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もう一つの不良物件。
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歌いきって、土下座をする王子の前に仁王立ちするアルテミス。顔を上げたクピド王子の襟首を持って、力尽くで立たせた。
「私が、いつ弄ばれたの? 」
「あれ? いつだったかな…… 」
アルテミスの声が震えている。
アルテミスの質問にクピド王子は首を傾げて考えた。
「会ったことも話したことも、ましてや手紙の遣り取りもなかったわよね。」
「だって手紙は苦手だ。」
手紙だけではない書類仕事は総てが彼は苦手だった。
あははは、と笑うクピドにアルテミスの体が怒りで震えている。
「それで、どうやって弄んだの? 」
王子は首を傾げて考えた、瞳が漂う。
「弄んでない!? 」
「正解よ!! 」
アルテミスは王子をつき放した。王子は床にコロンと尻もちを付く。
「私はあなたの事なんて、ぜんぜん好きじゃないわ!! 」
ダンダンと、怒りで右足を床に何度も叩きつけ降り鳴らすアルテミス。
「ええ、そうよ!! 私は野蛮な辺境の令嬢よ!! 無知で馬鹿な令嬢よ!! 」
アルテミスはこの不良物件を好きだと思われるより、自分が無知の馬鹿だと暴露する方を選んだ。
「ええ、知らなかったわよ!! 辺境が、お兄様が国に敬意を払われていたことを!! 」
アルテミスは国の政治的な事より、辺境に関する自然や剣術を主に勉強をやっていた。
「よくお兄様がため息まじりで王命を聞いていたから、まさか泣き落としとは知らなかったわよ!! 」
アルテミスは、王都や王家に関心が無かったので、まさか王が泣き落としをするとは思ってもいなかった。
王がおはこ(泣き落とし)を使うのは、主に重要な高位人物であるので他の貴族達も其れは知らなかった。
「王命を逆らったら、益々お兄様に仕事を押し付けると思ったのよ!! 」
「アルテミス……… 」
アポロは妹の言葉に目を見張った。興奮のあまりアルテミスは扇子を握り締め、折った。
「私は野蛮な辺境の令嬢よ!! お兄様が下卑されると思ってこの婚姻を承諾したのよ!! 」
みんなに聞こえるように大きな声でアルテミスは発言する。
「この不良物件に好意などないわ!! 」
静まり返った会場内に、アルテミスの怒りの本心が響き渡った。
「不良物件て、なに? 」
ぽけっと、した顔でクピド王子はアルテミスを見上げていた。彼にはなんだか分からなかった。
「信じて、いいのですね。」
アルテミスの心からの訴えに、プシュケーが感動のあまり涙を目に溜めて聞いてきた。
「信じて、不良物件は欲しくないわ。」
真剣な目で応えるアルテミスに、プシュケーは涙を流してクピドに抱きついた。
「そうですよね。こんな不良物件、私以外に欲しがりませんわ!! 」
「その通りよ。」
喜びはしゃぐプシュケーに、アルテミスは心底からの言葉で応え微笑んだ。
「屋敷を買うのか? プシュケー。」
クピド王子には分からなかった。
「ええ、私たち結婚できますわ。クピド様!! 」
プシュケーは満面の笑みでクピドに応える。心からの微笑みだ。
「アルテミス様は、不良物件など本当に欲しくはないそうですわ。結婚できますわ。」
「結婚できるのか!? ありがとう、アルテミス。不良物件を捨ててくれて。」
王子は不良物件が自分だとは分かってなかった。
「お父様!! クピド様との結婚をお許しください!! 」
プシュケーは王の隣りにいる宰相の父親に許しを請えよう懇願した。クピド王子も王も、うるうると捨てられた子犬のような目で宰相を見る。王のおはこだ。
この目に宰相は弱かった。
「はぁ、好きにしなさい。」
