2 / 18
宰相閣下が、走る。
しおりを挟む
「お父様、大変ですわ!! 」
オードリーは父親がいる、宰相室の扉を大きく開けた。
「どうした!? オードリー。」
駆け込んで来た娘のドレスも髪も乱れているのに父リードルは驚愕した。オードリーは全力で此処まで走ってきたのだった。
「阿呆殿下が、婚約を破棄しようと公の場で 」
「あの阿呆なにを考えてるんだ!! 今日は王太子の婚約披露パーティーだぞ!! 他国の王族も来てるというのに…… 」
「阿呆の考えることは分かりませんわ。」
なわなわと震えながら言う父に、オードリーも応えた。
「なぜ公の場で婚約破棄をと考える。」
「阿呆の考えることは分かりませんわ。」
頭を押さえる父に、オードリーは応える。
「だから言ったんだ、いくら弟でも阿呆を呼ぶのはやめるようにと。」
「それよりお父様、早く阿呆を回収しないと王太子様達が会場に出られたら接触してなにを言うか心配ですわ。」
娘の言葉に父リードルは、気づいたように頷く。
「確かにその通りだ、早く阿呆を回収しないと。」
リードルは、近くの従者に陛下に会えるよう先触れを出す。
「お父様、私は婚約破棄を避けるために病気のふりをして会場を後にしましたので家へ帰りますわ。」
「ああ、よくやってくれたオードリー。」
自分の娘の機転に、頭が下がる。
「お父様、婚約破棄ではなく、此方から解消としてくださいませ。」
「無論だ、婚約破棄しようとした阿呆と結婚などありえん。解消をもぎ取って見せる。」
オードリーは頼もしい父の言葉に喜んだ。阿呆を支える為に賢いオードリーが王命で婚約者と選ばれたのだが、はっきり言って阿呆との婚約は嫌だった。だが阿呆だったおかげで解消できる。
解消する場所さえ考えてくれれば苦労はなかったが。オードリーは阿呆の事は、父に任せて足取り軽く馬車へと向かった。
「こうしてはいられない。」
陛下へと先触れは先程出したが、時間が無い。王太子が会場に現れ、阿呆が接触する前に回収をしたい。おめでたい席で婚約破棄の話などされれば娘の矜持にも関わるし、国の威信にも関わる。
早く陛下に進言し、阿呆の回収の許可を貰わなくてはならない。宰相リードルは取り敢えず部屋を出て、走った。
走って、走って、走ると、目の前に先程先触れを頼んだ従者が目に入った。
「なにをしている、早く急げ!! 」
「さ、宰相閣下!! 」
後ろから従者を急かす。
「ほらほら走れ!! 時間が無いのだ!! 」
「は、はい!! 」
従者は先触れを持って走る、その後を宰相閣下も走る。
「へ、陛下。」
「何事だ? 」
「宰相閣下からの先触れで、至急お会いしたいと。」
「リードルが? 」
宰相閣下の従者から、打診を受けた国王の従者が陛下に伺いをかける。
「分った。直ぐに会うと返事を、」
「お会いになるそうです!! 」
陛下の返事を直ぐに、扉の外にいる宰相閣下に伝えた。
「陛下!! 」
従者の声を聞いて、リードルは直ぐに扉を開いた。
「リードル、来ておったのか。」
「直ぐにあの阿呆を、回収してください陛下。」
「あ、阿呆? 阿呆とは誰だ。」
「阿呆と言ったら、アレしかいないでしょう。」
「ダンサンか? 」
「阿呆で、通じましたか。」
通じたくはなかったが、通じてしまうほど第二王子は阿呆だった。
「それで、なぜ回収しなくてはならないのだ? 」
「公の場で、婚約破棄をしようとしました。」
「公の場? まさか、王太子の婚約披露パーティーでか? 」
「その披露パーティーで、です。」
よろっと、陛下の体が揺れた。
「婚約破棄したのか? 」
「そこは、我が娘に抜かりはありません。病気のふりで、退席したようで未然に防ぎました。」
「そ、そうか、流石はオードリー嬢だ。」
陛下は安堵した。
「しかし、早く回収しないと王太子殿下の前でなにを言い出すか分かったものではありません。」
「うぬぬぬっ…… その通りだ。」
陛下は認めたくないが、認めるしかなかった。
