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三月 卒業式。
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「クラウス様は、お可哀相。」
誰か、そう言った。
「アンジェリカ様は、にこりとも しないのですね。」
女性の声だ。
「いくら、政略結婚でも。余りにも、酷すぎます。」
栗毛色の髪が、靡く。
「誰か、好きな方が いらっしゃるのでは。」
唇から、言葉が漏れる。
「だって、好きな人の前では 可愛い笑顔でいたいもの。」
緑色の瞳が、細められる。
「クラウス様は、お可哀相。」
誰かが、そう言っている。
何度も、何度も。
アンジェリカは、私には微笑まない。其れは、政略結婚だから。
アンジェリカは、好きな人がいる。だから、私に微笑まない。
アンジェリカは、誠実に妃教育を受けている。其れは、政略結婚だから。
アンジェリカは、何時も黙って行事をこなしてくれる。其れは、政略結婚だから。
これは、国が決めたもの。
アンジェリカは、傍にいてくれる。これ以上、何を望む。
「クラウス様は、お可哀相。」
私は、可哀想では無い。
アンジェリカは、傍にいてくれる。
「にこりとも、しないのですね。」
アンジェリカは、私の事を。
「いくら政略結婚でも、余りにも酷すぎます。」
政略結婚だから、仕方がない。
「誰か、好きな方が いらっしゃるのでは。」
好きな、ひと。
「だって、好きな人の前では 可愛い笑顔でいたいもの。」
アンジェリカの、好きな人。
誰だ、誰だ、誰だ、誰だ!!
「誰も来ない、木陰で。アンジェリカ様は、とても嬉しそうな笑顔をしていました。」
誰が、そう囁く。
「きっと、好きな方と一緒だったのでしょう。」
その女性は、微笑んでいた。
学園最後の日。
卒業式後、大聖堂。
学園最後の舞踏会が、開かれていた。今年は、大人達のいない学生達だけの卒業生達の舞踏会。
仕切るは、時期生徒会長のジェームズ・エス・アスペクト侯爵令息。黄土色の髪と瞳。学園の制服をきっちり着込んで、父親の宰相に似た真面目な性格の者だ。何を怠ることもなく、指示を出す。
卒業生達は、婚約者や意中の人をエスコートし、始められた舞踏会。
「アンジェリカ。私の婚約者で在りながら、他の男と不義密通を行うとは。」
会場内に、声が響いた。
『好きな人とは、誰だ? 』
「これは、国に対して反逆であり。私に対して、不敬でもある。」
声を上げたのは、この国の王太子クラウス・ハインツ・フォン・ディム・ベルハルト。白金髪に氷色の瞳、彫刻の様な美貌の王太子。王太子に相応しい詰め襟の白い礼装の姿。所々、金の刺繍が施されている。
『渡さない!! 』
「よって、私の婚約を破棄し。極刑に、斬首刑を申し渡す。」
その言葉を受けるのは、王太子の婚約者アンジェリカ・フォン・ベクトル侯爵令嬢。
流れる銀の髪に、優しい緑色の瞳。『人形姫』と、呼ばれる動かない表情。水色の簡素なドレスを着て、装飾品を着けること無く立っていた。
婚約者から贈られる筈の装飾品もエスコートもして貰えず、アンジェリカは階段を降りた処で声を掛けられた。
『私以外の男に、渡さない!! 』
『渡す位なら 君を!! 』
『アンジェリカ、私は。』
『アンジェリカ、私は。』
『アンジェリカ、君を。』
『誰にも、渡しはしない!! 』
心の叫びは声にならず。
静まり返った大聖堂に。
クラウスの言葉だけが、響いていた。
「連れて行け。」
クラウスの冷たい瞳が、アンジェリカを見据える。近寄って来る騎士達に、一部の学友の蔑みの中。アンジェリカは踵を返して外への扉へと、向かう。
彼女は、扉の前で立ち止まる。静かに振り返り、淑女の礼を取る。顔を上げたアンジェリカは、美しい微笑みを称えた。
『アンジェリカ、その微笑みは誰の為だ。』
クラウスの見詰める先で、静かに扉は閉じられた。
「クラウス様!! 」
ジェームズが、クラウスに駆け寄る。
「お考え直し下さい、クラウス様。」
ジェームズは、クラウスに苦言を呈する。だが、クラウスの耳にはその言葉は届いていなかった。
クラウスは思い詰めた表情で、聖堂を出て行く。
残されたジェームズは、卒業生達は、何も出来ずただ 立ち尽くしていた。
次の朝。
「クラウス様。私は、貴方の心に 少しは傷を残せましたか? 」