「ありがとう、お父様!! 」
呆れながらも宰相は娘の婚姻を許した。娘の声が弾む。
「結婚ですわ、クピド様!! 」
「結婚か!! 」
「「結婚、結婚!! 」」
二人は手を握りしめて、嬉しそうにその場でくるくると回りだした。
「アルテミス、本当にいいのか? 」
不安そうに兄アポロが妹に聞いてくる。
「ええ、お兄様。私はこれっぽっちも、王子を好きではありませんわ。」
「そ、そうか…… 」
アポロはほっとしたように声を出した。
「そうだよな、あんな…… (名前を忘れた)不良物件、お前が好きになるはずわないな。」
「ええ、ありませんわ。」
アルテミスは周りを見定めながら言った。周りの貴族達も『やっぱりな』『そうだろうな』と頷いてくれてるのにアルテミスはほっとする。
「お兄様。私無知でしたわ。これを期に、社会の事もちゃんと勉強致しますわ。」
真剣な目で兄に応える。
「ああ、そうだな。少しは社交界に出るといい。あそこは噂の中心だ、色んな情報が手に入る。」
アポロは優しく妹の肩を抱いた。
パンパンと宰相の手を叩く音で、その場が仕切り直される。
「プシュケー、その馬鹿王子を連れて部屋に戻りなさい。」
「分かりましたわお父様。」
父親の言葉にプシュケーは嬉しそうに従った。
「アルテミス様、ありがとう!! 」
「アルテミス、ありがとう!! 」
「「結婚式には来てよね!! 」」
会場を出る前にアルテミスを結婚式に誘った。
「ええ、喜んで。」
アルテミスは笑顔で応えた。
クピドとプシュケー公爵令嬢は、嬉しそうにスキップをしながら会場を出て行った。
静かに会場内に音楽が流れ出す。
(二度と恥はかかないわ。)
アルテミスは兄に差し出される手を取る。兄にエスコートをされながら、見聞を広める為に貴族達の中へと入って行った。
「わたくしの息子には野蛮な辺境の田舎者より、洗練された公爵令嬢がお似合いですわ。
ほほほっ。」
王妃の呟いた言葉に『ああ、ここにも不良物件が』と、王と宰相の二人はため息をついた。
【完】
「私が、いつ弄ばれたの? 」
「あれ? いつだったかな…… 」
アルテミスの声が震えている。
アルテミスの質問にクピド王子は首を傾げて考えた。
「会ったことも話したことも、ましてや手紙の遣り取りもなかったわよね。」
「だって手紙は苦手だ。」
手紙だけではない書類仕事は総てが彼は苦手だった。
あははは、と笑うクピドにアルテミスの体が怒りで震えている。
「それで、どうやって弄んだの? 」
王子は首を傾げて考えた、瞳が漂う。
「弄んでない!? 」
「正解よ!! 」
アルテミスは王子をつき放した。王子は床にコロンと尻もちを付く。
「私はあなたの事なんて、ぜんぜん好きじゃないわ!! 」
ダンダンと、怒りで右足を床に何度も叩きつけ降り鳴らすアルテミス。
「ええ、そうよ!! 私は野蛮な辺境の令嬢よ!! 無知で馬鹿な令嬢よ!! 」
アルテミスはこの不良物件を好きだと思われるより、自分が無知の馬鹿だと暴露する方を選んだ。
「ええ、知らなかったわよ!! 辺境が、お兄様が国に敬意を払われていたことを!! 」
アルテミスは国の政治的な事より、辺境に関する自然や剣術を主に勉強をやっていた。
「よくお兄様がため息まじりで王命を聞いていたから、まさか泣き落としとは知らなかったわよ!! 」
アルテミスは、王都や王家に関心が無かったので、まさか王が泣き落としをするとは思ってもいなかった。
王がおはこ(泣き落とし)を使うのは、主に重要な高位人物であるので他の貴族達も其れは知らなかった。
「王命を逆らったら、益々お兄様に仕事を押し付けると思ったのよ!! 」
「アルテミス……… 」
アポロは妹の言葉に目を見張った。興奮のあまりアルテミスは扇子を握り締め、折った。
