【完結】野蛮な辺境の令嬢ですので。

❄️冬は つとめて

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もう一つの不良物件。

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歌いきって、土下座をする王子の前に仁王立ちするアルテミス。顔を上げたクピド王子の襟首を持って、力尽くで立たせた。

、いつ弄ばれたの? 」
「あれ? いつだったかな…… 」
アルテミスの声が震えている。
アルテミスの質問にクピド王子は首を傾げて考えた。

「会ったことも話したことも、ましてや手紙の遣り取りもなかったわよね。」
「だって手紙は苦手だ。」
手紙だけではない書類仕事は総てが彼は苦手だった。

あははは、と笑うクピドにアルテミスの体が怒りで震えている。

「それで、どうやって弄んだの? 」

王子は首を傾げて考えた、瞳が漂う。

「弄んでない!? 」

「正解よ!! 」
アルテミスは王子をつき放した。王子は床にコロンと尻もちを付く。

「私はあなたの事なんて、好きじゃないわ!! 」
ダンダンと、怒りで右足を床に何度も叩きつけ降り鳴らすアルテミス。

「ええ、そうよ!! 私は野蛮な辺境の令嬢よ!! 無知で馬鹿な令嬢よ!! 」
アルテミスはこの不良物件を好きだと思われるより、自分が無知の馬鹿だと暴露する方を選んだ。

「ええ、知らなかったわよ!! 辺境が、お兄様が国に敬意を払われていたことを!! 」
アルテミスは国の政治的な事より、辺境に関する自然や剣術を主に勉強をやっていた。

「よくお兄様がため息まじりで王命を聞いていたから、まさか泣き落としとは知らなかったわよ!! 」
アルテミスは、王都や王家に関心が無かったので、まさか王が泣き落としをするとは思ってもいなかった。

王がおはこ(泣き落とし)を使うのは、主に重要な高位人物であるので他の貴族達も其れは知らなかった。

「王命を逆らったら、益々お兄様に仕事を押し付けると思ったのよ!! 」
「アルテミス……… 」
アポロは妹の言葉に目を見張った。興奮のあまりアルテミスは扇子を握り締め、折った。

「私は野蛮な辺境の令嬢よ!! お兄様が下卑されると思ってこの婚姻を承諾したのよ!! 」
みんなに聞こえるように大きな声でアルテミスは発言する。

「この不良物件に好意などないわ!! 」
静まり返った会場内に、アルテミスの怒りの本心が響き渡った。

「不良物件て、なに? 」
ぽけっと、した顔でクピド王子はアルテミスを見上げていた。彼にはなんだか分からなかった。

「信じて、いいのですね。」
アルテミスの心からの訴えに、プシュケーが感動のあまり涙を目に溜めて聞いてきた。

「信じて、不良物件は欲しくないわ。」
真剣な目で応えるアルテミスに、プシュケーは涙を流してクピドに抱きついた。

「そうですよね。こんな、私以外に欲しがりませんわ!! 」
「その通りよ。」
喜びはしゃぐプシュケーに、アルテミスは心底からの言葉で応え微笑んだ。

「屋敷を買うのか? プシュケー。」
クピド王子には分からなかった。

「ええ、私たち結婚できますわ。クピド様!! 」
プシュケーは満面の笑みでクピドに応える。心からの微笑みだ。

「アルテミス様は、不良物件など本当に欲しくはないそうですわ。結婚できますわ。」
「結婚できるのか!? ありがとう、アルテミス。不良物件を捨ててくれて。」
王子は不良物件が自分だとは分かってなかった。

「お父様!! クピド様との結婚をお許しください!! 」
プシュケーは王の隣りにいる宰相の父親に許しを請えよう懇願した。クピド王子も王も、うるうると捨てられた子犬のような目で宰相を見る。王のだ。

この目に宰相は弱かった。

「はぁ、好きにしなさい。」
「ありがとう、お父様!! 」
呆れながらも宰相は娘の婚姻を許した。娘の声が弾む。

「結婚ですわ、クピド様!! 」
「結婚か!! 」
「「結婚、結婚!! 」」
二人は手を握りしめて、嬉しそうにその場でくるくると回りだした。



「アルテミス、本当にいいのか? 」
不安そうに兄アポロが妹に聞いてくる。

「ええ、お兄様。私は、王子を好きではありませんわ。」
「そ、そうか…… 」
アポロはほっとしたように声を出した。

「そうだよな、あんな…… (名前を忘れた)、お前が好きになるはずわないな。」
「ええ、ありませんわ。」
アルテミスは周りを見定めながら言った。周りの貴族達も『やっぱりな』『そうだろうな』と頷いてくれてるのにアルテミスはほっとする。

「お兄様。私無知でしたわ。これを期に、社会の事もちゃんと勉強致しますわ。」
真剣な目で兄に応える。

「ああ、そうだな。少しは社交界に出るといい。あそこは噂の中心だ、色んな情報が手に入る。」
アポロは優しく妹の肩を抱いた。

パンパンと宰相の手を叩く音で、その場が仕切り直される。

「プシュケー、その馬鹿王子を連れて部屋に戻りなさい。」
「分かりましたわお父様。」
父親の言葉にプシュケーは嬉しそうに従った。

「アルテミス様、ありがとう!! 」
「アルテミス、ありがとう!! 」
「「結婚式には来てよね!! 」」
会場を出る前にアルテミスを結婚式に誘った。

「ええ、喜んで。」
アルテミスは笑顔で応えた。

クピドとプシュケー公爵令嬢は、嬉しそうにスキップをしながら会場を出て行った。



静かに会場内に音楽が流れ出す。

(二度と恥はかかないわ。)

アルテミスは兄に差し出される手を取る。兄にエスコートをされながら、見聞を広める為に貴族達の中へと入って行った。


「わたくしの息子には、洗練された公爵令嬢がお似合いですわ。
ほほほっ。」
王妃の呟いた言葉に『ああ、ここにも不良物件が』と、王と宰相の二人はため息をついた。





           【完】




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感想 6

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みんなの感想(6件)

夜桜
2025.07.11 夜桜

読み始めですが気になりまして。前のコメントにもありますが宣伝された美しさ→洗練かなと。1話目です〜

2025.07.14 ❄️冬は つとめて

ありがとうございます。
読み返しはしているのですが、さらっと読んでいるので誤字脱字が多々あり、恥ずかしい限りです。
ハズカシ~(〃艸)

解除
毒島醜女
2025.01.30 毒島醜女

この兄妹なら辺境は安泰だ~
しかし不良物件を二つも抱えた王様の苦労を思うと涙が止まらない…;;

2025.02.04 ❄️冬は つとめて

防衛は辺境伯。内政は宰相。外交は王太子。害にも益にもたたないピクドはプシュケーがもらってくれてます。

王妃は棒にも箸にかからないですが、薪となって炎上しそうです。
その時は、王様十八番の泣き落としを。

解除
Freyja
2025.01.26 Freyja

面白かったです。
が、一つ…「宣伝された公爵令嬢」とは?
「洗練された公爵令嬢」の間違いではないでしょうか?

2025.01.26 ❄️冬は つとめて

ありがとうございます。
m(_ _)m 

これ以上、恥をかかなくてすみます。

解除

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