悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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僕達の為に。

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「僕。お茶を淹れますね。待っていて下さい。フローネ様。」
その言葉に、シモンの心が跳ねた。顔色が悪くなる。
セルビィは、茶器のある場所へ歩いて行く。シモンは、後を追った。
「待ちなさい、セルビィ。」
シモンは、声を掛けた。
「貴方は、お茶を淹れてはいけません。」
「どうして、ですか? 」
不意に声を掛けられて、セルビィは愛らしく首を傾げた。

セルビィは、なんでもそつなく熟していたが お茶を淹れる事は最悪で在った。
趣味で、お茶を淹れるシモンに取って セルビィの淹れたお茶は神への冒涜に思えた。何故、あれ程不味く。いや、毒でも盛られたように 舌を痺れさせる味を出す事が出来るのか不思議で在った。

セルビィは、微笑みをシモンに向けた。
「シモン様が淹れる、お茶は とても美味しいです。愛を感じます。」
シモンは当然の様に、頷く。
「僕には、愛が足りないのでしょうか? シモン様の様に、美味しいお茶を 何故、淹れる事が出来ないのでしょう。」
祈る様に、シモンを見詰める。シモンは、微笑んだ。
「そんな事は、有りませんよ。」
セルビィは、気が付いた様に微笑んだ。
「シモン様。フローネ様共々、お茶の淹れ方を お教え願いませんでしょうか。シモン様の愛を、お教え下さい。」
愛を称えるセルビィの言葉に、シモンは心が高揚してくる。体が、熱く成ってくる。

「フローネ様。」
返事も待たずに、セルビィはフローネを呼んだ。
アランとレイモンドに、愛想を振りまきながら 話していたフローネはセルビィの声に席を立った。
(愛の天使が、呼んでるわ。今度は、何かしら。)
「はい、セルビィさま~。」

「フローネ様。此方は、アンポータン公爵子息のシモン様です。」
(またしても、公爵家。キターー!! )
フローネは、可愛らしく微笑んで挨拶をする。
「シモン様は、とても美味しいお茶を淹れられるのです。愛、そのものです。」
セルビィは、フローネの手を取った。二人してシモンの手に重ねる。
「シモン様、どうか僕達に。フローネ様に、愛をお教え下さい。」
セルビィは、手を離した。シモンとフローネが、手を繋いたまま残る。
フローネは、目を潤ませながらシモンを見上げた。
「シモン様。フローネに、愛を教えて下さい。」
シモンの高揚していた体が、益々 熱く成る。
「い、いいでしょう。私が、貴方に愛を伝授しましょう。」
真っ赤になって、シモンはフローネを見詰めた。

シモンは、心の高揚を彼女の所為だと思い呑んだ。

(なに、なに、これ。)
フローネは、シモンの横に立ち お茶の淹れ方をお教えて貰っていた。
「あっ、熱い。」
「大丈夫ですか? 」
「シモンさまは、お優しいですわ~。愛を感じます~。」
フローネは垂れ掛かる様に、シモンに体を寄せる。
シモンは、腕に感じる柔らかいものに頰を染めた。
(私が、愛を教えてあげるわシモン様。ふふふっ。)
二人の様子を、後の方でソファに座り 残りの三人はじっと視ていた。

(何ですか、あの令嬢は先程から男性にベタベタと。)
エリックは、眼鏡を掛け直した。
(殿下達も、どう言う事ですか。彼女はセルビィの、思い人なのに。)
鼻の下を伸ばしている三人を、きつい目を向ける。
「エリック様。」
セルビィは、静かにエリックの横に膝を折る。
「皆様が、フローネ様を気に入って下さるのは嬉しいのですが。」
哀しみに満ちた目を、エリックに向けた。セルビィは、弱々しい姿を見せる。
「アラン殿下達は、素晴らしい方々です。僕、勝てそうにありません。フローネ様は、きっと皆様の方に心を向けてしまいます。」
「そんな事は、有りません。私達には、婚約者がいます。」
エリックの言葉に、セルビィは嬉しそうに微笑んだ。
「エリック様なら、そう言って下さると思いました。」
セルビィは、直ぐにフローネを呼んだ。

