軌跡 Rev.1

ぽよ

文字の大きさ
90 / 107
6章

しおりを挟む
 ふと目が覚めた。外の景色は少しずつ夕焼けから夕闇に変わりつつあった。
 ベッドの上で転がりながらスマートフォンを探す。充電コードに刺さっていたはずが抜けている本体を探す。
 ゴソゴソと布団を漁って、足元の近くにあるスマートフォンを手で取り画面を見る。17時30分と表示されていた。2時間くらい寝ていたということになる。ベッドの下を覗き込むと、仁が布団でまだ寝ている姿が見えた。起こさないように、踏まないようにベッドから降りて冷蔵庫を開けにいく。
 冷蔵庫を開けて、作り置きの麦茶を取り出す。コップに注いで飲んでから食材の確認。今日の晩御飯には何を作るか。玉ねぎ、豚肉、にんじん、ピーマン。もはや作るメニューは一つしか浮かばなかった。野菜炒めだ。
 豚肉が入っていても野菜炒めに入るのかは賢にはわからなかったが、きっと不味くはならないと言い聞かせて、冷蔵庫の蓋を閉じる。そのとき、仁が起きてきた。

「おはよう、結構しっかり寝た気がする」
「おはよう、よく寝てたね」
「うん、スッキリしたけど夜寝れるかな」
「それは分からんな」
「だよね。ところでなんで冷蔵庫?」
「麦茶を飲むのと今日の晩御飯だ」
「なるほどね」、今日の晩御飯は決まった?」
「野菜炒めかなー」
「なるほどね」
「ま、もうちょっとしたら作るかな」
「はーい」

 冷蔵庫の前から退散して、ベッドに戻る。布団の中に入って寝転がりながら仁に話しかける。

「明日も繁華街だけど今日とは違って本屋に行く予定にしてる」
「本屋かぁ、久しぶりな気がする」
「ここ最近バタバタしてたしな」
「2人ともね」
「ま、勉強のことを忘れて好きな本を見にいくのも楽しいんじゃないか」
「そうだね、そうしよう!」

 賢の卒論もひと段落したし、仁はこの5連休くらい勉強を忘れたいと言っていた。ついつい勉強の話題に触れそうになるが、今はその時ではない。ゆっくりと、じっくりと。いつのまにか真っ暗になっていた空を見る。もうそんな時間が経過したのかと思いながら夕食を作る。
 野菜を適当に切って、油を敷いたフライパンで炒めていく。
 卵焼きやハンバーグとは違う楽な炒め物だった。適当に作って、冷凍してあったご飯をレンジで温めれば夕食を食べられる。

「一人暮らしでご飯炊くと冷凍保存になるんだ」
「毎日1合ずつなんて炊いてられないからな」
「確かに」

 皿に盛って、ご飯も温めれば、夕食の完成だ。2人で食べながらいろんな話をした。これからの2人の姿として、どうあるべきなのかも話をした。

「ご飯も食べ終わったし、あとは寝るだけだ」
「ゆったりまったりだね」
「今日1日すごく長かった気がするな。繁華街に付き合ってもらってから帰ってきて卵焼き作って昼寝だもんな。充実した1日だった」
「本当にそうだね!俺も楽しかった」
「おう、そりゃよかったぜ」
「そういえば、同棲したらなんだけどさ」
「どうした?」
「賢と一緒にベッドに入って寝てもいい?」
「おう、別に構わんが、夏は暑いぞ」
「多分大丈夫だよ。多分」

 少しだけ笑いながら仁はとても嬉しそうな顔をした。賢が今、寝転がっているベッドは2人以上で寝たことがない。正直耐久面が不安ではある。しかし木で出来ている訳でもなければ、ギシギシというような音も鳴ったことがないので、大丈夫だと思いたい。
 仁と2人で寝ることになったら、俺は冷静でいられるのだろうか。ということも考えながら、ベッドで転がる。部屋に静寂が訪れたかと思ったら、仁が話し始めた。

「2人で本格的に同棲が始まったら、出来ることとか、出来ないこととか、いっぱい出てくると思うんだけどさ」
「うん」
「それでも、しっかり前に進んでいこうね」
「そうだな。時には仁に頼ることもあるだろうが、よろしく頼む」
「うん、こちらこそ」

 5連休の2日目はこうして終わっていく。ゆっくりと。まったりと。しかし2人の夜はまだ終わった訳ではない。楽しく話をする夜は、まだまだ続く。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

番に見つからない街で、子供を育てている

はちも
BL
目を覚ますと、腕の中には赤ん坊がいた。 異世界の青年ロアンとして目覚めた「俺」は、希少な男性オメガであり、子を産んだ母親だった。 現世の記憶は失われているが、 この子を守らなければならない、という想いだけははっきりと残っている。 街の人々に助けられ、魔石への魔力注入で生計を立てながら、 ロアンと息子カイルは、番のいない街で慎ましく暮らしていく。 だが、行方不明の番を探す噂が、静かに近づいていた。 再会は望まない。 今はただ、この子との生活を守りたい。 これは、番から逃げたオメガが、 選び直すまでの物語。 *不定期連載です。