オードリーは父親がいる、宰相室の扉を大きく開けた。
「どうした!? オードリー。」
駆け込んで来た娘のドレスも髪も乱れているのに父リードルは驚愕した。オードリーは全力で此処まで走ってきたのだった。
「阿呆殿下が、婚約を破棄しようと公の場で 」
「あの阿呆なにを考えてるんだ!! 今日は王太子の婚約披露パーティーだぞ!! 他国の王族も来てるというのに…… 」
「阿呆の考えることは分かりませんわ。」
なわなわと震えながら言う父に、オードリーも応えた。
「なぜ公の場で婚約破棄をと考える。」
「阿呆の考えることは分かりませんわ。」
頭を押さえる父に、オードリーは応える。
「だから言ったんだ、いくら弟でも阿呆を呼ぶのはやめるようにと。」
「それよりお父様、早く阿呆を回収しないと王太子様達が会場に出られたら接触してなにを言うか心配ですわ。」
娘の言葉に父リードルは、気づいたように頷く。
「確かにその通りだ、早く阿呆を回収しないと。」
リードルは、近くの従者に陛下に会えるよう先触れを出す。
「お父様、私は婚約破棄を避けるために病気のふりをして会場を後にしましたので家へ帰りますわ。」
「ああ、よくやってくれたオードリー。」
自分の娘の機転に、頭が下がる。
「お父様、婚約破棄ではなく、此方から解消としてくださいませ。」
「無論だ、婚約破棄しようとした阿呆と結婚などありえん。解消をもぎ取って見せる。」
オードリーは頼もしい父の言葉に喜んだ。阿呆を支える為に賢いオードリーが王命で婚約者と選ばれたのだが、はっきり言って阿呆との婚約は嫌だった。だが阿呆だったおかげで解消できる。
解消する場所さえ考えてくれれば苦労はなかったが。オードリーは阿呆の事は、父に任せて足取り軽く馬車へと向かった。
「こうしてはいられない。」
陛下へと先触れは先程出したが、時間が無い。王太子が会場に現れ、阿呆が接触する前に回収をしたい。おめでたい席で婚約破棄の話などされれば娘の矜持にも関わるし、国の威信にも関わる。
早く陛下に進言し、阿呆の回収の許可を貰わなくてはならない。宰相リードルは取り敢えず部屋を出て、走った。
走って、走って、走ると、目の前に先程先触れを頼んだ従者が目に入った。
「なにをしている、早く急げ!! 」
「さ、宰相閣下!! 」
後ろから従者を急かす。
「ほらほら走れ!! 時間が無いのだ!! 」
「は、はい!! 」
従者は先触れを持って走る、その後を宰相閣下も走る。
「へ、陛下。」
「何事だ? 」
「宰相閣下からの先触れで、至急お会いしたいと。」
「リードルが? 」
宰相閣下の従者から、打診を受けた国王の従者が陛下に伺いをかける。
「分った。直ぐに会うと返事を、」
「お会いになるそうです!! 」
陛下の返事を直ぐに、扉の外にいる宰相閣下に伝えた。
「陛下!! 」
従者の声を聞いて、リードルは直ぐに扉を開いた。
「リードル、来ておったのか。」
「直ぐにあの阿呆を、回収してください陛下。」
「あ、阿呆? 阿呆とは誰だ。」
「阿呆と言ったら、アレしかいないでしょう。」
「ダンサンか? 」
「阿呆で、通じましたか。」
通じたくはなかったが、通じてしまうほど第二王子は阿呆だった。
「それで、なぜ回収しなくてはならないのだ? 」
「公の場で、婚約破棄をしようとしました。」
「公の場? まさか、王太子の婚約披露パーティーでか? 」
「その披露パーティーで、です。」
よろっと、陛下の体が揺れた。
「婚約破棄したのか? 」
「そこは、我が娘に抜かりはありません。病気のふりで、退席したようで未然に防ぎました。」
「そ、そうか、流石はオードリー嬢だ。」
陛下は安堵した。
「しかし、早く回収しないと王太子殿下の前でなにを言い出すか分かったものではありません。」
「うぬぬぬっ…… その通りだ。」
陛下は認めたくないが、認めるしかなかった。
14
あなたにおすすめの小説
お飾りの婚約者で結構です! 殿下のことは興味ありませんので、お構いなく!
