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6話

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「例えば、100兆円あったらさ」
「うん」
「日本全国回れると思うんだよ」
「せやろな」
「日本全国100兆円の旅!」
「使いきれるのか?」
「無理だろうけど、夢はある」
「毎日一泊100億円のところに泊まっても1万日だぜ」
「30年で使いきれるじゃん」
「毎日泊まればいけるだろうが、東京の一等地に泊まるわけでもなければ五つ星ホテルに毎日泊まるわけでもあるまいし、30年それは無理だろ」
「気合いですよ、気合い」
「そうか、気合いか」
「今回の旅行の予算は5万円です」
「100兆円の話をしてる人間とは思えんな」
「理想と現実は乖離してこそ人間なのです」
「はぁ、なるほど」
「100兆円、欲しいね」
「お前ほどは渇望してない」
「そっか」
「それよりさっさと行ってこい。これが最後の旅なんだろ?」
「あぁ、これで行脚終了だ。行ってくる」
「じゃ、お土産頼んだ」
「はいよ、またな」
「あいよー」
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