それもまた人生

二話

「でさー、マジで大変だったんだよね」
「それは随分とご苦労だったな」

　随分と涼しくなった秋の吉祥寺で、二人の男が歩いている。旧知の友というほど付き合いは長くないが二人ともおおらかな性格で喧嘩振ることがない。たまにこうして街を二人で歩くこともある。お互い趣味が被っているわけではない。嗜む程度の趣味は幅広いが、一人は音楽ゲーム、一人はプラモデル作りである。そんな二人は若さ故か麺類を信じられないほどに食べる。1キロ近くを平気で平らげるのだ。
　今日は音楽ゲームをするために集まって、昼食を食べてから音楽ゲームの第二幕が既に始まっていた。色んな音ゲー、色んな曲をやりながら二人で一喜一憂する。そんな日常が、この二人には似合っている。才能がなくても楽しめればいい。それが二人のモットーだった。

「あ、うわ」
「もったいねー」

　そんな中でもやはり悔しい場面は存在する。後一つでパーフェクトだった瞬間、フルコンボだった瞬間、クリアだった瞬間。そんな悔しさをその瞬間に感じて次からは色んなことを試すことになる。千載一遇のチャンスを掴むまでひたすら祈るだけのゲームになる時もある。最近はそんなことが立て続けに起きていて、口癖になってしまった言葉がある。

「それもまた人生だよな」
「せやな」

　次こそは成し遂げてみせると言う決意の炎を燃やしながらも言葉は冷静だった。自分の人生の限界はまだまだ遠い所にある。それだけが、男の原動力だった。それを胸に、今日も一歩ずつ人生を歩んでいく。