にのまえ
恋愛
すでに寵愛する人がいる、殿下の婚約候補決めの舞踏会を開くと、王家の勅命がドーリング公爵家に届くも、姉のミミリアは嫌がった。
公爵家から一人娘という言葉に、舞踏会に参加することになった、ドーリング公爵家の次女・ミーシャ。
家族の中で“役立たず”と蔑まれ、姉の身代わりとして差し出された彼女の唯一の望みは――「舞踏会で、美味しい料理を食べること」。
だが、そんな慎ましい願いとは裏腹に、
舞踏会の夜、思いもよらぬ出来事が起こりミーシャは前世、読んでいた小説の世界だと気付く。
王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました
さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。
王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ
頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。
ゆるい設定です
平民とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の王と結婚しました
ゆっこ
恋愛
「リリアーナ・ベルフォード、これまでの婚約は白紙に戻す」
その言葉を聞いた瞬間、私はようやく――心のどこかで予感していた結末に、静かに息を吐いた。
王太子アルベルト殿下。金糸の髪に、これ見よがしな笑み。彼の隣には、私が知っている顔がある。
――侯爵令嬢、ミレーユ・カスタニア。
学園で何かと殿下に寄り添い、私を「高慢な婚約者」と陰で嘲っていた令嬢だ。
「殿下、どういうことでしょう?」
私の声は驚くほど落ち着いていた。
「わたくしは、あなたの婚約者としてこれまで――」
【完結】元悪役令嬢は、最推しの旦那様と離縁したい
うり北 うりこ@ざまされ2巻発売中
恋愛
「アルフレッド様、離縁してください!!」
この言葉を婚約者の時から、優に100回は超えて伝えてきた。
けれど、今日も受け入れてもらえることはない。
私の夫であるアルフレッド様は、前世から大好きな私の最推しだ。 推しの幸せが私の幸せ。
本当なら私が幸せにしたかった。
けれど、残念ながら悪役令嬢だった私では、アルフレッド様を幸せにできない。
既に乙女ゲームのエンディングを迎えてしまったけれど、現実はその先も続いていて、ヒロインちゃんがまだ結婚をしていない今なら、十二分に割り込むチャンスがあるはずだ。
アルフレッド様がその気にさえなれば、逆転以外あり得ない。
その時のためにも、私と離縁する必要がある。
アルフレッド様の幸せのために、絶対に離縁してみせるんだから!!
推しである夫が大好きすぎる元悪役令嬢のカタリナと、妻を愛しているのにまったく伝わっていないアルフレッドのラブコメです。
全4話+番外編が1話となっております。
※苦手な方は、ブラウザバックを推奨しております。
10日後に婚約破棄される公爵令嬢
雨野六月(旧アカウント)
恋愛
公爵令嬢ミシェル・ローレンは、婚約者である第三王子が「卒業パーティでミシェルとの婚約を破棄するつもりだ」と話しているのを聞いてしまう。
「そんな目に遭わされてたまるもんですか。なんとかパーティまでに手を打って、婚約破棄を阻止してみせるわ!」「まあ頑張れよ。それはそれとして、課題はちゃんとやってきたんだろうな? ミシェル・ローレン」「先生ったら、今それどころじゃないって分からないの? どうしても提出してほしいなら先生も協力してちょうだい」
これは公爵令嬢ミシェル・ローレンが婚約破棄を阻止するために(なぜか学院教師エドガーを巻き込みながら)奮闘した10日間の備忘録である。
【完結】真の聖女だった私は死にました。あなたたちのせいですよ?
時
恋愛
聖女として国のために尽くしてきたフローラ。
しかしその力を妬むカリアによって聖女の座を奪われ、顔に傷をつけられたあげく、さらには聖女を騙った罪で追放、彼女を称えていたはずの王太子からは婚約破棄を突きつけられてしまう。
追放が正式に決まった日、絶望した彼女はふたりの目の前で死ぬことを選んだ。
フローラの亡骸は水葬されるが、奇跡的に一命を取り留めていた彼女は船に乗っていた他国の騎士団長に拾われる。
ラピスと名乗った青年はフローラを気に入って自分の屋敷に居候させる。
記憶喪失と顔の傷を抱えながらも前向きに生きるフローラを周りは愛し、やがてその愛情に応えるように彼女のほんとうの力が目覚めて……。
一方、真の聖女がいなくなった国は滅びへと向かっていた──
※小説家になろうにも投稿しています
いいねやエール嬉しいです!ありがとうございます!
婚約者が妹と結婚したいと言ってきたので、私は身を引こうと決めました
日下奈緒
恋愛
アーリンは皇太子・クリフと婚約をし幸せな生活をしていた。
だがある日、クリフが妹のセシリーと結婚したいと言ってきた。
もしかして、婚約破棄⁉
悪役令嬢、記憶をなくして辺境でカフェを開きます〜お忍びで通ってくる元婚約者の王子様、私はあなたのことなど知りません〜
咲月ねむと
恋愛
王子の婚約者だった公爵令嬢セレスティーナは、断罪イベントの最中、興奮のあまり階段から転げ落ち、頭を打ってしまう。目覚めた彼女は、なんと「悪役令嬢として生きてきた数年間」の記憶をすっぽりと失い、動物を愛する心優しくおっとりした本来の性格に戻っていた。
もはや王宮に居場所はないと、自ら婚約破棄を申し出て辺境の領地へ。そこで動物たちに異常に好かれる体質を活かし、もふもふの聖獣たちが集まるカフェを開店し、穏やかな日々を送り始める。
一方、セレスティーナの豹変ぶりが気になって仕方ない元婚約者の王子・アルフレッドは、身分を隠してお忍びでカフェを訪れる。別人になったかのような彼女に戸惑いながらも、次第に本当の彼女に惹かれていくが、セレスティーナは彼のことを全く覚えておらず…?
※これはかなり人を選ぶ作品です。
感想欄にもある通り、私自身も再度読み返してみて、皆様のおっしゃる通りもう少しプロットをしっかりしてればと。
それでも大丈夫って方は、ぜひ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる