短編集

ぽよ

文字の大きさ
32 / 55
ファンタジー

正しさの代償

しおりを挟む
「ねえ、君はこれで正しかったと思う?」

 相方の質問に、俺は答えない。俺は正しいことをしたという信念がある。たとえ、地球が荒廃した砂漠と化し、人類が俺とこいつ以外滅亡することになったとしても。
 俺が魔法を使った範囲は全て焼け野原に代わった。相手と魔法がぶつかった範囲は荒野と化した。俺は俺の正しさを。相手は相手の正しさを証明するための戦争だった。

「確かに君は正しいと思うよ。でも、その正しさだけで生きていけるほど、私たちは強くないんだよ」

 相方の言葉には何も答えない。答えようもなかった。今この現状すら、俺には正しいかどうか判断ができない。
 戦闘員との戦闘だったが、激化する中で非戦闘員も巻き込まれていった。いつしかそれは地球全土へと広がり、全てを終焉へと引き込むにはあまりにも簡単だった。

「これからの生活もどうするか決まってないしさ」
「なんとかなるだろ」
「電気もガスも水道も止まってるのよ。整備する人いないんだから」
「そうだった」
「君の魔法も万能じゃないし、私の魔法も万能じゃない」
「そりゃそうだ」
「まずは家を見つけるところからだね」
「住める家なんてあるのか」
「君が壊したようなものだけどね」

 苦笑しながら相方はそう答える。相方と戦った半年間は、壮絶なものだった。その結果で得られたものが、この荒廃した地球なのだとしたら俺の正しさとは、なんだったのか考える必要があるのかもしれない。

「正しさの代償が、今の地球だとしたら、君の罪は重いよ」
「そりゃそうだ、裁く人すらいないけど」
「君のせいでこうなったんだからね!ちゃんと家見つけてよね!」
「あぁ、そうだな」

 目の前に広がるのは荒野と地平線。もはやどこにもかつて文明の栄えた地球の姿はない。相方と2人で歩きながら、生活拠点を探す。生きていけるかさえももはや怪しいが、生活拠点は欲しい。

「君に付き合ったせいでこんなことになっちゃったし、正しさの代償ってのは大きいね」
「まぁ、仕方ないな」

 ため息をつくしかできない状況で、相方と2人で歩いていく。その状況にしたのは自分だから、その代償を払うのはもちろん自分なのだが、これからは大変なことになりそうだった。
 ふらふら2時間ほど歩いたところに、建物があった。2人でその建物に入る。

「ここ、住むには困らなさそうだね」
「ここにするか」
「君に付き合うと大変なことになるからね。これくらい安定した場所が必要だよ」
「そうだな」
「そうだなじゃないのよ」

 笑いながら部屋を物色する相方。戦争があったとは思えないほど綺麗に整えられた建造物だった。どうやら電気とガスと水道は通ってなさそうだった。
 一通り中を見て回ってから、リビングと思しき部屋でひと段落をつく。俺も相方も、疲れていた。

「君が齎した正しさの代償、私もちゃんと払うよ」
「うん」

 完全に休憩の姿勢になっている相方。俺の身勝手に巻き込んでしまった被害者のはずなのに、俺の味方でいてくれる。普通ではないその状況に感謝しながら、生きていくしかない。自分が示した正しさの代償を払いながら。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

幽縁ノ季楼守

儚方ノ堂
キャラ文芸
「季楼庵当主の代理を務めてもらう」 幼少期、神隠しにあった過去を待つ青年ユメビシ。 迷い込んだ先で、事件に巻き込まれ両手を失い、生死を彷徨うことに。 ただ「死にたくない」と望んだ願いは、ある故人の手を移植することで実現した。 これを境に不死の体質へと変貌したユメビシは、約70年の時を経て、因縁の土地『瞑之島(みんのとう)』へ帰還する。 しかし、どうして今自分がここにいるのか、その理由となる記憶がすっぽり抜け落ちた状態で……。 奇妙な忘却に焦りを抱えながら、手がかりを求め探索するさなか、島の中枢を担う組織『季楼庵(きろうあん)』の面々と関わりを持ち、次々と巻き起こる騒動に身を投じていくのだった。 現代において、人と人ならざる者が共存する瞑之島を舞台に、半ば強制的に当主代理に据えられたユメビシの非日常。 異色の現代ファンタジー✖️和風奇譚✖️ミステリー 様々な思惑が交錯する中、彼の帰還を以て、物語は一つの結末へ動き出す。 その約束は、何十年何百年経ち、たとえ本人達が覚えていなくとも。 幽かな縁で繋がり続け、決して解けない糸となる。 それを人は、因縁――またの名を『呪い』と呼ぶのだった。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

処理中です...