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6章
本屋
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「本屋ってどこ?」
「このビルの中だよ」
「へぇ、大きいの?」
「だいたいなんでもあるな」
「楽しみになってきた! 」
駅から出て少し歩いたところに大きなビルがある。ビルという名の商業施設という方が正しいのだけれど、今はそんなことを気にしたところで意味がない。
2人でドアを開けて中に入っていく。一階にはコンビニと喫茶店がある。建物の中央にはエスカレーターがあり、それで登っていく。2人でエスカレーターに乗って、階を上がっていく。
「本屋って何階なの?」
「2階だよ」
「じゃあ、ここで降りていいよね」
「おう、そうだな」
エスカレーターの流れから離脱して本屋へと足を踏み入れる。2階のフロア全てが本屋になっている。半分が勉強、半分が文庫本や娯楽の本、といった分け方になっていた。何回か来たことがある程度だが、ここに来たら大体の欲しいものが手に入る、そういうイメージだった。
「文庫本はあっちかな」
「そっちだな、行くか」
2人本屋を歩きながら文庫本を見て回る。話題になっているものから作家の名前すら聞いたことがないものまでいっぱいある。話題になっている本は大体2人とも名前は知っている。平積みになっている本を眺めながら中身を少しだけ立ち読みする。
「この作者の本、読んだことないな」
「俺、あるよ。青春!って感じ。読んでて楽しいけどラストがしんどい」
「しんどいってどういうこと?」
「感情移入するとボロボロ泣いちゃう感じ」
「なるほど? 」
「読んでみたらわかるよ」
「なるほど。じゃあ、買ってみるか」
最近映画化された本がそこに置かれていた。どうやら仁は読んだことがあるらしい。青春系の小説をほとんど読んだことがない賢は、少しだけ悩んだが買うことにした。その後も本屋を回りながら読みたいと思う本を探してみる。
「仁はこういう小説読むのか?」
「あー、そのシリーズは読んだことないなぁ」
「面白いぞ。読んでみるか」
「一巻ってどれ?」
「あー、えっと、これだな」
「ありがとう!読んでみる!」
「一巻を読んでみて面白いと思ったら続きも買ってみたらいい」
「なるほど、そうしようかな」
おすすめしたのは推理小説だった。シリーズとして追いかけている賢も、いつ完結になるのかとずっと考えている小説だった。お互いにおすすめの小説を紹介してから、その後も本屋を見て回る。賢は仁がどんな小説を普段から読むのか気になっていた。
「仁は青春とか恋愛とかそういう小説が好きなのか?」
「まぁ、そういうのを読んでることが多いかなぁ。いろいろ読んでるけどね」
「なるほどね」
「賢は推理小説?ミステリ小説?とか読んでたりするの?」
「そうだなぁ、あとは難病とかの話を読んでたりする」
「なんか難しそう」
「いや、意外とそうでもないよ」
「そうなんだ」
「まぁ、受け取り方は読者次第だからな」
「それはまぁ、そうか」
「その辺の本は俺の部屋のやつをまた読んでみるといいよ」
「気が向いたら読んでみる」
「はいよ」
半分のエリアを回り切ったところで、一旦会計のためにレジへと持っていく。会計はそんなに高くならないと思っていたが、予想通りで少しだけ安心する。続いて仁も会計が終わり、フロア内にある椅子に座る。
「いい本が買えた」
「俺も仁のおすすめが聞けてよかったよ」
「また感想とか教えて欲しいな」
「おう、俺もまた教えて欲しい」
「はーい」
2人で椅子に座りながら、ひと段落つくためにゆっくりする。勉強の本の方も見ていくか悩むが、それはもう少ししてから仁に聞いてみよう。次の予定を聞いてみることにした。
「この後どうする?」
「この後?うーん」
