【完結】婚約破棄されかけた令嬢は、走る。

❄️冬は つとめて

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宰相閣下が、走る。

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「お父様、大変ですわ!! 」
オードリーは父親がいる、宰相室の扉を大きく開けた。

「どうした!? オードリー。」
駆け込んで来た娘のドレスも髪も乱れているのに父リードルは驚愕した。オードリーは全力で此処まで走ってきたのだった。

「阿呆殿下が、婚約を破棄しようと公の場で 」
「あの阿呆なにを考えてるんだ!! 今日は王太子の婚約披露パーティーだぞ!! 他国の王族も来てるというのに…… 」
「阿呆の考えることは分かりませんわ。」
なわなわと震えながら言う父に、オードリーも応えた。

「なぜ公の場で婚約破棄をと考える。」
「阿呆の考えることは分かりませんわ。」
頭を押さえる父に、オードリーは応える。

「だから言ったんだ、いくら弟でも阿呆を呼ぶのはやめるようにと。」
「それよりお父様、早く阿呆を回収しないと王太子様達が会場に出られたら接触してなにを言うか心配ですわ。」
娘の言葉に父リードルは、気づいたように頷く。

「確かにその通りだ、早く阿呆を回収しないと。」
リードルは、近くの従者に陛下に会えるよう先触れを出す。

「お父様、私は婚約破棄を避けるために病気のふりをして会場を後にしましたので家へ帰りますわ。」
「ああ、よくやってくれたオードリー。」
自分の娘の機転に、頭が下がる。

「お父様、婚約破棄ではなく、此方から解消としてくださいませ。」
「無論だ、婚約破棄しようとした阿呆と結婚などありえん。解消をもぎ取って見せる。」
オードリーは頼もしい父の言葉に喜んだ。阿呆を支える為に賢いオードリーが王命で婚約者と選ばれたのだが、はっきり言って阿呆との婚約は嫌だった。だが阿呆だったおかげで解消できる。

解消する考えてくれれば苦労はなかったが。オードリーは阿呆の事は、父に任せて足取り軽く馬車へと向かった。


「こうしてはいられない。」

陛下へと先触れは先程出したが、時間が無い。王太子が会場に現れ、阿呆が接触する前に回収をしたい。おめでたい席で婚約破棄の話などされれば娘の矜持にも関わるし、国の威信にも関わる。

早く陛下に進言し、阿呆の回収の許可を貰わなくてはならない。宰相リードルは取り敢えず部屋を出て、走った。

走って、走って、走ると、目の前に先程先触れを頼んだ従者が目に入った。

「なにをしている、早く急げ!! 」
「さ、宰相閣下!! 」
後ろから従者を急かす。

「ほらほら走れ!! 時間が無いのだ!! 」
「は、はい!! 」
従者は先触れを持って走る、その後を宰相閣下も走る。


「へ、陛下。」
「何事だ? 」
「宰相閣下からの先触れで、至急お会いしたいと。」
「リードルが? 」
宰相閣下の従者から、打診を受けた国王の従者が陛下に伺いをかける。

「分った。直ぐに会うと返事を、」
「お会いになるそうです!! 」
陛下の返事を直ぐに、扉の外にいる宰相閣下に伝えた。

「陛下!! 」
従者の声を聞いて、リードルは直ぐに扉を開いた。

「リードル、来ておったのか。」
「直ぐにを、回収してください陛下。」

「あ、阿呆? 阿呆とは誰だ。」
「阿呆と言ったら、アレしかいないでしょう。」
「ダンサンか? 」
「阿呆で、通じましたか。」
通じたくはなかったが、通じてしまうほど第二王子は阿呆だった。

「それで、なぜ回収しなくてはならないのだ? 」
「公の場で、婚約破棄をしようとしました。」

「公の場? まさか、王太子の婚約披露パーティーでか? 」
「その披露パーティーで、です。」
よろっと、陛下の体が揺れた。

「婚約破棄したのか? 」
「そこは、我が娘に抜かりはありません。病気のふりで、退席したようで未然に防ぎました。」

「そ、そうか、流石はオードリー嬢だ。」
陛下は安堵した。

「しかし、早く回収しないと王太子殿下の前でなにを言い出すか分かったものではありません。」
「うぬぬぬっ…… その通りだ。」
陛下は認めたくないが、認めるしかなかった。





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