世界で一番遠い場所 Rev.1

ぽよ

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邂逅

呼び出し

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 今日は土曜日で授業がないのに、朝から外出をしていた。高杉に呼び出されたのだ。集合場所は大学の最寄りの駅だった。朝わざわざ土曜日の朝からデートということも無いと思うのだけれど、朝の10時という微妙な時間を提示され、渋々了承して今は駅前にいる。待っている時間が暇でスマートフォンを操作していると、目の前に高杉が現れた。

「おはよう」
「うん、おはよう」

 高杉はいつも通りの服装だった。青系のジーンズに半袖のシャツ。身軽な服装で今日は歩き回るのかと考えてしまう。そう考える梨咲も今日は軽めのパンツにに白系の半袖シャツだった。春というより夏のコーディネートだが、今日は少し暑いという予報が出ていたからだ。そして、日焼け止めも忘れず持つ。女子大学生にとって日焼けは単位を落とすより怖い。

「誘ってもらって悪いんだけど、今日は何するの?」
「今日は買い物」
「なるほどね。なんで私?」
「誘いたくなったから」
「あぁ、そう」

 誘いたくなる理由がさっぱり分からない。しかし、それを拒否できるほど距離感が遠い友人ではない。朝の10時。駅の改札で予定を決める。土曜日の朝でも人はそこそこにいる。こんな田舎の町でも駅前にはスーパーがあり大学もある。そう思えばこそ、この賑わいにはある意味で納得のいく部分もある。二人の横を抜けていく人を横目に見る。そんな中、なかなか本題を切り出さない高杉に質問をする。

「買い物ってどこにいくの」
「ショッピングモール」
「あー、あそこ?」
「ここから快速で30分くらいかな」
「あーあそこね。分かったわ」

 どうやら行く場所は決まっていたらしい。梨咲もなんとなく場所だけは認知している。二人の認識が揃ったところで、改札を抜けて電車へと乗り込んだ。高杉と一緒にいる時はぎこちなさも居心地の悪さも感じることなく、そして特に会話をするわけでもなく外の景色を見ていた。目の前に広がる光景は普段から遠出をするわけではない梨咲にとっては少しだけ珍しい風景だった。県境を縫うように走るこの路線の電車は、少しずつ都会へと足を踏み入れていく。快速電車で30分。なんとなく外の景色に見慣れてきた頃、大きな駅に到着した。

「着いたね」
「降りようか」
「うん」

 電車を降りる。ホームから改札へと向かって歩く。大都会の駅だけあって、人混みと呼ぶにふさわしい人の波ができていた。休日にも関わらず朝のラッシュほどの人混みのを高杉と一緒に歩いていく。駅の中を5分ほど歩き、地上の改札を抜けて出口へと進む。そこから10分ほど歩けば、ショッピングモールがある。2人で歩きながらそこを目指す。空は快晴であり、お出かけ日和だった。
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