身代わり召喚された俺は四人の支配者に溺愛される〜囲い込まれて逃げられません〜

たら昆布
BL
間違って異世界召喚された青年が4人の男に愛される話

青龍将軍の新婚生活

蒼井あざらし
BL
犬猿の仲だった青辰国と涼白国は長年の争いに終止符を打ち、友好を結ぶこととなった。その友好の証として、それぞれの国を代表する二人の将軍――青龍将軍と白虎将軍の婚姻話が持ち上がる。 武勇名高い二人の将軍の婚姻は政略結婚であることが火を見るより明らかで、国民の誰もが「国境沿いで睨み合いをしていた将軍同士の結婚など上手くいくはずがない」と心の中では思っていた。 そんな国民たちの心配と期待を背負い、青辰の青龍将軍・星燐は家族に高らかに宣言し母国を旅立った。 「私は……良き伴侶となり幸せな家庭を築いて参ります!」 幼少期から伴侶となる人に尽くしたいという願望を持っていた星燐の願いは叶うのか。 中華風政略結婚ラブコメ。 ※他のサイトにも投稿しています。

転生しても推しが尊い!〜京橋くんとの学園ライフが尊死案件〜オタクでよかった、君に出会えたから

中岡 始
BL
前世の俺は、社畜オタクだった。 唯一の救いは、“黒星騎士団”という漫画のキャラ、レオ様を推すこと。 だがある日突然── 事故で命を落とした俺は、目覚めたら高校生になっていた。 しかも隣の席にいたのは、前世で推してたキャラの激似男子⁉ 「え、レオ様…!? いや、現実!? ちょ、待って尊死するんだけど!?」 これは、転生オタク男子が “リアル推し” と出会ってしまった尊さ特化の学園ラブコメ。 推しに手が届きそうで届かない、心拍数限界突破の日々。 創作と感情の狭間で、「推し」と「恋」の境界がじわじわ崩れていく── 「これはもう、ただの供給じゃない。 俺と“君”の物語として、生きてるんだ」 尊死系BL/オタクあるある満載/文化祭・学園SNS・保健室…青春全部乗せ! 笑って泣ける、“愛”と“推し活”の二重螺旋ラブストーリー、開幕!

【8話完結】いじめられっ子だった僕が、覚醒したら騎士団長に求愛されました

キノア9g
BL
いじめられ続けた僕は、ある日突然、異世界に転移した。 けれど、勇者として歓迎されたのは、僕を苦しめてきた“あいつ”の方。僕は無能と決めつけられ、誰からも相手にされなかった。 そんな僕に手を差し伸べてくれたのは、冷酷と恐れられる騎士団長・ジグルドだった。 なのに、あいつの命令で、僕は彼に嘘の告白をしてしまう――「ジグルドさんのことが、好きなんです」 それが、すべての始まりだった。 あの日から彼は、僕だけをまっすぐ見つめてくる。 僕を守る手は、やさしく、強くて、どこまでも真剣だった。 だけど僕には、まだ知られていない“力”がある。 過去の傷も、偽りの言葉も超えて、彼の隣にいてもいいのだろうか。 これは、いじめられっ子の僕が“愛されること”を知っていく、嘘と覚醒の物語。 全8話。

【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】

古森きり
BL
【書籍化決定しました!】 詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります! たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました! アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。 政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。 男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。 自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。 行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。 冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。 カクヨムに書き溜め。 小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。

【完結】抱っこからはじまる恋

  *  ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。 ふたりの動画をつくりました! インスタ @yuruyu0 絵もあがります。 YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。 プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら! 完結しました! おまけのお話を時々更新しています。 BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

虚ろな檻と翡翠の魔石

篠雨
BL
「本来の寿命まで、悪役の身体に入ってやり過ごしてよ」 不慮の事故で死んだ僕は、いい加減な神様の身勝手な都合により、異世界の悪役・レリルの器へ転生させられてしまう。 待っていたのは、一生を塔で過ごし、魔力を搾取され続ける孤独な日々。だが、僕を管理する強面の辺境伯・ヨハンが運んでくる薪や食事、そして不器用な優しさが、凍てついた僕の心を次第に溶かしていく。 しかし、穏やかな時間は長くは続かない。魔力を捧げるたびに脳内に流れ込む本物のレリルの記憶と領地を襲う未曾有の魔物の群れ。 「僕が、この場所と彼を守る方法はこれしかない」 記憶に翻弄され頭は混乱する中、魔石化するという残酷な決断を下そうとするが――。

処理中です...