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6章
火曜日
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火曜日の朝。昨日は大学に行く予定が、結局特に何もすることなくゆっくり過ごして早めの時間に寝ることになった。土曜日と日曜日にはしゃいだ反動が来ていた。
今は午前7時。布団から起き上がると、賢はもう起きていた。廊下と洗面台の電気が付いていて、歯を磨いていた。
布団を上半身の部分だけ剥がしてから立ち上がり、洗面台へと向かう。歯ブラシをとって歯磨き粉をつけて歯を磨く。いつも通りの動きだ。
「あ、ここ邪魔か?」
「別に大丈夫だよ。ありがとう」
歯を磨き始めると賢が気遣ってくれた。こういう小さな気遣いができるのも、仁がますます賢を好きになる理由の一つだった。
賢の歯磨きが終わり、仁もそれに続いて歯磨きが終わる。口の中を濯いでから部屋に戻ると、賢がパンの入った袋を部屋に持ってきていた。
「あと何個かしかパンがないから、そろそろ買わないとな」
「本当に食料がほとんどないね」
「まぁな。そろそろやばいとは思っている」
「今日の帰り買って帰ろう」
「おう、そうだな」
今日の帰りと言いながら、まだ大学にすら出かけていないし、今は朝だった。賢はクリームパンを選ぶ。仁は明太子フランスにした。
「それ美味しいよな」
「明太子と炭水化物ってなんでこんなにも合うんだろうね」
「悪魔合体だよな」
「本当すごい」
仁がスーパーのパンコーナーで買った明太子フランスをかじる。安定の美味しさ。白米、うどん、パンなどの炭水化物に、こんなにも合う食材を発見した人は間違いなく天才だと思いながら食べ進める。見もクリームパンを食べる。
パンを食べ終わり、2人でひと段落。スマートフォンを見ると時計は7時30分になっていた。ゆったりとした時間。そろそろ大学に行く時間かと思ったけれど、一応賢に聞いてみる。
「そろそろ大学行く?」
「行ってもいいが、数日前の喧騒を思い出すと、もうちょっとゆっくりしてから行くほうがいい気がするな」
「なるほど、確かに」
「朝早くからあの喧騒には巻き込まれたくない」
「それもそうだね」
賢と2人でゆっくりと過ごす。今から大学に向かえば8時には到着する。しかし、そんな朝早くから喧騒に巻き込まれるのは嫌だった。何をするわけでもなく2人でゆっくり話をする。無言になっても気にならない。大学に行くまでは少しだけ時間がある。その時間もゆっくりすごそう。まだ眠そうな賢と一緒に過ごす朝は、少しだけ肌寒かったけれど、心は暖かった。
スマートフォンの時計が午前8時を示した頃、大学に行く準備を始める。着替えて荷物を持って、立ち上がる。
ドアを開けて廊下を抜けて玄関から出る。賢が鍵を閉めたら2人で大学へと向かう。いつもの川沿いの道を歩く。夏と比べればかなり歩きやすい気候になっていた。
15分も歩けばバス停に着く。授業日ではないから1限用の直通バスは出ていないけれど、大学前を通るバスは平常通り運行していた。
乗り場まで行くと、あと3分で出発するバスが停車していた。賢と2人で乗り込み、席に座ったところでドアが閉まる。3日ぶりに見る景色は、なんか懐かしさすら覚えるほど久しぶりに感じた。特にすることもなく2人で座って揺られていると、大学には思っていたより早く着いた。
「着いた」
「着いたな。研究室行くか」
「一番過ごしやすいしね。多分」
「騒がしくないことを祈る」
確率としては殆どあり得ないようなことを2人で祈りながら、研究室へと向かう。いつも通り研究棟に入りエレベータで研究室のある階へと向かう。そして、賢の後ろに続いて歩いて行く。研究室の扉を開けると、そこに広がっていたのは、静寂だった。
「おはようございます」
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
研究室にいたのは、なぜか討論用の机に突っ伏した教授1人だけだった。2人が予想した景色とは真逆の光景がそこに広がっていた。
「どうしたんですか」
「この三日間が壮絶だったのさ。今あいつらは銭湯に行った。束の間の休息だ」
「つまり、帰ってきたら」
「あぁ、またどんちゃん騒ぎだろうな」
「なるほど」
