悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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会議室のお茶会。

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強い春風が吹く中、王城の廊下を歩く三人の男がいた。黒に近い髪色を持つ三人の男達は、それぞれに機嫌が悪かった。
彼等は、定期の王との謁見の後であった。彼等は、砦の常駐の改善を訴えていた。せめて三分の一の人員を自国の復興に使いたいと、訴えていたのだ。だが、その願いは叶えられず却下されていた。それだけではない、娘に対する婚約者の扱いの改善も訴えていた。だが、其れさえも のらりくらりと躱されていた。オースト国に対する彼等の思いは、口に出さずとも熟知したものであった。


「やあ、三伯爵。今日は、定期の謁見か。」
中庭の近くの廊下を歩いている所で、三人は声を掛けられた。漆黒の髪を持つ、公爵セラムである。
「これは、ランドール公爵様。」
「公爵殿。久しぶりで、ごさいます。」
「公も、定期の謁見ですか。」
三人それぞれ、セラムに挨拶を交わす。
「ああ、朝のうちにな。」
セラムの言葉に、三人伯爵は驚いた。もう昼に近い時間帯だ、三伯爵の一人がセラムに聞いた。
「公爵様。誰かと、待ち合わせですか? 」
「ああ、敬らを待っていた。」
「私たちをですか、公爵殿。」
「ああ、少し話がしたくてな。」
「我々にですか? 公。」
セラムは、鼻を擦って恥ずかしそうに言った。
「まあ、その、なんだ。豪の者にしか話せない、愚痴と言うものだ。」
『ああ。』と、三人は頷いた。彼等もまた、豪の者にしか 言えない事は山ほどあった。
「俺の家で、酒は はやいか。茶でも、飲まないか。」
セラムは、鼻を擦りながら言った。


ランドールの会議室で、軽食を済ませ むさい茶会をする四人の男の姿があった。
会議室は、はめ殺しの窓に防音も優れていたので密議に適していた。そこで、彼等はオースト国に対する愚痴合戦になっていた。
酒も飲んでないのに、まるで末の酒場の様になっていた。かなり、溜まっていた様だ。
「公爵様でさえ、その扱いか。」
「公爵と、言っても名ばかりだからな。」
「我等も同じ事、けんもほろろ とはこの事を言うのでしょう。公爵殿。」
「だが、我等は土地持ち。まだ、良い方です。爵位だけの、者達はそれは其れは。」
沈痛な思いが、彼等四人の顔を歪ませた。

豪の者は、遊牧民であった。土地などあって、無い様な物だった。ただ、国の一部と成ることになって、人の一番多い部族を公爵と位置付け 次に伯爵とした。爵位だけの者は、数十人単位の部族だ。その扱いは、悲惨としか言いようが無かった。


「うっ、娘が憐れで。」
「解りますぞ、その気持ち。」
「俺も、同じ気持ちだ。」
「婚姻したら、豪の者の待遇改善をしてみせると 健気で、ううっ・・・」
酒も入って無いのに、今度は泣きが入った。


密閉されていた、扉が開いた。自ずと四人は、扉の方へ目を向けた。
「父様。」
扉の横から首を傾げる様に、セルビィが顔を出した。
「はふっ、天使!! 」
セラムは、声を上げた。
「なんと、可愛らしい。」
「おお。娘の言っていた、天使か。」
「ランドール家には、天使が住んでいると娘が 言っていました。」
『そうだろ、そうだろ。』と、セラムは頷いた。
ととととと と、セルビィは父の後に隠れた。腰の辺りから、首を傾げる様に上目遣いで三人を見る。
「はふっ、天使!! 」
誰ともなく、声を上げた。
セルビィは、くいっ と父親の服を引っ張った。その仕草さえ、愛らしかった。
セルビィとしては、何時までも終わらない話に業を煮やして入って来たのだった。
「父様。」

「紹介しょう。俺の天使、息子のセルビィだ。」
セルビィは、ぺこりと 頭を下げた。
「セルビィ、豪の三伯爵殿だ。会いたがって、いただろう。」
「おお、天使が我等に? 」
セルビィは、父親を見て言った。
「お姉様達のお父様? 」
「そうだ、セルビアの友達の令嬢達の父親だ。」
其れを聞くと、セルビィは一番近くの伯爵を 両手でぽかぽか と叩いた。
「おお!? 」
叩かれた伯爵は、声を上げた。
「お姉様達が、可哀想です。あの あほの子達との、結婚なんて。」
「あほの子 達? 」
セラムは、鼻を擦りながら
「あほの子とは、殿下達の事だ。セルビィは、そう呼んでいる。頼む、内緒にしてくれ。」
伯爵達は、頷いた。
「そうか、セルビィ君はリリアナ達の事を可哀想と思ってくれるか。」
彼は、膝を折りセルビィの目線と合わせた。
セルビィは、ぽろぽろ 涙を流し出しだした。
「お姉様達は、優しくて綺麗で頭が良くて あの あほの子達には 勿体ないないです。」
「アイリーンの事も、解ってくれてるか。」
「そうだ、あの馬鹿にテレジアは勿体ない。」
次々と、伯爵達はセルビィの目線へと足を折る。
「あほの子達は、僕に言いました。入学して来たら、僕を下僕にしてやるって。下僕て、なんですか? 」
セルビィは、涙目で三人に聞いた。
セルビィは、王太子に会った事は無い。セルビアとの顔合わせの時、ちらりと見ただけで 後の三人には会った事も見たことも無かった。
「なんて、奴らだ。」
「こんな、幼気ない子に。」
「一体、この国の奴らはどうなっているんだ。」
憤る三伯爵とは別に、セラムは 我が天使ながら『怖い。』と背に汗を流した。


「でも、秘密基地が出来たら。姉様は、あの あほの子と結婚しなくて良いんです。ね、父様。」
セルビィは、後にいる父親を振り返った。
「秘密 基地? 」
セルビィの、その言葉に伯爵達は 動きを止めた。
そして、ランドール公爵を見るのであった。
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