悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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国境の森。

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少し前の話。
オースト国とチャイニ国の間の国境沿い、五十人ほどの隊員が森の中を捜索していた。

「如何した、腹から声を出せ!! 隣の国の者に気づかれないぞ。」

森の木々を掻き分けながら、人員のその部隊の隊長が声を上げる。

「団長、普通隣の国に気づかれないようするものですよね。」
国境の鬩ぎ合いの場所で動いていることが相手国にバレれば戦火の火種になりかねない。なのに団長は隊員達にワザと声を出せと命令する。

「団長。国境、越えてませんか? 」
副団長は顔を青くしながら団長にもの申す。
「これでいいんだ。……いいんだよな? 」
「疑問形で聞かないで下さい。」
団長こと、ビルケン・フレックス侯爵は副団長に問いただす。副団長も不安に苛まれていた。

「隣の国から急に攻撃されたら如何します? 」
「それはないと信じよう。」
ここまで派手に捜索をしていれば、隠密行動だとは思われないだろうと二人は祈った。

ジャーーン!! 
ドラの音が森の中に響き渡った。

「来たか!! 」
団長と副団長は動きを止めた。

暫くして木々の間から十人の騎士が現れる。騎士のマントにはチャイニ国の紋章が付いている。

「私はチャイニ国の第五騎士団隊長オルフ・ツハイマー。オースト国の者とお見うけする、なにゆえ我が国の国境を越えておられるのか? 」
騎士団隊長が、声を掛けてきた。直ぐにビルケンは前に出た。

「申し訳御座らん。俺はオースト国が憲兵隊隊長、ビルケン・フレックス。職務のあまり、国境を越えた事に気付かず恐れ入る。」
ビルケンは頭を下げた。

「憲兵隊? なにゆえ都市を護る憲兵隊がこの場におられるのか? 職務とは、お聞きして宜しいか? 」
騎士も疑問を口に、聞き返してくる。
「盗賊退治を命じられました。我等が此処に居るのは、その……聞かないで貰いたい。」
顔を反らすビルケンに、騎士は仕事を押し付けられたと推測する。

「盗賊退治に来られたのか。その盗賊は? 」
騎士達がビルケン達に近づいてくる、手は腰の剣に添えられている。未だ警戒は解いていない様子だ。
ビルケンは手をあげて、戦意はないと態度で示した。同じく副団長も。

「盗賊を追いかけて此処まで、来ました。国境を越えていたことに気づかす、申し訳ない。」
ビルケンは再び頭を下げる。
「此処から先はチャイニ国、後は我等が追跡しましょう。」
騎士は静に言った。

「それは申し訳ない。我等が盗賊をそちらに押し付けたようで、心苦しい。」
ビルケンは眉間にしわを寄せた。
「それには及びません、大勢で国境を越えられればあらぬ疑いを招く事になります。」
騎士隊長は静に断りを入れる。

「せめて、俺だけでも。他の者は返しましょう。」
「しかし、」
「実は、先行隊の者の話に寄ればこの辺りに打ち捨てられた教会があると。もしかしたら、そこが盗賊の拠点ではないかと。」
ビルケンは騎士に話をする。

「打ち捨てられた教会ですか。」
「せめてそこまで、案内をさせて頂きたい。」
「……。」
騎士は押し黙った。
「ケイン副団長、お前は皆を連れて戻れ。俺は彼等を案内する。」
「はっ、団長。我々は先に戻ります。ご武運を。」
ケインはそそくさと、団員を連れてオースト国方面へと向けて去って行った。

「では、行きましょうか。あの目標の先です。」
ビルケンは騎士を促した。木の所々に、目標のリボンが結んであった。ビルケンは騎士を伴いリボンを伝い、打ち捨てられた教会へとやって来た。少し開けた場所に教会がある。チャイニ国方面へと、けもの道のように小さな道が見うけられる。何人かが屯った足跡が見られた。