そこまで言って教授は、教授室へと戻っていく。つまり1時間もしないうちにここがまた喧騒に戻るということ。しかも、あの教授の感じで言えばおそらく徹夜だったことが窺える。三日三晩ということはなかろうが、昨日は確実に徹夜の勢いだ。教授が居なくなってさらに静かになった研究室の中で、2人とも椅子に座る。そして、賢はパソコンを立ち上げる。
「なんかあるんだっけ?」
「まぁ、最終発表会の資料がある」
「なるほどね」
「読書の前にこれだ」
「頑張って」
「おうともよ」
少しだけ気になったことを聞いてみたけれど、確かに最終発表会があるという話は以前にしていたかもしれない。それを思い出しながら、仁はカバンの中に入っている昨日買った本を取り出した。
ジェンダー。今の俺にとって、一番大事で勉強するべきで、目を向けるべきこと。賢が資料を作ってる間に質問できることを書き出すくらいまではいきたいと思いながら、読書を始めた。
賢が資料を作り始めてしばらくすると、完全に集中が切れたのか天を仰いだ。その先にある蛍光灯を見ながら呟いていた。
「資料作るのめんどくさい」
「パワーポイントってめんどくさいよね」
「工夫はいらないけど読みやすいものに仕上げるのが何よりめんどくさい」
「なんとなくわかる気がする」
「これから色々発表の場に出れば出るほど実感することになるぞ。めんどくさい」
「覚悟しとく」
卒業研究の最終発表会の資料を作っている。丁寧に言葉を並べていきながら、発表の時に話す原稿も同時に作っていた。10分間の発表で、スライドが7枚くらいになるらしい。
雛形だけを先に作ってからそこに言葉を埋めていく。なるべく最小限の文字数にこだわっているようで、少しずつ言葉を削りながら1枚ずつ仕上げていた。
仁の読書も少しずつながら進み、本に直接書き込みながら新たな知識を得ていく。1章の1節が読み終わった頃、研究室の扉が開く。
研究室の学生たちが帰ってきた。風呂に入ってきたのは本当のようで、かなりさっぱりしたようだった。そして、各々の研究資料を机から取り、討論用の机に置き直す。もはや賢がパワーポイントを作っていることなど目にも入らないほど忙しいということなのだろうか。そして、討論用の机に学生が一通り座ったところで、教授が顔を出してきた。
「ただいま帰りました」
「お、帰ってきたか。やるぞ」
「お願いします」
教授の一声でまた帰ってきた学生の研究が再開する。読んだ文献に対して考察を述べていろんなことを盛り込むことで研究成果にしようとしているように見える。ゆっくりじっくり読書を進めていきながら、横目で賢の資料作りも見る。そして、賢に思っていたことを言ってみる。
「なんか、、思ってたより静かだったね」
「確かに。もっと喧騒の中で作業することになると思ったんだが」
「静かなら、それが一番だよね」
「ま、作業する時はその方がいいな」
一番扉に近く、討論用の机に遠いところでそんな話をする。その後も黙々と作業を続けて、現在時刻は朝10時になっていた。気がつかないうちにそこそこの時間が経っていたようだ。
「よーし、とりあえずこんなもんかな」
「お、できたの?」
「ま、一通りはできた感じだ」
「印刷して終わり?」
「いや、教授には見てもらう」
「なるほどね」
賢の資料作りがひと段落したようだった。パワーポイントを印刷し、教授の元へと歩いていく。真剣な顔で議論をしていたが、どうやら資料は受け取ってくれたようだった。教授と賢が少しだけ話し合ってから、こっちに戻ってくる。
「なんか話してたけどなんかあったの?」
「しばらく忙しいから資料の添削くらいでしか見れないかもしれないらしい」
「まぁ、あの様子を見たら」
「なんとなく想像はつくよね」
賢が椅子に座りながら話をする。資料作りがもう少し時間がかかると思っていた。早く終わったということは、賢も今から読書なのだろうか。と思っていたが、どうやらそうでもないようだった。椅子に深く腰掛けながら、一息ついている。かなり集中していたのかもしれない。そんな賢に、話しかける。
「お疲れ様でした。ちょっとゆっくりする?」
「あぁ、ありがとう。10分くらいゆっくりするかな。そこから読書だ」
「了解」
教授とバタバタしている学生たちを置いて、ひたすら前に進む賢。しかし、今は休憩。それに合わせて仁も読書を一旦中断する。
