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6章
帰宅後
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「そろそろ家だ」
「あれだね」
駅を出て少し歩く。そして家が見えてくる。朝から出て、今が大体午後の4時。まだまだゆっくりできる時間だ。駅を出てから川沿いの道に出る。そこから歩いて5分で賢の家に到着した。
「ただいま」
「ただいまー、楽しかった!」
「そりゃ良かった」
「卵焼き作る?」
「その前に一休みだな」
「はーい」
家に着いて靴を脱ぐなり仁はやる気満々だった。しかし、賢は少しだけ休みたい。キッチンを抜けて部屋に入る。前よりは片付けたけれど、片付けそのものが完全に終わったわけではない。荷物の塊を見ながら床に座る。仁もそれに続いて床に座り、一息つく。
「ふぅ」
「ひと段落だね」
「そうだな」
賢の部屋で2人で座る。向かい合っているわけではないが、そんな状況だからこそ、2人でいられることが素晴らしいのだと思い直す。
やりたいこと全てができるわけじゃない。だから、できることをできるうちにやっておくことが大事なんだ。
2人とも無言のまま時間だけが過ぎて行く。しかし、その時間も不快ではない。大切な2人の時間として、刻んでいく。10分ほど経過した頃、賢が立ち上がる。
「そろそろやるか」
「やる」
2人とも立ち上がり、キッチンに向かう。狭い廊下に立ちながら、卵焼き用のフライパンを用意する。溶き卵を作るための容器と卵も用意する。
「この容器に卵を割ります」
「うん」
「その後に箸で混ぜます」
卵焼き作りがスタートする。仁がどこまで料理が出来ないのかわからない。仁が卵を割って溶き卵を作ったタイミングで、ガスコンロに火をつけて油を敷く。
「フライパンを傾けながら、油を全体に馴染ませる」
「うん」
「そしたら卵を入れる」
「うん」
「卵がフライパンの全面に均一になるようにする」
「こんな感じ?」
「そうそう。焼けてきたら、箸で奥側からひっくり返す」
「こんな感じか」
「そうそう、いい感じ」
「よし、ひっくり返った」
「あとはこれを繰り返す」
「分かった!」
「あ、後、ひっくり返した後の卵は奥側に追いやる」
「よし」
綺麗な卵の焼かれた面が見えている。そして、もう一つ言い忘れたことがあるのを思い出し、2回目の卵を入れた仁に伝える。
「後、2回目以降の卵は、前回の卵の下に潜らせるんだよ」
「あ、それだけ何となくわかる」
「なんでそこだけ知ってるんだ」
「分からない」
「そっか」
「でも、それ以外は賢が教えてくれたから上手くできそう」
「そうか?楽しみだ」
仁はニコニコしながら、なおも卵焼きを焼いていく。初めてに近い状態でこれなら素質はある。成長が楽しみだった。
4回ほど卵を流し入れ、すべての卵を使い切って、巻き切ったところで卵焼きの完成。皿に盛り付けて、テーブルに持っていく。ガスコンロの火を忘れず切ってから、賢も部屋に向かう。2人とも落ち着いて座ってから、食べ始める。
「いただきます」
「いただきまーす」
「美味しい!」
「うん、美味しいな」
「料理、これからも頑張れそう」
「そりゃ嬉しい。頑張ろうな」
「うん」
2人で卵焼きを食べる。卵の甘味がよく出ている。油っぽさもない。卵焼きを食べながら、2人でゆったりとした甘い時間を過ごす。窓の外から見える景色が、少しずつ夕焼けに変わっていくのを見ながら。
「今から何しよう」
「ごろごろする」
「ごろごろするか」
「いいでしょ?」
「あぁ、いいぞ」
仁と2人で部屋に座ってのんびりしている。今の時刻は16時過ぎ。卵焼きを食べるために置いた机を片付け、布団を敷く。そこに仁が入る。
「はー幸せ」
「ゴロゴロするのが幸せ、わかるよ」
「賢もゴロゴロしよう」
「おうともよ」
賢も寝転がるためにベッドに登る。そして、布団を捲って中に入る。いつも変わらぬ心地よさがそこにはある。
「布団に入ったらなんだか眠くなってきた」
「俺もだ」
「ちょっとだけ寝る?」
「寝るか」
「それじゃ、おやすみ」
「おやすみー」
朝からてんこ盛りの予定だった。昼ごはんを食べた後に卵焼きも食べて満腹の昼下がり。2人とも疲労と相まって眠気が来ていたのだ。せっかくの5連休。贅沢な時間があってもいい。ベッドの上から見た感じで言えば、仁はすでに眠りに落ちている。眠かったのだろうか。横になってぐっすり寝ている仁を見ながら、部屋の電気を消す。次起きる時はおそらく晩御飯だと思いながら、眠りについた。