「私は野蛮な辺境の令嬢よ!! お兄様が下卑されると思ってこの婚姻を承諾したのよ!! 」
みんなに聞こえるように大きな声でアルテミスは発言する。
「この不良物件に好意などないわ!! 」
静まり返った会場内に、アルテミスの怒りの本心が響き渡った。
「不良物件て、なに? 」
ぽけっと、した顔でクピド王子はアルテミスを見上げていた。彼にはなんだか分からなかった。
「信じて、いいのですね。」
アルテミスの心からの訴えに、プシュケーが感動のあまり涙を目に溜めて聞いてきた。
「信じて、不良物件は欲しくないわ。」
真剣な目で応えるアルテミスに、プシュケーは涙を流してクピドに抱きついた。
「そうですよね。こんな不良物件、私以外に欲しがりませんわ!! 」
「その通りよ。」
喜びはしゃぐプシュケーに、アルテミスは心底からの言葉で応え微笑んだ。
「屋敷を買うのか? プシュケー。」
クピド王子には分からなかった。
「ええ、私たち結婚できますわ。クピド様!! 」
プシュケーは満面の笑みでクピドに応える。心からの微笑みだ。
「アルテミス様は、不良物件など本当に欲しくはないそうですわ。結婚できますわ。」
「結婚できるのか!? ありがとう、アルテミス。不良物件を捨ててくれて。」
王子は不良物件が自分だとは分かってなかった。
「お父様!! クピド様との結婚をお許しください!! 」
プシュケーは王の隣りにいる宰相の父親に許しを請えよう懇願した。クピド王子も王も、うるうると捨てられた子犬のような目で宰相を見る。王のおはこだ。
この目に宰相は弱かった。
「はぁ、好きにしなさい。」
「ありがとう、お父様!! 」
呆れながらも宰相は娘の婚姻を許した。娘の声が弾む。
「結婚ですわ、クピド様!! 」
「結婚か!! 」
「「結婚、結婚!! 」」
二人は手を握りしめて、嬉しそうにその場でくるくると回りだした。
「アルテミス、本当にいいのか? 」
不安そうに兄アポロが妹に聞いてくる。
「ええ、お兄様。私はこれっぽっちも、王子を好きではありませんわ。」
「そ、そうか…… 」
アポロはほっとしたように声を出した。
「そうだよな、あんな…… (名前を忘れた)不良物件、お前が好きになるはずわないな。」
「ええ、ありませんわ。」
アルテミスは周りを見定めながら言った。周りの貴族達も『やっぱりな』『そうだろうな』と頷いてくれてるのにアルテミスはほっとする。
「お兄様。私無知でしたわ。これを期に、社会の事もちゃんと勉強致しますわ。」
真剣な目で兄に応える。
「ああ、そうだな。少しは社交界に出るといい。あそこは噂の中心だ、色んな情報が手に入る。」
アポロは優しく妹の肩を抱いた。
パンパンと宰相の手を叩く音で、その場が仕切り直される。
「プシュケー、その馬鹿王子を連れて部屋に戻りなさい。」
「分かりましたわお父様。」
父親の言葉にプシュケーは嬉しそうに従った。
「アルテミス様、ありがとう!! 」
「アルテミス、ありがとう!! 」
「「結婚式には来てよね!! 」」
会場を出る前にアルテミスを結婚式に誘った。
「ええ、喜んで。」
アルテミスは笑顔で応えた。
クピドとプシュケー公爵令嬢は、嬉しそうにスキップをしながら会場を出て行った。
静かに会場内に音楽が流れ出す。
(二度と恥はかかないわ。)
アルテミスは兄に差し出される手を取る。兄にエスコートをされながら、見聞を広める為に貴族達の中へと入って行った。
「わたくしの息子には野蛮な辺境の田舎者より、洗練された公爵令嬢がお似合いですわ。
ほほほっ。」
王妃の呟いた言葉に『ああ、ここにも不良物件が』と、王と宰相の二人はため息をついた。
【完】
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