【完結】野蛮な辺境の令嬢ですので。

❄️冬は つとめて

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花よりだんご、虫。

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ダンスホールにアルテミスの声が木霊する。プシュケーは後ろにクピドを庇いながら、アルテミスの言葉を否定した。

「ウソよ!! 」
「嘘じゃないわ。」
「ウソよ、ウソ、ウソ、ウソよ!! 」
プシュケーはアルテミスに挑んで近づく。そして彼女の前で叫んだ。

「クピド様と、婚約したじゃない!! 」
「そ、それは…… 」
アルテミスはプシュケーの圧力に一歩足を下げた。

何たる屈辱。

「クピド様のような、好きじゃなきゃ婚約しないわよ!! 」
プシュケーのあまりの正論にアルテミスは、三歩後ろに下がった。

「確かに公爵令嬢の言う通りだ。アルテミス。」
プシュケーの言葉に頷いている周りの野次馬の中から一人の青年が、公爵令嬢の言葉を肯定して現れた。

黄金の髪を持ち、濃い碧の瞳の美丈夫が貴族達を分けいって入ってきた。彼の名はアポロ・ギリシア侯爵、辺境を束ねる領主でありアルテミスの兄であった。

「アポロお兄様…… 」
アポロは妹の前に立ち、優しく問い掛ける。

「公爵令嬢の言葉の通り、俺はお前があの…… (名前を忘れた。)アホな王子を好いているから婚約を承諾したと思っている。」
「そんな、お兄様!! 」
アルテミスは兄アポロ言葉に驚き扇子を握りしめた。

「他に考えられない。好いてなければ、あのようなと婚約など…… 」
アポロは悔しそうに妹を上から見定める。手は強く握り締められ震えている。

「そうですわ!! 誰も彼もが婚姻の打診を断っている中で、あなたは婚姻を承諾したのよ。好きでなければ考えられない!! 」

アルテミスはそのプシュケーの言葉に驚き、目を見開いた。

(えっ、断ってもよかったの? だって王命でしょう。)

「お父様だって、私とクピド様の婚姻に反対しているのよ。皆に断られ、最終的に王命で王様がお父様に泣きついて私に回って来ると思ってたのに!! 」
プシュケーは心の内を暴露する。

「お父様は『冷徹の宰相』と呼ばれてますが、友情に熱く泣きつかれたら断れないのよ。だから安心していたのに。なのに、なのに…… 私と同じようにクピド様を好きながいるなんて!! 」
「お前がそんなとは思わなかったぞ、アルテミス。」
アポロはわななき、唇を強く噛み締めた。

(ええーー、そこまで酷いの? このアホ王子。て、言ゅうか会ったこと無いってお兄様知ってるわよね。)

「確かにお前は普通の令嬢とは違い、花よりだんご虫の方が好きだった。」
アポロはしみじみと昔を思い出す。

「お兄様、だんご虫と王子を一緒にしないで。」
「そうですわ、だんご虫と一緒にしないでくださる。」 
アポロの言葉に二人の令嬢は、王子とだんご虫を一緒にするなと怒りをあらわにする。

「お兄様、だんご虫は危険を感じると丸まって可愛いのですよ。」

「だんご虫は、葉を土に変えてくれる能力を持つ有能な虫ですわ。クピド様は害にも益にもなりませんわ。」
令嬢二人はアポロにだんご虫の可愛さと有能さをアピールする。

「そうか…… 王子は害にも益にもならないか…… 」
「そうですわ。」
鼻息荒く、褒め称えるようにプシュケーはクピドの無能さを例えて見せる。

(好きなのよね? 王子が。)

「そんな無能な役にもたたないクピド様と婚約するなんて、好きじゃなきゃ出来ないわ!! 」

(えっ、またそこに戻るの? )

公爵令嬢プシュケーはアルテミスを睨みつけるその目を嫉妬の炎で燃やしていた。ついでに真っ赤なドレスも炎のように鮮やかに乱れきっていた。

アルテミスはその迫力に、恋する乙女の激しさ知る。彼女は自分より弱い、だがこの圧迫するような殺気にも似た気配は恋というもの恐ろしさを感じさせた。

だが、アルテミスは辺境に住む令嬢のプライドに掛けて足を踏ん張った。

何のプライドか?

「この婚約は、王命の政略結婚よ。私に心はないわ。」
「ウソ!! 」
「嘘じゃないわ。」
「ウソよ、ウソ、ウソ、ウソよ!! 」
プシュケーはアルテミスの言葉を受け取らない。

「国も辺境の侯爵家の御令嬢に王家が無理強いなんてするはずがないわ!! 」 
「勿論だ、国王陛下は『どうかな? 無理にとは言わない。』と敬意を払って下された。」
嫉妬に燃えた瞳をアルテミスに向けたプシュケーの言葉に、手を握り締めてアポロは妹を悲しそうに見つめた。


『どうかな? 無理にとは言わない。』
アポロは王から妹君と王子の打診を受けた。
 
断るつもりだった。

「お兄様、私。婚約を受け入れますわ。」
「アルテミス…… 」
青天のへきれきであった。

『な、なに!! 本当にいいのか!? アレだぞ、分かっているのかクピドだぞ!? 』

『そ、そうか…… 妹君が婚約を望むのか。そうか…… そうなのか。』

『無理だと思っていた。最後は宰相に泣きつこうかと…… プシュケー嬢はクピドの幼馴染でもあるからな。』

『プシュケー嬢はもの好きでな。まさか妹君も、もの好きとは…… 一体何処で、クピドを見初めたんだ? 』
アポロは王との会話を思い出していた。


「それなのに婚約をするなんて、好き以外に考えられないじゃない!! 」
指差すプシュケー、彼女の言葉にアルテミスは追い込まれた。


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