「あれだね」
駅を出て少し歩く。そして家が見えてくる。朝から出て、今が大体午後の4時。まだまだゆっくりできる時間だ。駅を出てから川沿いの道に出る。そこから歩いて5分で賢の家に到着した。
「ただいま」
「ただいまー、楽しかった!」
「そりゃ良かった」
「卵焼き作る?」
「その前に一休みだな」
「はーい」
家に着いて靴を脱ぐなり仁はやる気満々だった。しかし、賢は少しだけ休みたい。キッチンを抜けて部屋に入る。前よりは片付けたけれど、片付けそのものが完全に終わったわけではない。荷物の塊を見ながら床に座る。仁もそれに続いて床に座り、一息つく。
「ふぅ」
「ひと段落だね」
「そうだな」
賢の部屋で2人で座る。向かい合っているわけではないが、そんな状況だからこそ、2人でいられることが素晴らしいのだと思い直す。
やりたいこと全てができるわけじゃない。だから、できることをできるうちにやっておくことが大事なんだ。
2人とも無言のまま時間だけが過ぎて行く。しかし、その時間も不快ではない。大切な2人の時間として、刻んでいく。10分ほど経過した頃、賢が立ち上がる。
「そろそろやるか」
「やる」
2人とも立ち上がり、キッチンに向かう。狭い廊下に立ちながら、卵焼き用のフライパンを用意する。溶き卵を作るための容器と卵も用意する。
「この容器に卵を割ります」
「うん」
「その後に箸で混ぜます」
卵焼き作りがスタートする。仁がどこまで料理が出来ないのかわからない。仁が卵を割って溶き卵を作ったタイミングで、ガスコンロに火をつけて油を敷く。
「フライパンを傾けながら、油を全体に馴染ませる」
「うん」
「そしたら卵を入れる」
「うん」
「卵がフライパンの全面に均一になるようにする」
「こんな感じ?」
「そうそう。焼けてきたら、箸で奥側からひっくり返す」
「こんな感じか」
「そうそう、いい感じ」
「よし、ひっくり返った」
「あとはこれを繰り返す」
「分かった!」
「あ、後、ひっくり返した後の卵は奥側に追いやる」
「よし」
綺麗な卵の焼かれた面が見えている。そして、もう一つ言い忘れたことがあるのを思い出し、2回目の卵を入れた仁に伝える。
「後、2回目以降の卵は、前回の卵の下に潜らせるんだよ」
「あ、それだけ何となくわかる」
「なんでそこだけ知ってるんだ」
「分からない」
「そっか」
「でも、それ以外は賢が教えてくれたから上手くできそう」
「そうか?楽しみだ」
仁はニコニコしながら、なおも卵焼きを焼いていく。初めてに近い状態でこれなら素質はある。成長が楽しみだった。
4回ほど卵を流し入れ、すべての卵を使い切って、巻き切ったところで卵焼きの完成。皿に盛り付けて、テーブルに持っていく。ガスコンロの火を忘れず切ってから、賢も部屋に向かう。2人とも落ち着いて座ってから、食べ始める。
「いただきます」
「いただきまーす」
「美味しい!」
「うん、美味しいな」
「料理、これからも頑張れそう」
「そりゃ嬉しい。頑張ろうな」
「うん」
2人で卵焼きを食べる。卵の甘味がよく出ている。油っぽさもない。卵焼きを食べながら、2人でゆったりとした甘い時間を過ごす。窓の外から見える景色が、少しずつ夕焼けに変わっていくのを見ながら。
「今から何しよう」
「ごろごろする」
「ごろごろするか」
「いいでしょ?」
「あぁ、いいぞ」
仁と2人で部屋に座ってのんびりしている。今の時刻は16時過ぎ。卵焼きを食べるために置いた机を片付け、布団を敷く。そこに仁が入る。
「はー幸せ」
「ゴロゴロするのが幸せ、わかるよ」
「賢もゴロゴロしよう」
「おうともよ」
賢も寝転がるためにベッドに登る。そして、布団を捲って中に入る。いつも変わらぬ心地よさがそこにはある。
「布団に入ったらなんだか眠くなってきた」
「俺もだ」
「ちょっとだけ寝る?」
「寝るか」
「それじゃ、おやすみ」
「おやすみー」
朝からてんこ盛りの予定だった。昼ごはんを食べた後に卵焼きも食べて満腹の昼下がり。2人とも疲労と相まって眠気が来ていたのだ。せっかくの5連休。贅沢な時間があってもいい。ベッドの上から見た感じで言えば、仁はすでに眠りに落ちている。眠かったのだろうか。横になってぐっすり寝ている仁を見ながら、部屋の電気を消す。次起きる時はおそらく晩御飯だと思いながら、眠りについた。
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