世界で一番遠い場所 Rev.1

ぽよ

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卒業デート

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 デートの日、梨咲は結局いつも通りの服装で行くことにした。大学に行くときより少しだけ遅い時間に起きて、集合場所へと向かう。この風景も、もうほとんど見納めみたいなものだった。今のうちに何かを残しておくほど思い入れがあるわけではない。それなのに、どこか寂しい気持ちがあった。
 大学を卒業すれば同棲する。二人でその話をしていた。最後は高杉の部屋で同棲することに決まったが、決まるまではなかなか二人とも自分の部屋を譲らない状況だった。決めては部屋の快適さだった。二人とも住んでいるアパートは駅に近くて買い物自体も不便はない。風呂は少しだけ狭いが入れないわけではない。しかし、梨咲の住んでいる部屋の方が物が少ないということになり、引っ越しも楽だからと言うことで高杉の部屋に住むことに決まった。
 4年間住んできた部屋の契約も3月で終わる。高杉と2人で同じ部屋で生活できるかという不安がないわけではないけれど、今までの実績で大丈夫だと思うことにしている。梨咲には現状そう思うことしかできなかった。考え事をしている間にも足と電車はどんどん前へ進み、大学の最寄駅へと来ていた。スマートフォンの時計を改めて見ると10時と表示されていた。そろそろ高杉が来るはずだと大学の方角を向いたところで、遠くに高杉が見えた。高杉も梨咲のことを確認すると、こちらに手を振ってきた。いつかと同じ風景を見ていることに気が付いた。

「おはよう」
「うん、おはよう」
「じゃあ、行きますか」
「行こうか」

 今日のデートも買い物だ。2人で駅に入り改札を抜けてホームに立つ。いつも通りのデートの流れだった。そして到着した電車に乗り、今日のデートがスタートする。

「何買うんだっけ」
「なんだっけ。メモはとってある」
「それ見よう」

 今日の買い物で買うものが書いてあった。普段の買い物と思しき食べ物も書いてあったが、それ以外にも買うものはあるようだ。そのための買い物だから当然と言えば当然なのだが、いつもの買い物リストを見ると、これもまた日常に溶けていくのだろうと思う。それもまた、人生の一つの見え方なのだろう。
 車窓から見える景色は、いつもと変わらない街だった。学生の今だからこそ見える景色があるならば、社会人になった時の見え方はまた変わったものになるのだろうか。外に見える景色を見ながら梨咲はそんなことを考えていた。ゆったりと電車に乗ること25分。デートの目的地がある駅に着いた。電車を降りてしばらく歩けばショッピングモールがある。

「ショッピングモール好きだよね」
「なんでもあるじゃん」
「まぁ、それはそうだけど」

 卒業デートも買い物デート。しかし、今日はいつも行く場所とは少し違う場所。それでも見える景色はあまり変わらないのだけれど。それもまた、良いことなのかもしれない。変わったことばかり追い続けていた2年前から成長した姿だと思うことにしよう。建物の中を2人で歩きながら買い物メモと同時にフロア案内も見る。いつか見た物産展のようなイベントはやっていない。それとは別で、年度末ということもあるからなのか売り尽くしセールのようなものはやっているようだ。ひとまず2人で食料品を見て回って飲み物を買った。その後も2人で歩いて回る。

「服屋とか見る?」
「今日は大丈夫。雑貨屋さんとか見たいかも」
「雑貨屋さんに行くか」
「行こう」

 一階でフロアマップを見てから、エスカレーターで2階へと上がる。エスカレーターを降りて10秒ほど歩いたところに雑貨屋があった。あらゆるジャンルの雑貨が並んでいるが、梨咲が欲しいものは少し奥だった。

「あった、これこれ」
「なにそれ。ホッチキス?」
「そうそう。針のいらないホッチキス」
「へぇ。便利なものもあるんだね」
「これ、本当に便利なんだよ」

 梨咲は雑貨屋で針の必要のないタイプのホッチキスを探していた。大学の研究室でたまたま使っただけなのだが、とても便利だった記憶がある。家で使う機会があるわけでもなく、特に必要だと思うこともなかったけれど、社会人で仕事をするなら持っていて損はないだろうと思うほどには便利だったのだ。それほどにこのホッチキスは優秀だというイメージがある。見つけてからすぐに手に取って会計へと向かう。レジで代金を払い、店を出る。高杉もそれについてくる形で店を出る。店を出た後は特にすることがあるわけでもなくショッピングモールを歩いていた。梨咲は、今回のデートが過去最高に楽しくなる予感がしていた。
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