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思い込みは、否定される。

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『マーガレット、彼女はリンダとリラ。』
(お母様、確かお父様の双子の妹の名前は…… ) 
(リンダよ…… )
会ったこともないレムスの双子の妹、双子だから似ていると思いこんでいた。突然連れてきた女性を見て、頭に血が上りレムスの妹の名前が飛んでいた。

『妹だ。』
『そうね、妹です。』
レムスは確かに『妹』だと最初に言った。そしてリンダも『妹』だと応えた。ただ余りにもリラがアゼリア(弟)に似ていたことで『隠し子』だと二人は勘違いをして、そして直ぐにレムスを拒絶した。

もし、マーガレットとローズがレムスを拒絶しなければ。

リンダが『愛人』で無ければ話は変わってくる。侍女や使用人がリンダを優しい人だと言うのも、マーガレットの体調を気遣って使用人達と力を合わせて休ませてあげようと努力をしていたから。レムスと二人で遅くまで部屋にいても兄妹だから何の問題もない。 

もし、少しでも話し合いに応じていたら。

リラがアゼリアと仲睦まじいのも、ローズを姉と慕うのも従姉妹なら微笑ましいことだ。

頑なにアンナや侍女、使用人達を拒絶せず少しでも話をしていれば。直ぐに勘違いに気がついただろう。

何故なら、レムスとリンダが兄妹だと使用人達は知っていたのだから。三ヶ月後に訪れる筈が、前倒して訪れただけで引っ越しの準備が終われば屋敷から出ていくのだ。その事はマーガレットも知って、仲良くしたいと話していた。まさか、二人が『愛人』と勘違いをしているとは誰も思ってはいなかった。

((……… ))
マーガレットとローズは、顔を見合わせる。とてつもない勘違いに、穴があったら入りたい気分だった。

(どうしましょう、ローズ。)
恥ずかしすぎて、本当の事が言えなくなった二人がいた。このままではマーガレットは勘違いで離婚になってしまう。

(どうして、私はレムスの話を聞かなかったの? )
扉の前で朝晩、レムスが話をしているのを彼女らは声も聞きたくないと耳を塞いた。あの時、話を聞いていれば。

(でもでも、お母様の事は勘違いでもスコット様の事は勘違いではないわ。だって私は見たんだもの。)
窓からスコットを見送るリラの姿を、二人で何処かに出かける姿を。

「スコット様は、何時もリラと二人きりで部屋にいたでしょう。」
「えっ!? ローズ、二人きりだなんてそんな事はしていない!! 」
「うそ、二人きりだったじゃない。」
「嘘じゃない、アゼリアもいた。」
ローズの言葉にスコットは反論する。

「アゼリア、あなたいたの? 」
「僕、いたよ。」
ローズの問いかけにアゼリアは応えた。 

「お姉さまが叫んで出ていった時、僕いたよ。」
(いたの!? )
確かにスコットとリラが二人きりだった部屋にアゼリアは、いた。床で転がってお絵かきをしていた。だが、頭に血がのぼったローズにはアゼリアは見えてなかった。

「いつもお菓子を食べた後は、お兄さまに遊んでもらってたよ。」
「小一時間ほど遊びました。」
アゼリアの言葉にスコットは付け足して話す。マーガレットの部屋に籠もっていたローズには、扉の前でのスコットとリラの会話しか分からない。

(えっ、あの子と一緒ではなかったの? )
ローズの目がリラを見る。

「私、部屋で勉強してました。」
リラは素直に応えた。

「見送りに二人でいたじゃない。」
ローズは確かに窓辺からスコットとリラを見た。

「僕、いたよ。」
(いたの!? )
目をパチクリして、アゼリアは応えた。確かにアゼリアはスコットのお見送りもリラと一緒にしていた。しかしリラの影に隠れてローズには見えなかった。

「スコット様とリラのお出かけ、」 
「僕、いたよ。」
ローズが最後まで言葉にする前にアゼリアは応えた。お出かけの時も、しっかりアゼリアは同行していた。そして男の子の憧れ、木刀を買ってもらったのだ。

「アゼリアが、小さいから悪い!! 」
「ぼ、僕がわるいの!? 」
言いようのない恥ずかしさで、ローズはアゼリアにあたった。

「ローズ、そのお出かけ。」
「私達も、いたの。」
ローズの友達のリリアーネとカナリも自分達も同行したと片手をあげた。

「彼女達には、ローズへのプレゼントのお勧めを聞いたんだ。」
「そう、仲直りのサプライズパーティー為に。」
「ローズと仲直りしたくって、秘密で用意したの。」
スコットと友達二人の素直な言葉にローズは、冷や汗が出た。頑なに頑なに、距離をとっていた三人の気持ちが重い。

「本当はマーガレットさまと伯父さまの仲直りパーティー&マーガレットさまとローズさまと仲良くなりたいなサプライズパーティーだったの。」
リラが、ローズに話しかける。

「お客様を呼ぼうにもこっちに知り合いがいないから、スコットさまにローズさまのお友達を紹介してもらったの。」
リラはおずおずとローズを見て、頭を下げた。

「スコットさまの事、誤解させてごめんなさい。」
(やめてーー!! めっちゃいい子じゃない!! 私が勝手に勘違いしただけよ!! )

「ア、アゼリアが、アゼリアが小さ過ぎて見えなかったから!! 」
「僕がわるいの? 」 
アゼリアはローズに責められて、目に涙をためた。

「アゼリアは、リンダ様をお母様と呼んでたし!! 」
「ローズさま、ごめんなさい。それは私がアゼリアに、 」
リラはアゼリアが何故リンダをお母様と呼んだのは自分の所為だと謝った。

「お母さまが言うには、女性にはの言葉は地味に傷付くから言っては駄目だと言われて。だったらリラお姉さまのお母さまだから、リンダお母さまでいいじゃない、と私が。」
(そうなの、おばさま呼ばわりはは女性は傷つくの? )
ローズはまだ若いから、地味に傷付く事が分からない。

そして、総ては否定される。
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