翼下に付いた日の丸がよく見えるように機体を左右に揺さぶる。

 しかし味方の誤射は止まないばかりか、機銃弾も浴びせられ激しくなるばかり。

「味方だ! 日本軍だ‼」

 大声で叫ぶが、地上に居る彼らには届かない。

 カンカンカンカン。

 機体のあちこちに機銃弾が当たり、その直後にドンという鈍い音とともに、強い衝撃と熱が伝わって来た。

 “燃料タンクに被弾した”

 振り向くと、後方はもう火だるま。

 火災のせいで既に水平尾翼のエレベーターが利かなくなり、激しくなるピッチング(機体の縦揺れ)が制御できない。

 操縦桿を目一杯引くが、高度は下がり続けるだけ。

 次の瞬間、また爆発が起こり、急に機首が持ち上がる。

 操縦桿が効いたのではなく、機体の後部を失って翼の抵抗で一時的に機首が持ち上がったのだ。

 あとはクルクルと回りながら、地面に落ちるだけ。

 “薫さん! 薫さん‼”

 機体から空に放り出された私は、薫さんの名を叫んでいた。





     *



「やあ、起きたね」

「薫さん?」



 辺りを見ると、そこは眩しい光が差す部屋の中だった。

 どうやら日が変わったらしい。

 何故か頭がズキズキと痛み、目の焦点も合わずにぼやけて見える。



「ここは? そして今日は何日だ?」

「ここは君が目指していた場所、そして今日は1月10日、現在時刻は14時30分だ。君を捕まえてから、もう20時間も経過した」



 “私が目指していた場所? 私は張学良軍の兵士に囲まれて……”



「貴方は、もしかして……」

「そう。君のお目当ての人物、張学良だ。大本営の柏原中佐」



 “張学良!”

 私は遂に彼と会うことが出来た!

 しかも生きたまま。

 この先の運命は分からないが、生きたまま会えたことは嬉しい。

 たとえこのあとで処刑される運命が待っていたとしても、生きている限り私の想いを彼に伝えることが出来る。



 部屋には張学良と私の2人しか居なかったが、隣の部屋には人の気配がした。

 おそらく何かあったときのために控えているのだろう。



 私は横になっているわけにはいかないと思い、体を起こす。

 “うっ!”

 わき腹に激しい痛みが走った。



「無理をするな、肋骨が折れているんだぞ」

「肋骨が、折れている……」



 そういえば私は兵士たちに囲まれて、リンチに遭っていたはず。

 なぜ助かった?



「まったく無茶なヤツが居たものだよ。何の前触れもなく単身乗り込もうとするなんて。部下の到着が少しでも遅れていたら君、死んでいたかもしれないんだぞ」

 “部下の到着?……兵士たちと格闘中に聞こえたあの叫び声は、私を助けに来た張学良の部下の声だったのか?”



「なぜ、私を助けた?」

「馬鹿の顔を見たくなってな」



 張学良はそう言うと、煙草に火をつけて深く吸い、ふぅ~っと煙をはいた。
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