どんな状況であれ、賢と二人でゆっくりできるのなら、そうしたい。それが今の仁の思いだった。恐ろしい喧騒の中に突撃することになると思っていた研究室も静かで、安心したというのもある。
一休みしたら、二人で読書の時間。いろんなことを賢に聞くための知識をつける時間。気合を入れて頑張ろうと思った。
今は午前7時。布団から起き上がると、賢はもう起きていた。廊下と洗面台の電気が付いていて、歯を磨いていた。
布団を上半身の部分だけ剥がしてから立ち上がり、洗面台へと向かう。歯ブラシをとって歯磨き粉をつけて歯を磨く。いつも通りの動きだ。
「あ、ここ邪魔か?」
「別に大丈夫だよ。ありがとう」
歯を磨き始めると賢が気遣ってくれた。こういう小さな気遣いができるのも、仁がますます賢を好きになる理由の一つだった。
賢の歯磨きが終わり、仁もそれに続いて歯磨きが終わる。口の中を濯いでから部屋に戻ると、賢がパンの入った袋を部屋に持ってきていた。
「あと何個かしかパンがないから、そろそろ買わないとな」
「本当に食料がほとんどないね」
「まぁな。そろそろやばいとは思っている」
「今日の帰り買って帰ろう」
「おう、そうだな」
今日の帰りと言いながら、まだ大学にすら出かけていないし、今は朝だった。賢はクリームパンを選ぶ。仁は明太子フランスにした。
「それ美味しいよな」
「明太子と炭水化物ってなんでこんなにも合うんだろうね」
「悪魔合体だよな」
「本当すごい」
仁がスーパーのパンコーナーで買った明太子フランスをかじる。安定の美味しさ。白米、うどん、パンなどの炭水化物に、こんなにも合う食材を発見した人は間違いなく天才だと思いながら食べ進める。見もクリームパンを食べる。
パンを食べ終わり、2人でひと段落。スマートフォンを見ると時計は7時30分になっていた。ゆったりとした時間。そろそろ大学に行く時間かと思ったけれど、一応賢に聞いてみる。
「そろそろ大学行く?」
「行ってもいいが、数日前の喧騒を思い出すと、もうちょっとゆっくりしてから行くほうがいい気がするな」
「なるほど、確かに」
「朝早くからあの喧騒には巻き込まれたくない」
「それもそうだね」
賢と2人でゆっくりと過ごす。今から大学に向かえば8時には到着する。しかし、そんな朝早くから喧騒に巻き込まれるのは嫌だった。何をするわけでもなく2人でゆっくり話をする。無言になっても気にならない。大学に行くまでは少しだけ時間がある。その時間もゆっくりすごそう。まだ眠そうな賢と一緒に過ごす朝は、少しだけ肌寒かったけれど、心は暖かった。
スマートフォンの時計が午前8時を示した頃、大学に行く準備を始める。着替えて荷物を持って、立ち上がる。
ドアを開けて廊下を抜けて玄関から出る。賢が鍵を閉めたら2人で大学へと向かう。いつもの川沿いの道を歩く。夏と比べればかなり歩きやすい気候になっていた。
15分も歩けばバス停に着く。授業日ではないから1限用の直通バスは出ていないけれど、大学前を通るバスは平常通り運行していた。
乗り場まで行くと、あと3分で出発するバスが停車していた。賢と2人で乗り込み、席に座ったところでドアが閉まる。3日ぶりに見る景色は、なんか懐かしさすら覚えるほど久しぶりに感じた。特にすることもなく2人で座って揺られていると、大学には思っていたより早く着いた。
「着いた」
「着いたな。研究室行くか」
「一番過ごしやすいしね。多分」
「騒がしくないことを祈る」
確率としては殆どあり得ないようなことを2人で祈りながら、研究室へと向かう。いつも通り研究棟に入りエレベータで研究室のある階へと向かう。そして、賢の後ろに続いて歩いて行く。研究室の扉を開けると、そこに広がっていたのは、静寂だった。
「おはようございます」
「おはようございます」
「あぁ、おはよう」
研究室にいたのは、なぜか討論用の机に突っ伏した教授1人だけだった。2人が予想した景色とは真逆の光景がそこに広がっていた。
「どうしたんですか」
「この三日間が壮絶だったのさ。今あいつらは銭湯に行った。束の間の休息だ」
「つまり、帰ってきたら」
「あぁ、またどんちゃん騒ぎだろうな」
「なるほど」
そこまで言って教授は、教授室へと戻っていく。つまり1時間もしないうちにここがまた喧騒に戻るということ。しかも、あの教授の感じで言えばおそらく徹夜だったことが窺える。三日三晩ということはなかろうが、昨日は確実に徹夜の勢いだ。教授が居なくなってさらに静かになった研究室の中で、2人とも椅子に座る。そして、賢はパソコンを立ち上げる。