アンジェリカは、城の奥の処刑台で静かに刑が執行された。
誰か、そう言った。
「アンジェリカ様は、にこりとも しないのですね。」
女性の声だ。
「いくら、政略結婚でも。余りにも、酷すぎます。」
栗毛色の髪が、靡く。
「誰か、好きな方が いらっしゃるのでは。」
唇から、言葉が漏れる。
「だって、好きな人の前では 可愛い笑顔でいたいもの。」
緑色の瞳が、細められる。
「クラウス様は、お可哀相。」
誰かが、そう言っている。
何度も、何度も。
アンジェリカは、私には微笑まない。其れは、政略結婚だから。
アンジェリカは、好きな人がいる。だから、私に微笑まない。
アンジェリカは、誠実に妃教育を受けている。其れは、政略結婚だから。
アンジェリカは、何時も黙って行事をこなしてくれる。其れは、政略結婚だから。
これは、国が決めたもの。
アンジェリカは、傍にいてくれる。これ以上、何を望む。
「クラウス様は、お可哀相。」
私は、可哀想では無い。
アンジェリカは、傍にいてくれる。
「にこりとも、しないのですね。」
アンジェリカは、私の事を。
「いくら政略結婚でも、余りにも酷すぎます。」
政略結婚だから、仕方がない。
「誰か、好きな方が いらっしゃるのでは。」
好きな、ひと。
「だって、好きな人の前では 可愛い笑顔でいたいもの。」
アンジェリカの、好きな人。
誰だ、誰だ、誰だ、誰だ!!
「誰も来ない、木陰で。アンジェリカ様は、とても嬉しそうな笑顔をしていました。」
誰が、そう囁く。
「きっと、好きな方と一緒だったのでしょう。」
その女性は、微笑んでいた。
学園最後の日。
卒業式後、大聖堂。
学園最後の舞踏会が、開かれていた。今年は、大人達のいない学生達だけの卒業生達の舞踏会。
仕切るは、時期生徒会長のジェームズ・エス・アスペクト侯爵令息。黄土色の髪と瞳。学園の制服をきっちり着込んで、父親の宰相に似た真面目な性格の者だ。何を怠ることもなく、指示を出す。
卒業生達は、婚約者や意中の人をエスコートし、始められた舞踏会。
「アンジェリカ。私の婚約者で在りながら、他の男と不義密通を行うとは。」
会場内に、声が響いた。
『好きな人とは、誰だ? 』
「これは、国に対して反逆であり。私に対して、不敬でもある。」
声を上げたのは、この国の王太子クラウス・ハインツ・フォン・ディム・ベルハルト。白金髪に氷色の瞳、彫刻の様な美貌の王太子。王太子に相応しい詰め襟の白い礼装の姿。所々、金の刺繍が施されている。
『渡さない!! 』
「よって、私の婚約を破棄し。極刑に、斬首刑を申し渡す。」
その言葉を受けるのは、王太子の婚約者アンジェリカ・フォン・ベクトル侯爵令嬢。
流れる銀の髪に、優しい緑色の瞳。『人形姫』と、呼ばれる動かない表情。水色の簡素なドレスを着て、装飾品を着けること無く立っていた。
婚約者から贈られる筈の装飾品もエスコートもして貰えず、アンジェリカは階段を降りた処で声を掛けられた。
『私以外の男に、渡さない!! 』
『渡す位なら 君を!! 』
『アンジェリカ、私は。』
『アンジェリカ、私は。』
『アンジェリカ、君を。』
『誰にも、渡しはしない!! 』
心の叫びは声にならず。
静まり返った大聖堂に。
クラウスの言葉だけが、響いていた。
「連れて行け。」
クラウスの冷たい瞳が、アンジェリカを見据える。近寄って来る騎士達に、一部の学友の蔑みの中。アンジェリカは踵を返して外への扉へと、向かう。
彼女は、扉の前で立ち止まる。静かに振り返り、淑女の礼を取る。顔を上げたアンジェリカは、美しい微笑みを称えた。
『アンジェリカ、その微笑みは誰の為だ。』
クラウスの見詰める先で、静かに扉は閉じられた。
「クラウス様!! 」
ジェームズが、クラウスに駆け寄る。
「お考え直し下さい、クラウス様。」
ジェームズは、クラウスに苦言を呈する。だが、クラウスの耳にはその言葉は届いていなかった。
クラウスは思い詰めた表情で、聖堂を出て行く。
残されたジェームズは、卒業生達は、何も出来ずただ 立ち尽くしていた。
次の朝。
「クラウス様。私は、貴方の心に 少しは傷を残せましたか? 」
アンジェリカは、城の奥の処刑台で静かに刑が執行された。
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