本屋の椅子に座りながら、これからの話をする。仁は少しだけ悩み、まだ行ってない方ののコーナーを見る。つまり勉強の本が置いてある方だ。てっきりそっちには行かないと思っていたけれど、仁は興味があるようだった。
「ちょっとだけ、あっちの方も見てみようかな」
「おう、いいぞ。そうするか」
「社会学の本ある?」
「社会学ならあるぞ。心理学もある」
「見にいきたいな」
「よし、行くか」
2人とも椅子から立ち上がり、もう一つのコーナーへと向かう。建物の中心に刺さるかのように備わっているエスカーレーターを避けながら。そして、反対側のコーナーにもある会計レジの左を抜けてさらに進むと、社会学の本が出てくる。
基礎社会学、都市社会学、教育社会学。大枠の部分が仕切りで分けられ、その中でも様々な分野の本がある。相変わらずの幅広さに驚く。
2人で社会学の本が置いてある本棚の前に立つ。研究室配属になってから、大学の図書館や本屋で見つけた本をひたすら読む期間があった。基本的には大学図書館にあるものを読み漁るのだが、どうしても欲しいものがないときはここに来たこともある。今思えば怒涛の研究室期間だった。思い出に耽りながら本を見ていると、仁は欲しい本があるみたいだった。
「これ読みたいなぁ」
「ジェンダーか」
「うん、興味あるんだよね」
「良いんじゃないか?おれもやってたことあるぞ」
「そうなの?」
「ま、知識がそんなに深いわけじゃないけど」
「なるほど。でも、賢がやったことあるなら、俺もやってみようかな」
「おう。色んな意味で知らない世界が見えるぞ」
「楽しみかも」
「日本社会の闇というのも見える」
「どういうこと?」
「勉強していけば出てくるだろうが、同性結婚がまだできないとか。性同一性障害に対する理解とか。今は少しずつ進んでるが、まだまだ万全とは言いがたい」
「そっか、なるほど」
「仁が勉強するっていうなら、俺も横で色々と読もうかな」
「お、それは心強いかも」
「どこまでいけるかはまだ未知数だけどな」
「まぁね」
2人で本を見ながら勉強の話をする。息抜きの5連休だったはずなのだが、やはり俺たちは勉強が好きなのかもしれない。仁がその本を持ってふらふらと歩き始める。どうやら今回目に留まったのはその本だけだったらしい。賢も少しだけ社会心理学の本が欲しくなって、そっちの方へと向かう。仁がそれについてくる。
「何の本をに行くの?」
「社会心理学だな。最近ちょっと齧り始めたんだよ」
「社会心理学かぁ。まだやったことないなぁ」
「俺もとりあえず一冊本を読んだだけで終わってる。2冊目をなんでも良いからとりあえず読もうかと思ってな」
「なるほどね」
少しずつ勉強する分野を増やしている。最近は社会心理学をやり始めたのだが、一冊だけ本を読み終わったところで終わっていた。
せっかく大きめの本屋に来たので少しだけ内容を見て2冊目に読む本を探す。何冊か立ち読みしてから、一冊だけ決める。そして、それを持ってレジへと向かう。
「俺はレジに行こうと思うけど、仁はどうする?」
「俺も大丈夫だよ」
「じゃあ、行くか」
「そうだね」
2人で本を持ってレジへと向かう。仁が先にレジに向かっていった。そしてお金を払って、そのまま本を鞄に入れる。賢もそれに続き本を出してお金を払う。それが終わってから鞄に入れて、レジから捌ける。
読書は久しぶりではないが、本を買うのは久しぶりだった。知らないことを知るために読書ができるというのは幸せだと思いながら、フロアの中央に向かって歩いていく。
本屋で随分と長居をしていたらしい。スマートフォンを見ると時計が12時になっていた。
「そろそろ昼ごはんだな」
「何食べる?」
「この辺だと定食屋か牛丼かフードコートだな」
「定食屋に行きたいかなぁ」
「よし、じゃあ行くか」
「はーい」
定食屋に行くことに決まったので、2人でエスカレーターを降りる。しかし、上りのエスカレーターの方にしか出入口がないため、そこまで歩いて外に出る。秋の涼しい風が通り抜けていく。そんな街で、定食屋を目指して2人で歩いていく。
