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交わり
7話
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布団の中で目が覚めると、後輩がこちらを見つめていた。
「あ、おはようございます」
「おはよう。今何時かしら」
「9時くらいですね」
「昼まで寝るなんてことにならなくてよかったわ」
「ところで先輩、朝ごはんは食べました?」
「まだよ、そこのキッチンにかかってるパンを適当に食べるわ」
「私ももらっていいですか?」
「食べてきたわけじゃないのね」
「私、朝ごはんは会社で食べるんですよ」
会話が終わると後輩はキッチンでパンの入った袋をリビングに持ってきた。後輩はすでに食べるものを決めたらしい。莉子も袋の中を眺めて食べるものを決める。
「私はこれにしようかな」
「あ、先輩のそれ、美味しいですか?それと悩んだんですよね」
「お菓子のポッキーをパンにしたような味よ」
「絶対美味しいやつですね」
「あとで一口あげる」
「ありがとうございます!」
笑顔の後輩が袋から取り出したのはカレーパンだった。二つのパンの味の違いが明らかに分かるのに、そこまで悩むだろうかと思いつつ、パンを齧る。さっきの比喩がそのままだと改めて認識しながら、後輩のための一口を残す。2本目を取り出して、同じ様に齧っていく。
後輩がカレーパンを食べ終わり、こっちを見る。そして手は、莉子の食べかけのパンへと伸びていた。
「これ、もらっていいですか?」
「ええ、どうぞ」
食べかけのパンを掴んで食べる。出来るだけ口の中には残らない様にしながら食べた分、衛生面は大丈夫なはずだ。
「これ、美味しいですね」
「近くのパン屋に売ってるわよ」
「あのスーパーの近くですか?」
「あそこから歩いて5分くらいね」
「今度連れてってください」
「いいわよ」
パンを一口で食べ終わった後輩はもう一度寝転ぶ。そのときの腕に巻き込まれる。後輩と一緒に布団に倒れて、なんとなく見つめる。
後輩を見つめると、なぜか後輩がそっぽを向いた。理由が分からず見ていると、またこっちを見た。
「恭子さんが羨ましい」
「どうしたの」
「私も先輩にくっつきたいです。腕枕もされたいです」
「別にいいけど」
その返事が言い終わると共に後輩が飛び込んでくる。思っていたより強い力で抱きしめられる。果たしてこれは腕枕なのだろうかと思うが、なんとか頑張って腕を回して枕にする。先輩が羨ましいのなら腕枕をする側ではないかと思うのだが、そこは言わないでおいた。
後輩を抱きしめながら撫でる。先輩からされていたことをそのまましてみる。後輩は嫌がるわけでもなくそれに従っていたが、ふとした瞬間にこっちを見て、口を開いた。
「私、人生どうしたらいいんだろうってなってるんですよ」
「急にどうしたの」
唐突すぎる後輩の一言に動揺する。最近は莉子もこれからのことで悩んでいた。先輩とデートしてみた時に何があるか分からないし、小倉とデートした時に何が起きるかも分からない。他人に恋愛感情を持てない自分が正しいのかどうかすらも分かっていない。そんな状況下でも答えを探しながら生きていた。今ここで後輩の悩みを聞けば、何か見えてくるだろうか。そんな思考を汲み取った様に、目の前の後輩は話を続けた。
「この前彼氏と別れてからずっと一人暮らしで何しようかなーって思うことが増えました」
「私もそんな感じよ」
「先輩と結婚できたら楽なのになー」
「え?」
「いや、何でもないです」
思わず聞き返すと、目の前の後輩は目を逸らして誤魔化した。そこに対して追求するわけではないが、莉子自身も似た様な事は考えたことがあった。
後輩とだらだら喋りながらも頭の中では考え事をする。莉子もこの数ヶ月間は先輩との結婚を何度か考えた。義務じゃなくて社会制度というのなら、異性とする必要があるとは到底思えない。それでも先輩にそれを切り出せないのは、社会制度ということ以前に、先輩に彼氏が出来そうだと聞いていたからだった。
後輩が徐に起き上がる。それに合わせて起き上がる。なんだろうと思って聞こうとすると、先に開いたのは後輩だった。
「おうちデートってこんな感じなんですね」
「え?」
「彼氏がいた頃ってずっと外に出かけてあれこれ見て回ってたんですよ。楽しかったですけど、忙しくて、疲れやすかったんです」
「はぁ」
「今こうして先輩とゴロゴロしながらイチャイチャするの、楽しいんですよ」
「そりゃ何よりです」
思わぬ言葉に敬語になる。他人のことを好きにならなくても、他人に必要とされるというのは嬉しくなる。その言葉の後も後輩の言葉は止まらない。
「今日の先輩は私のものですからね!お家デートですよ!」
「ええ、いいわよ」
後輩からの圧を受けながら、今日は家でゆっくりしようと決める。ここ数ヶ月は後輩と行動する事は多かったが、こうしてゆっくりと過ごす事はなかった。たまにはこういうのも良いかもしれないと思った。