「俺が先に行きましょう。」
ビルケンは騎士の制止も聞かず、腰の剣に手を掛けて教会の扉を蹴り開いた。十人の騎士も腰の剣を取り後を追った。だが、其処には誰もいなかった。しかし、数十人がいた形跡が残っていた。食べ散らかした跡や、暴れた跡が残っていた。
「かなりの人数のようだな。」
「フレックス殿、先走りは辞めて頂きたい。」
騎士がビルケンに詰め寄る。
「すまない、つい。」
ビルケンは頭を下げた。
「あなたはじっとしてて下さい。捜査は我々がします。」
ビルケンは騎士に言われて教会の扉近くで小さくなって立っていた。

騎士達の教会内の捜査は続いた。
「これは、火薬か? 」
「武器がこんなに!? 」
「これは、陛下のスケジュール。」
「なんだこれは!! 」
「此処にいた者は盗賊ではないのか!? 」
「直ぐ陛下にお知らせしなければ。」
慌てふためく騎士達にビルケンは声を掛けた。
「盗賊の拠点ではなかったのか? では、あっちの小屋の方か? 」
「小屋の方とは? 」
隊長が、詰め寄る。
「いや、他にも先行隊の者が何個か拠点らしき物を見つけていて。」
「それは何処です。」
「あ、いや、俺もまだ行ってないが。先程と同じ木に目標のリボンを着けていると。」

隊長は暫く考えてビルケンに言った。
「盗賊の捜索は我々が引き継ぎます。フレックス殿はお戻り下さい。」
「しかし、」
「フレックス殿を国境沿いに送ってくれ。」
数人の騎士に指示を出した。
強い口調で言われ、ビルケンは渋々国境沿いへと送られた。ビルケンは国境沿いで待っていた憲兵隊員達と合流する。
「それでは、俺達は此処で。」
ビルケンは隊員を連れて国境を離れ自国へと向かう。それを見送った騎士達もその場から去って行った。

「団長、首尾は? 」
「見事掛かった。」
「………。」
「如何した? 」
押し黙る副団長のケインに、ビルケンは首を傾げる。
「なんか、めっちゃ怖いんですけど。あの美少女、じゃあなかった美少年が。」
「だから言っただろ、あいつは化け物だと。」
「天使のように可愛いのに……。」
「味方で良かったな、俺達は。」
黄昏れながら、二人は憲兵隊員達とその足でコアーラ砦へと向かうのであった。


チャイニ国、城内。
「ドービル侯爵。謀反の疑いで、拘束を致します。」
「な、なに!! 」
城に途上を急かされ上がった城内で、騎士がドービル侯爵を拘束するために囲った。

「何のことだ、証拠があるのか!? 」
ドービル侯爵は騎士達に食ってかかった。
「現在捜査中の為、身柄を確保させてもらいます。」
有無を言わさずドービル侯爵は騎士達に拘束をされ連れて行かれるのであった。


教会に残された人がいた痕跡は前の日に憲兵隊員が過ごした跡であった。ワザと汚し人がいた跡を作る。
教会や他の拠点に武器や火薬を隠したのは、セルビィのお友達である。
そしてその場所に案内をするたのに憲兵隊員を森に向かわせた。盗賊の存在はねつ造である。卒業式近くに申請を出せば騎士団は動かないのは折り込み済みである。
火薬に武器。武器の中にさりげなくチャイニ国の貴族の家紋を着けた剣を紛れ込ませ、国王陛下のスケジュールを置けば。

「何故、さりげなくなんだ? 」
「だって、謀反の疑いの方が時間が稼げます。」
憲兵の役所を訪れた美少女が可愛らしく首を傾げる。
「時間を稼ぐ? 」
「事を邪魔されたくはありません。」
美少女はにっこりと、ビルケン隊長に微笑んだ。
「決して、姉様達を辱めた仕返しではありません。」
黒い瞳の金髪の天使は、愛らしい笑顔をビルケン・フレックス侯爵に向けた。
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