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5話

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「たとえば、100兆円あったらさ」
「うん」
「駅を建てたい」
「どこに?」
「家から徒歩15秒の位置に」
「駅に住めば良いじゃん」
「夢がないじゃん」
「むしろそれのどこに夢がないんだよ」
「法律の住所不定無職であってはならないには多分抵触するし」
「うん」
「電車が走ってる間はずっと騒音じゃん」
「我慢しろよ」
「だからこそ15秒なのよ」
「15秒の距離であの音が消えるとは思えんのだが」
「そりゃ防音設備をつけた駅にしますよ」
「世界一無駄な100兆円の使い方」
「僕が建てた駅で降りる人もいるでしょ」
「そんな酔狂なやつがいたら俺がそいつに100兆円やるよ」
「よっしゃ!」
「お前にじゃねえよ」
「不服申し立て」
「何にだよ」
「100兆円ほしい」
「努力しろよ」
「努力で手に入るなら努力するでしょ」
「それはそう」
「15秒で到着する駅のためなら努力するよ」
「そっちかよ!」
「そらそうよ」
「バカなこと言ってねえで出社しろよ。今日も仕事だろ」
「行ってきます」
「あぁ、行ってこい」
「また夜に」
「はいよ」
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