短編集

ぽよ

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生き方

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 金曜日。5連勤の仕事が無事終わり、今日は定時でタイムカードを切ることができた。ゆったりと帰路について最寄りの駅へと歩いていく。東京にしては田舎の方にある路線で、15分に一本ほどしか走っていない路線。その電車にギリギリで乗り込み、ロスタイムを少しずつ減らしていく。なんとしてでも乗りたい人と、諦めの境地に立って次の電車に乗る人の二極化が激しいこの路線は、意外と混まないことが多い。一駅乗ったら急いで次の線へと乗り換える。階段を登ってから少し歩いてまた階段を降りる。控えめに言ってめんどくさい。しかし日本の電車制度としてはこれが限界だということは分かっていた。それでも電車に乗って家へと帰る。それほど便利な代物だ。そこからまた一駅電車に乗って、家の最寄駅に着く。改札を抜けて15分も歩けば家に着く。今週もまた40時間の苦行が終わり、無事家へと到着する。友人とのラインやTwitterを見ながらゆっくりとしたひと時を過ごす。約束された安寧がそこにはあった。一息もついて、夕飯を作ろうとかと思っていたその時、珍しい友人からラインがくる。

『知り合いにお金って貸せる?』
『え?うーん、住所と本名と身分証明証が3つ以上あればギリギリ』
『そうだよなぁ』

 唐突にきた質問にとりあえず答える。この友人は金を貸して欲しいとでも言われているのだろうか。いまいち状況が飲み込めていないが、ひとまず落ち着いて考える。そして、次の一手を打つ。

『君の相手はいくら貸して欲しいって言ってるの?』
『いや、俺が貸して欲しい』
『は?』
『10万ほど』
『10倍で返してくれるならいいよ』

 当然のことだが人との金の貸し借りはボランティアではない。信用が無ければ無い分だけ利子をふっかけられるのは当たり前のことである。その事が相手も分かっていると思っていた。しかしそうでは無い事が次の返信で分かる。

『悪徳業者……』
『は?』

 唐突だが間違いなく本心で返信されたであろう内容。思わず頭に血が上る。

『お前、自分の不手際で金を借りることになっておきながらなんでその言い草なんだ?ふざけてんのか?お前がどんな思想哲学で生きてようがお前の自由だが、お前の身勝手で他人に迷惑をかけてるのにも関わらずその自覚もなく他人を貶すとはどんな神経なんだ?お前、10万っていう金の重さ分かってんのか?まぁ分かってないから貸してって言えるんだろうけど』
『はい…』
『対して仲良くもないまま適当に雑談をするだけの友人から本当に無利子で金を借りられると思ってたのか?』
「いや、まぁ……』

 返信で分かってしまう。お人好しだと思われていて貸してくれると思われていたのだろう。それはそれで自分の行動を改める時が来たのかもしれないとも思うが、それでもまだ何かが燻っていた。

『さっきも言ったけど、お前がどんな思想哲学で生きて、何をしてようが勝手だが、全てが自分を中心に回ってなんでも好きに使えると思ってるなら本気で人間性を見直したほうがいいぞ』

 そこまで勢いで返信し、ラインを閉じる。既読がつくかどうかすら分からないが、縁が切れるのならそれはそれで万々歳だと言うべきレベルだ。正直なところ、控えめに言ってもお話にならないと言ったレベルだった。そこからしばらく家事やら自炊の夕食作りやらで時間に追われたが、しばらくしても返信がないままだった。全ての用事がひと段落し、風呂にも入った。あとは寝るだけと言う段階になっても気持ちはまだまだ収まらなかった。人生とは難しいものだ。人生の道はまだまだこれからも歩むことになる。どうかそこから外れないようにしたいと、今回の一件で思った。

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