フローネは、胸を揺らしながら現れる。
「フローネ様。トーマン公爵家のエリック様です。」
(キタ、キタ、キタ。最後の公爵家、キターー!! )
「フローネです。お見知りおきを。エリックさま~。」
フローネは、微笑んで挨拶をする。しかし、今までと違ってエリックには、冷たい目で見られていた。
(えっ、どうして? どう言う事? 天使様、助けて。)
フローネは、助けを求める様にセルビィを視る。セルビィに、引っ張られる様にフローネは膝を付く。
「エリック様。そんな恐い目で視ないで下さい、フローネ様が怯えています。」
「エリックさま、私。何かしら、しましたか? 」
フローネは、ビクビクと下から見上げる。セルビィは立ち上がり、エリックの座るソファの肘掛けに座る。
「エリック様、お願いが有ります。エリック様にしか、頼めません。」
辛そうに、囁く。
「どうか、フローネ様を見守って下さい。」
「見守る? 」
「はい。どうか、他の方々に心を奪われないように。」
願うように、囁く。
「そう言う事ですか。確かに、殿下達の様子も可笑しいですね。」
此方を見詰める、殿下達を ちらりと見る。
「エリック様なら、大丈夫ですよね。僕のいない間、フローネ様を任せても。」
「いない、間? 」
不安げにセルビィは、上からエリックを見る。
「第二生徒会で、用事が有るのです。でも、フローネ様の傍を離れるのが心配で。」
「分かりました。彼女は私が、視ていましょう。」
エリックは、使命感に燃えた。殿下達から、フローネを守ると。
「フローネ様、エリック様の傍にいて下さい。」
「えっ、セルビィさま? 」
(ちょっと、彼 恐いんですけど。)
セルビィは、机の椅子をエリックの隣に置いてフローネを座らせた。
「目移りしないで下さい、フローネ様。」
セルビィは、手を取って口付ける。隣に座るエリックを、見た。エリックは、頷いた。
冷たい目で見られていた所為で、フローネはエリックに対してビクビクしていた。
其れが、エリックの庇護欲をくすぐった。
「怖がる事は有りません。貴方は、私が守ります。」
「えっ? 」
フローネは、目を見開いた。
(今、守るって言った? どう言う事、嫌われてたんじゃないの? )
嬉しさの余り、フローネはエリックの手を取って胸に押し付けた。何時も男性にやっている、調子を取り戻す。

セルビィは、密かに微笑む。

「よかった、私。嫌われているかと、思ってしまいました。」
柔らかい感触が、手にあたる。エリックは、目を見開いた。ずっと触れていたい衝動が、湧き上がる。
(何をやっている、手を離すんだ 私。)
使命感と欲望が、鬩ぎ合う。

「取らないで下さいね、エリック様。」
セルビィが、耳元で囁いた。
エリックは、心臓を掴まれた。ぐっと、息が止まる。
「私は、取るつもりは。」
(ただ、彼女を殿下達の魔の手から守るだけで。)
焦る程に、息が止まる。
(彼女を、守るだけで。)
お得意の目を潤ませ見上げてくるフローネから、目が離せなく成っていた。

エリックは、フローネを守ると思ってしまった。

「フローネ様、僕達の幸せの為に アラン殿下達に気に入られて下さい。」
「私達のため。」
「はい。僕達の為に。」
フローネは、頷いた。
(私の為に、このチャンス逃がさないわ 天使様。)
名残惜しそうに、手を離してセルビィは部屋を出て行く。
フローネは、セルビィに、微笑んだ。
(最低でも公爵婦人。狙いは、王太子妃よ。)

静かに、第一生徒会室の扉は閉められた。

「期待してます、ビッチ様。頑張って下さい。」
切っ掛けは与えた。セルビィは、フローネが誰かを 落とす事を願った。

セルビィは、足取り軽く何時もの部屋の扉を開いた。
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