「このビルの中だよ」
「へぇ、大きいの?」
「だいたいなんでもあるな」
「楽しみになってきた! 」
駅から出て少し歩いたところに大きなビルがある。ビルという名の商業施設という方が正しいのだけれど、今はそんなことを気にしたところで意味がない。
2人でドアを開けて中に入っていく。一階にはコンビニと喫茶店がある。建物の中央にはエスカレーターがあり、それで登っていく。2人でエスカレーターに乗って、階を上がっていく。
「本屋って何階なの?」
「2階だよ」
「じゃあ、ここで降りていいよね」
「おう、そうだな」
エスカレーターの流れから離脱して本屋へと足を踏み入れる。2階のフロア全てが本屋になっている。半分が勉強、半分が文庫本や娯楽の本、といった分け方になっていた。何回か来たことがある程度だが、ここに来たら大体の欲しいものが手に入る、そういうイメージだった。
「文庫本はあっちかな」
「そっちだな、行くか」
2人本屋を歩きながら文庫本を見て回る。話題になっているものから作家の名前すら聞いたことがないものまでいっぱいある。話題になっている本は大体2人とも名前は知っている。平積みになっている本を眺めながら中身を少しだけ立ち読みする。
「この作者の本、読んだことないな」
「俺、あるよ。青春!って感じ。読んでて楽しいけどラストがしんどい」
「しんどいってどういうこと?」
「感情移入するとボロボロ泣いちゃう感じ」
「なるほど? 」
「読んでみたらわかるよ」
「なるほど。じゃあ、買ってみるか」
最近映画化された本がそこに置かれていた。どうやら仁は読んだことがあるらしい。青春系の小説をほとんど読んだことがない賢は、少しだけ悩んだが買うことにした。その後も本屋を回りながら読みたいと思う本を探してみる。
「仁はこういう小説読むのか?」
「あー、そのシリーズは読んだことないなぁ」
「面白いぞ。読んでみるか」
「一巻ってどれ?」
「あー、えっと、これだな」
「ありがとう!読んでみる!」
「一巻を読んでみて面白いと思ったら続きも買ってみたらいい」
「なるほど、そうしようかな」
おすすめしたのは推理小説だった。シリーズとして追いかけている賢も、いつ完結になるのかとずっと考えている小説だった。お互いにおすすめの小説を紹介してから、その後も本屋を見て回る。賢は仁がどんな小説を普段から読むのか気になっていた。
「仁は青春とか恋愛とかそういう小説が好きなのか?」
「まぁ、そういうのを読んでることが多いかなぁ。いろいろ読んでるけどね」
「なるほどね」
「賢は推理小説?ミステリ小説?とか読んでたりするの?」
「そうだなぁ、あとは難病とかの話を読んでたりする」
「なんか難しそう」
「いや、意外とそうでもないよ」
「そうなんだ」
「まぁ、受け取り方は読者次第だからな」
「それはまぁ、そうか」
「その辺の本は俺の部屋のやつをまた読んでみるといいよ」
「気が向いたら読んでみる」
「はいよ」
半分のエリアを回り切ったところで、一旦会計のためにレジへと持っていく。会計はそんなに高くならないと思っていたが、予想通りで少しだけ安心する。続いて仁も会計が終わり、フロア内にある椅子に座る。
「いい本が買えた」
「俺も仁のおすすめが聞けてよかったよ」
「また感想とか教えて欲しいな」
「おう、俺もまた教えて欲しい」
「はーい」
2人で椅子に座りながら、ひと段落つくためにゆっくりする。勉強の本の方も見ていくか悩むが、それはもう少ししてから仁に聞いてみよう。次の予定を聞いてみることにした。
「この後どうする?」
「この後?うーん」
本屋の椅子に座りながら、これからの話をする。仁は少しだけ悩み、まだ行ってない方ののコーナーを見る。つまり勉強の本が置いてある方だ。てっきりそっちには行かないと思っていたけれど、仁は興味があるようだった。