「あ、おはようございます」
「おはよう。今何時かしら」
「9時くらいですね」
「昼まで寝るなんてことにならなくてよかったわ」
「ところで先輩、朝ごはんは食べました?」
「まだよ、そこのキッチンにかかってるパンを適当に食べるわ」
「私ももらっていいですか?」
「食べてきたわけじゃないのね」
「私、朝ごはんは会社で食べるんですよ」
会話が終わると後輩はキッチンでパンの入った袋をリビングに持ってきた。後輩はすでに食べるものを決めたらしい。莉子も袋の中を眺めて食べるものを決める。
「私はこれにしようかな」
「あ、先輩のそれ、美味しいですか?それと悩んだんですよね」
「お菓子のポッキーをパンにしたような味よ」
「絶対美味しいやつですね」
「あとで一口あげる」
「ありがとうございます!」
笑顔の後輩が袋から取り出したのはカレーパンだった。二つのパンの味の違いが明らかに分かるのに、そこまで悩むだろうかと思いつつ、パンを齧る。さっきの比喩がそのままだと改めて認識しながら、後輩のための一口を残す。2本目を取り出して、同じ様に齧っていく。
後輩がカレーパンを食べ終わり、こっちを見る。そして手は、莉子の食べかけのパンへと伸びていた。
「これ、もらっていいですか?」
「ええ、どうぞ」
食べかけのパンを掴んで食べる。出来るだけ口の中には残らない様にしながら食べた分、衛生面は大丈夫なはずだ。
「これ、美味しいですね」
「近くのパン屋に売ってるわよ」
「あのスーパーの近くですか?」
「あそこから歩いて5分くらいね」
「今度連れてってください」
「いいわよ」
パンを一口で食べ終わった後輩はもう一度寝転ぶ。そのときの腕に巻き込まれる。後輩と一緒に布団に倒れて、なんとなく見つめる。
後輩を見つめると、なぜか後輩がそっぽを向いた。理由が分からず見ていると、またこっちを見た。
「恭子さんが羨ましい」
「どうしたの」
「私も先輩にくっつきたいです。腕枕もされたいです」
「別にいいけど」
その返事が言い終わると共に後輩が飛び込んでくる。思っていたより強い力で抱きしめられる。果たしてこれは腕枕なのだろうかと思うが、なんとか頑張って腕を回して枕にする。先輩が羨ましいのなら腕枕をする側ではないかと思うのだが、そこは言わないでおいた。
後輩を抱きしめながら撫でる。先輩からされていたことをそのまましてみる。後輩は嫌がるわけでもなくそれに従っていたが、ふとした瞬間にこっちを見て、口を開いた。
「私、人生どうしたらいいんだろうってなってるんですよ」
「急にどうしたの」
唐突すぎる後輩の一言に動揺する。最近は莉子もこれからのことで悩んでいた。先輩とデートしてみた時に何があるか分からないし、小倉とデートした時に何が起きるかも分からない。他人に恋愛感情を持てない自分が正しいのかどうかすらも分かっていない。そんな状況下でも答えを探しながら生きていた。今ここで後輩の悩みを聞けば、何か見えてくるだろうか。そんな思考を汲み取った様に、目の前の後輩は話を続けた。
「この前彼氏と別れてからずっと一人暮らしで何しようかなーって思うことが増えました」
「私もそんな感じよ」
「先輩と結婚できたら楽なのになー」
「え?」
「いや、何でもないです」
思わず聞き返すと、目の前の後輩は目を逸らして誤魔化した。そこに対して追求するわけではないが、莉子自身も似た様な事は考えたことがあった。
後輩とだらだら喋りながらも頭の中では考え事をする。莉子もこの数ヶ月間は先輩との結婚を何度か考えた。義務じゃなくて社会制度というのなら、異性とする必要があるとは到底思えない。それでも先輩にそれを切り出せないのは、社会制度ということ以前に、先輩に彼氏が出来そうだと聞いていたからだった。
後輩が徐に起き上がる。それに合わせて起き上がる。なんだろうと思って聞こうとすると、先に開いたのは後輩だった。
「おうちデートってこんな感じなんですね」
「え?」
「彼氏がいた頃ってずっと外に出かけてあれこれ見て回ってたんですよ。楽しかったですけど、忙しくて、疲れやすかったんです」
「はぁ」
「今こうして先輩とゴロゴロしながらイチャイチャするの、楽しいんですよ」
「そりゃ何よりです」
思わぬ言葉に敬語になる。他人のことを好きにならなくても、他人に必要とされるというのは嬉しくなる。その言葉の後も後輩の言葉は止まらない。
「今日の先輩は私のものですからね!お家デートですよ!」
「ええ、いいわよ」
後輩からの圧を受けながら、今日は家でゆっくりしようと決める。ここ数ヶ月は後輩と行動する事は多かったが、こうしてゆっくりと過ごす事はなかった。たまにはこういうのも良いかもしれないと思った。
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