悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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愛の軌跡。

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(思えば、あの時からエリック様の態度が変わったのよね。)
フローネは、前に座るエリックを見る。エリックも気付いて、顔を向ける。フローネは、微笑んだ。エリックは、頰を染めて目を反らした。


(『愛の天使様』は、本当にドジっ子だったわ。初めてのお泊まりで、緊張していてよく躓いていたわ。)

アラン王太子の後を歩いていたフローネは、後を歩いていたセルビィに何度か ぶつかられた。

「キャッ。」
前にいる、アランに倒れ掛かる。アランは、咄嗟にフローネを捕まえる。

「済みません、アラン王太子殿下。」
セルビィは、直ぐに謝った。
「フローネ様も、大丈夫ですか? 」
フローネを心配する。
「初めてのお泊まりで、緊張してしまいまして。足が上手く、動きません。」
アランは、フローネを支えながらセルビィを見る。
「セルビィは、お泊まりは初めてか? 」
「はい。体が弱く、高等部の学園に上がるまで 領地で養生していました。」
哀しそうに、言う。
「殿下を友達と言うのは、おこがましいのですが。親しい方達と、お泊まりが嬉しすぎて つい緊張していてしまいます。」
嬉しそうに微笑む。

「私も、男爵家の者と成って。初めてのお泊まりですわ。緊張していてしまいます。」
フローネは、アランを下から覗き込んだ。
「緊張する事は無い、自分の家の様に寛ぐが良い。」
「流石は、お優しい王太子殿下。きっと『賢王』と、成られるでしょう。そう思いませんか、フローネ様。」
「はい。お優しいアラン様は、賢王にふさわしい王となりますわ。」
フローネは、セルビィの言葉を繰り返した。
「賢王…。」
アランは、将来の自分を思い浮かべた。

「僕達、王太子殿下を支えて行きたいと思いませんか、フローネ様。」
「ええ、もちろん。アラン様を、フローネは支えて行きたいと思いますわ。」
セルビィの言葉を繰り返し パチパチと、目を閉じる。
「フローネ。君は、健気だな。」

アランは、健気なフローネが将来 自分の隣に立つ事を思い浮かべた。

(あの時から、アラン様は良く私をエスコートしてくれるようになったのよね。)
フローネは、左横に座るアランを見る。アランは、当然の様に手を握った。フローネは、頰を染めて俯いた。


(そう言えば、あの階段で。あの時は、死ぬかと思ったわ。)

セルビィの後を着いて階段を登っていた時、急にセルビィが振り向いた。
「そう言えば、フローネ様。」
『ドン!! 』
肩と肩が、あたった。

「キャッ!! 」
階段を落ちていくフローネは、短い悲鳴を上げた。
「フローネ様!! 」

(うそ、私 死んじゃう。)
「危ない!! 」
フローネは、近くにいたシモンに抱き止められていた。
「大丈夫ですか? フローネ様。僕が、僕が。」
セルビィは、青い顔をしてフローネに近寄る。
「有難う御座います、シモン様。フローネ様を助けて下さって。」
セルビィは、シモンに縋り付くように御礼を言った。
「いえ、フローネも大丈夫ですか? 」
「は、はい。」
フローネは、シモンの腕の中で震えていた。

「ああ、なんたる奇跡。これが、神の奇跡なのでしょうか。」
セルビィは、大袈裟に神を賛美した。
「神の奇跡。」
「はい。」
シモンの言葉に、セルビィは頷いた。
「僕が、フローネ様を階段から落としてしまいました。」
セルビィは、苦しそうにシモンを見る。
「もし、シモン様が居られなかったら。フローネ様は、死んでいたかも知れません。」
その言葉にフローネは、ゾッとした。
「僕は、事故とは言え愛する人を死に至らしめたと一生を悔い苦しむ事に成ったでしょう。」
セルビィは、フローネの手を取って涙を流す。
「セルビィ様。」
「セルビィ。」
セルビィは、シモンを見上げた。
「でも、神が奇跡を。シモン様を、御使わしになったのです。シモン様は、フローネ様の命の恩人。そして、僕の神からの御使いなのです。」
涙を流しながら、祈るようにシモン達を見る。
「命の恩人。」
「神の御使い。」
フローネとシモンは、見詰めあった。
「これは、神が与えた奇跡。愛。まさに、運命の愛です。」
「「運命の愛。」」
シモンとフローネは、抱き合いながら呟いた。

シモンは『運命の愛。』を、フローネに感じた。

(シモン様は、命の恩人だし。あの時はから、ますます優しく成った。)
フローネは、前に座るシモンを下から目線で見る。目が合うと、慈愛に満ちた微笑みを返してくれる。


(池で溺れた時は、死んだと思ったわ。)

突風が吹いた時、セルビィが体を動かした事でボートが大きく揺れた。セルビィと、ボートに乗っていたフローネは体制を崩して池に落ちた。

(うそ、ドレスが…。)
ドレスが水を吸い、フローネは溺れた。

「誰か!! レイモンド様!! お助け下さい、フローネ様が。」
セルビィは、岸で剣の稽古をしていたレイモンドに助けを乞うた。
レイモンドは、すかさず池に入ってフローネを救出した。
池はそれ程深くなく、レイモンドの胸までで合った。だが、背の低いフローネはギリギリだった。落ち着いて、立てば溺れる事は無かったが。パニックを起こしていたので、溺れる一方だった。
レイモンドはフローネを抱きかかえて、歩いて岸までたどり着く。
「大丈夫か? 」
フローネは、泣きながらレイモンドにしがみ付いていた。

「フローネ様!! レイモンド様!! 」
ボートを岸に寄せて、セルビィが駆け寄ってきた。
セルビィは、苦しそうに涙を流していた。
「ああ、良かった フローネ様。レイモンド様が、居られて。」
セルビィは、レイモンドを見上げた。
「レイモンド様を見た時、僕は つい安心していまいました。」
目をきらきらさせて、レイモンドを見る。
「颯爽と、フローネ様を助けるレイモンド様は 騎士の中の騎士。」
「騎士の中の騎士。」
自分の腕の中で震えるフローネを、抱き締める。
「まるで、物語のお姫様と聖騎士を見ているようでした。」
「聖騎士…。」

レイモンドは、物語の聖騎士の様にフローネを護ろうと思った。

(あれからレイモンド様は、傍にいてくれる様になったのよね。)
右隣に、座るレイモンドはフローネ頭を優しく撫でた。

(ちょっと死に掛けたけど、皆が私を気に掛けてくれているわ。後 もう少しで、皆 私の者よ。)
フローネは、アラン達に微笑んだ。
(総ては『愛の天使様』のおかげよ。)



そう、総ては セルビィの手のひらの上。





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