「ちょっとだけ、あっちの方も見てみようかな」
「おう、いいぞ。そうするか」
「社会学の本ある?」
「社会学ならあるぞ。心理学もある」
「見にいきたいな」
「よし、行くか」
2人とも椅子から立ち上がり、もう一つのコーナーへと向かう。建物の中心に刺さるかのように備わっているエスカーレーターを避けながら。そして、反対側のコーナーにもある会計レジの左を抜けてさらに進むと、社会学の本が出てくる。
基礎社会学、都市社会学、教育社会学。大枠の部分が仕切りで分けられ、その中でも様々な分野の本がある。相変わらずの幅広さに驚く。
2人で社会学の本が置いてある本棚の前に立つ。研究室配属になってから、大学の図書館や本屋で見つけた本をひたすら読む期間があった。基本的には大学図書館にあるものを読み漁るのだが、どうしても欲しいものがないときはここに来たこともある。今思えば怒涛の研究室期間だった。思い出に耽りながら本を見ていると、仁は欲しい本があるみたいだった。
「これ読みたいなぁ」
「ジェンダーか」
「うん、興味あるんだよね」
「良いんじゃないか?おれもやってたことあるぞ」
「そうなの?」
「ま、知識がそんなに深いわけじゃないけど」
「なるほど。でも、賢がやったことあるなら、俺もやってみようかな」
「おう。色んな意味で知らない世界が見えるぞ」
「楽しみかも」
「日本社会の闇というのも見える」
「どういうこと?」
「勉強していけば出てくるだろうが、同性結婚がまだできないとか。性同一性障害に対する理解とか。今は少しずつ進んでるが、まだまだ万全とは言いがたい」
「そっか、なるほど」
「仁が勉強するっていうなら、俺も横で色々と読もうかな」
「お、それは心強いかも」
「どこまでいけるかはまだ未知数だけどな」
「まぁね」
2人で本を見ながら勉強の話をする。息抜きの5連休だったはずなのだが、やはり俺たちは勉強が好きなのかもしれない。仁がその本を持ってふらふらと歩き始める。どうやら今回目に留まったのはその本だけだったらしい。賢も少しだけ社会心理学の本が欲しくなって、そっちの方へと向かう。仁がそれについてくる。
「何の本をに行くの?」
「社会心理学だな。最近ちょっと齧り始めたんだよ」
「社会心理学かぁ。まだやったことないなぁ」
「俺もとりあえず一冊本を読んだだけで終わってる。2冊目をなんでも良いからとりあえず読もうかと思ってな」
「なるほどね」
少しずつ勉強する分野を増やしている。最近は社会心理学をやり始めたのだが、一冊だけ本を読み終わったところで終わっていた。
せっかく大きめの本屋に来たので少しだけ内容を見て2冊目に読む本を探す。何冊か立ち読みしてから、一冊だけ決める。そして、それを持ってレジへと向かう。
「俺はレジに行こうと思うけど、仁はどうする?」
「俺も大丈夫だよ」
「じゃあ、行くか」
「そうだね」
2人で本を持ってレジへと向かう。仁が先にレジに向かっていった。そしてお金を払って、そのまま本を鞄に入れる。賢もそれに続き本を出してお金を払う。それが終わってから鞄に入れて、レジから捌ける。
読書は久しぶりではないが、本を買うのは久しぶりだった。知らないことを知るために読書ができるというのは幸せだと思いながら、フロアの中央に向かって歩いていく。
本屋で随分と長居をしていたらしい。スマートフォンを見ると時計が12時になっていた。
「そろそろ昼ごはんだな」
「何食べる?」
「この辺だと定食屋か牛丼かフードコートだな」
「定食屋に行きたいかなぁ」
「よし、じゃあ行くか」
「はーい」
定食屋に行くことに決まったので、2人でエスカレーターを降りる。しかし、上りのエスカレーターの方にしか出入口がないため、そこまで歩いて外に出る。秋の涼しい風が通り抜けていく。そんな街で、定食屋を目指して2人で歩いていく。
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