悪役令嬢の弟。

❄️冬は つとめて

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天使のいたずら。

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三日後、四日目に戦は始まった。
帝国との戦は、辛辣極まる悲惨な争いとなった。あの戦の事は忘れたい、思い出したくない、と思う程聖戦とは言い難いものとなった。



「皆様顔色が悪いようです、寝不足です。」
遠眼鏡で帝国陣営を砦から見ているセルビィが楽しそうに呟いた。

「だろうな……。」
ナルトはその元凶を見て言った。

その日の夜、一日目の夜。
帝国の兵士が寝静まった頃、敵軍の進軍ラッパが鳴り響いた。帝国兵士達は起き上がり、体制を整えるために右往左往する。しかし敵は来ない、気が抜けた頃に再びラッパの音が鳴る。帝国兵士達は一睡もできなかった。

「馬鹿です。体制を整えたらそのまま仕掛けて来ればいいのに。」
「そこは帝国のプライドだろうな。三日待つと皇帝の宣誓布告があるからな。」
セルビィは後ろにいるナルトに振り返りながら聞いた。

「プライドで戦に勝てれば苦労はありません。」
「そうだな。」
そのプライドを利用している癖によく言うよと、ナルトは欠伸をしながら応えた。

「今ならこの砦は空です。」
進軍ラッパに目覚めないように、この砦の兵士達は他の場所で休暇を取っている。

「まあ、帝国に宣誓布告をされて休んでる者はいないだろ。」
「ここにいます。」
「お前は魔王だからな。」
「そんなことを言うのは、ナルト様くらいなものです。」
セルビィは嬉しそうに、くすくす笑う。

「普通の神経を持ったものは、其れこそ右往左往の戦々恐々としてるもんだ。睡眠など取れないほどにな。」
「ぐっすり眠れました。」
「お前は魔王だからな。」
「そんなことを言うのは、ナルト様くらいなものです。」
セルビィは天使のように微笑んだ。


次の日の昼、二日の昼。
砦から火矢が飛んで来た。帝国の陣営に届くことなく地に落ちた。だがその火はぱあっとその場に広がった。矢の先に小さな袋の中に燃えやすい油を詰めて飛ばしていた、地に落ちると袋が開き油が広がり火を周りに走らせていた。小さい範囲だが、その油を被れば火傷を負うのは目に見えて兵士達には分かった。

その日の夜、二日目の夜。
昨日の事があるので昼と夜とで休息を交代制にしていた。陣営の後ろに休息を取る者と、前に立って砦からの攻撃を警戒しているものとに別れていた。篝火を焚き、砦を警戒している前衛の者。

兵士の頬に冷たいものがあたった。

「雨か? 」
空は晴れて暗い月夜であった。暗い中、陣営の前の荒野で小さな火が広がった。兵士達は昼間の光景を思い出す。

「あ、油だ!! 」
「火、火を消せ!! 」
「燃え移るぞ!! 」
「「「に、逃げろ!! 」」」
前に控えていた兵士達は火を消して、後方に逃げ惑う。

「痛い!! 誰だ、踏んだのは!! 」
「ナンダ、どうした!? 」
「「「痛え!! 痛えよ、腕が!! 足が!! 」」」
火を消したから暗くてよく見えない中を逃げる。後方で休んでいる者を踏みつけて逃げ惑っていた。


「帝国の陣営が暗くなりましたね。」
「火を消したんだ。」
「暗くて見えません。」
セルビィは不思議そうにロビンを振り返った。今もなを投石器で飛ばされている袋は、帝国陣営の上で開き液体を巻いていた。

「そうするように仕向けてるお前が、よく言うな~。」
「でもあれは水です。」
「この悪魔が!! 昼間あんだけ油のついた火矢を見せつけといて!! トドメに一発夜営に見せただろ!! 」
「冷静に観察すれば、水です。」
「そんなの出来るのは、心のない悪魔くらいだ!! 」
「僕はできます。」
「だから、お前は悪魔なんだ。」
「僕は、天使と呼ばれたことはありますが。悪魔とは呼ばれたことはありません。」
「俺が呼んでるだろ、悪魔悪魔悪魔。何回で呼んでやる悪魔。」
ロビンは呪文のように悪魔を連発する。セルビィは可愛く欠伸をした。

「僕、寝ます。後の事お願いします。ロビン様。」
馬の耳に念仏のようにセルビィはロビンの呪文を無視して、砦内に戻っていった。


三日の朝。

「なにーー!! 怪我人が続出だと!! 」
大将は副官に叫んだ。

「戦もしてないのになぜだ!! 」
「そ、それが奴等が攻撃を…… 」
「おのれ~~。皇帝陛下のお言葉が無ければ今すぐに叩き潰してやるものを~~。」
大将は地団駄を踏んだ。

「だが明日は開戦だ、あっと言う間に滅ぼしてやる。ワッハハハハ!! 」
「け、怪我人はどういたしましょう。」
使えない者は下がらせろ!! 居ても邪魔になるだけだ!! 」
「はっ、直に下がらせます。」
副官は汗をかきながら、大将の部屋を出ていった。何の戦果も無く怪我を負った兵士達が帝国に戻って、どんな目に合うかはセルビィには関係のない話であった。

その夜、三日目の夜。

「クソ!! 奴らこっちが手が出さない間に好き勝手しやがって。」
「聞いたかアレ水だったんだと。」
「俺、誰かの足を踏み潰してしまったぞ。あいつらどうなるんだ…… 」
「考えるな。この鬱憤は明日奴らに返してやろうぜ。」
砦からかなり離れた所で、昨日も殆ど眠れなかった兵士達はイライラが溜まっていた。明日は目にものを見せてやると息巻いている。

「お兄さん。温かいうちにどうぞ。」
目の前に温かなスープが差し出された。野菜より肉がゴロゴロ入ったスープだった。金髪の村娘が愛想よく兵士達に差し出す。

「こりゃ美味そうだな。」
「肉がゴロゴロだぜ。」
「大将閣下が明日の開戦のために英気を養えと、用意してくだされたのです。」
村娘は兵士達にスープを配る。

「お姉さん、こっちにもっと持ってきて。」
銀髪の村娘がおぼんにスープを大量に乗せて現れる。

「どうぞ。」
村娘は消え入りそうな声でスープを差し出す。

「よ、姉ちゃん。厳ついが美人だな。」
「だめですよ、お姉さんにはあたしのお兄さんと言う婚約者がいるんですから~。」
「……… 」
銀髪の村娘は俯いたままだった。

兵士達は温かいスープを食べて明日のために英気を養なった。
次の朝、哀れ兵士達は地獄に落ちる。
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