短編集

ぽよ

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花泥棒

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「今年もきたよ」

 夏。今は盆の時期だ。かつて愛していた人の墓の前で手を合わせる。彼は10年前、事故に遭って亡くなった。最初は何も分からず放心状態のまま葬儀に参列し、現実を理解してからボロボロと泣き崩れた。涙も枯れ、未練がなくなる頃には10年が経っていた。葬儀の時には事務的に飾った花。しかし、今は心を込めて飾る花に変わった。そして今年も、花を奪われる。墓参りの時は、今暮らしている部屋に飾ってある花を持っていってるのだ。それが正しい礼儀かは分からない。最初の数回は生花だったけれど、今となってはすっかり造花だ。それすらも正しいかどうかを調べていない。けれど、心を込めて毎年飾っていることには変わりない。今年もまた、この人に花を奪われる。墓参りを最後まで終わらせて、帰路へと着く。来年もまた、この人に花を奪われる。それもまた、人生の楽しみになっている。この世とあの世を結ぶのが、この花だと信じているから。帰路につきながら、あの人のことを思う。私は今も元気だよ。だから心配しないでね。そんな願いと共に。
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