「なんかあるんだっけ?」
「まぁ、最終発表会の資料がある」
「なるほどね」
「読書の前にこれだ」
「頑張って」
「おうともよ」
少しだけ気になったことを聞いてみたけれど、確かに最終発表会があるという話は以前にしていたかもしれない。それを思い出しながら、仁はカバンの中に入っている昨日買った本を取り出した。
ジェンダー。今の俺にとって、一番大事で勉強するべきで、目を向けるべきこと。賢が資料を作ってる間に質問できることを書き出すくらいまではいきたいと思いながら、読書を始めた。
賢が資料を作り始めてしばらくすると、完全に集中が切れたのか天を仰いだ。その先にある蛍光灯を見ながら呟いていた。
「資料作るのめんどくさい」
「パワーポイントってめんどくさいよね」
「工夫はいらないけど読みやすいものに仕上げるのが何よりめんどくさい」
「なんとなくわかる気がする」
「これから色々発表の場に出れば出るほど実感することになるぞ。めんどくさい」
「覚悟しとく」
卒業研究の最終発表会の資料を作っている。丁寧に言葉を並べていきながら、発表の時に話す原稿も同時に作っていた。10分間の発表で、スライドが7枚くらいになるらしい。
雛形だけを先に作ってからそこに言葉を埋めていく。なるべく最小限の文字数にこだわっているようで、少しずつ言葉を削りながら1枚ずつ仕上げていた。
仁の読書も少しずつながら進み、本に直接書き込みながら新たな知識を得ていく。1章の1節が読み終わった頃、研究室の扉が開く。
研究室の学生たちが帰ってきた。風呂に入ってきたのは本当のようで、かなりさっぱりしたようだった。そして、各々の研究資料を机から取り、討論用の机に置き直す。もはや賢がパワーポイントを作っていることなど目にも入らないほど忙しいということなのだろうか。そして、討論用の机に学生が一通り座ったところで、教授が顔を出してきた。
「ただいま帰りました」
「お、帰ってきたか。やるぞ」
「お願いします」
教授の一声でまた帰ってきた学生の研究が再開する。読んだ文献に対して考察を述べていろんなことを盛り込むことで研究成果にしようとしているように見える。ゆっくりじっくり読書を進めていきながら、横目で賢の資料作りも見る。そして、賢に思っていたことを言ってみる。
「なんか、、思ってたより静かだったね」
「確かに。もっと喧騒の中で作業することになると思ったんだが」
「静かなら、それが一番だよね」
「ま、作業する時はその方がいいな」
一番扉に近く、討論用の机に遠いところでそんな話をする。その後も黙々と作業を続けて、現在時刻は朝10時になっていた。気がつかないうちにそこそこの時間が経っていたようだ。
「よーし、とりあえずこんなもんかな」
「お、できたの?」
「ま、一通りはできた感じだ」
「印刷して終わり?」
「いや、教授には見てもらう」
「なるほどね」
賢の資料作りがひと段落したようだった。パワーポイントを印刷し、教授の元へと歩いていく。真剣な顔で議論をしていたが、どうやら資料は受け取ってくれたようだった。教授と賢が少しだけ話し合ってから、こっちに戻ってくる。
「なんか話してたけどなんかあったの?」
「しばらく忙しいから資料の添削くらいでしか見れないかもしれないらしい」
「まぁ、あの様子を見たら」
「なんとなく想像はつくよね」
賢が椅子に座りながら話をする。資料作りがもう少し時間がかかると思っていた。早く終わったということは、賢も今から読書なのだろうか。と思っていたが、どうやらそうでもないようだった。椅子に深く腰掛けながら、一息ついている。かなり集中していたのかもしれない。そんな賢に、話しかける。
「お疲れ様でした。ちょっとゆっくりする?」
「あぁ、ありがとう。10分くらいゆっくりするかな。そこから読書だ」
「了解」
教授とバタバタしている学生たちを置いて、ひたすら前に進む賢。しかし、今は休憩。それに合わせて仁も読書を一旦中断する。
どんな状況であれ、賢と二人でゆっくりできるのなら、そうしたい。それが今の仁の思いだった。恐ろしい喧騒の中に突撃することになると思っていた研究室も静かで、安心したというのもある。
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