【完結】氷の王、クラウス。

❄️冬は つとめて

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 三月 即位。

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ベルハルト暦ーーー年 三月。
新生ベルハルト国、国王クラウス・ハインツ・フォン・ディム・ベルハルト14世即位。


先王が亡くなって間もないので、簡易な即位式が行われた。一年後に、大々的な祝賀会をする事に成って。クラウスが部屋に戻ると、其所に栗毛色の髪をした女性が待っていた。
「お会いしとう御座いました。クラウス国王陛下。」
うっとりと、頬を染めながらクラウスを見る。
「クラウス様の正妃に成る。キャロットで御座います。」
正教会と貴族達のごり押しで正妃の座に着いたキャロットであった。先王カイゼルとクラリスは反対を示していたが、亡くなった事を良いことに書類だけで正妃の座に付けてしまっていた。名も知れぬ侯爵家の養女となり、何よりジェームズの後押しが強かった事により正妃の座に着いていた。


「誠心誠意、クラウス様に仕えたいと思って折ります。」
「いらぬ、下がれ。」
クラウスは、冷ややかな目と声で言った。
「解って折りますわ。先王様、王妃様が亡くなり、喪に伏す為に一年を興じるのは。」
『下がれ。』と、言う命を聞かずにキャロットは話し続ける。
「しかし、私はクラウス様の正妃。お慕いしているクラウス様の為に、何時までもお待ちしておりますわ。」
キャロットは、クラウスに近付いていく。
「お可哀想な、クラウス様。」

ピクリと、クラウスの氷の目が開いた。
「その声、憶えている。」

何度も、夢の中で聞いた声。

「憶えていて下さったのですね。」
キャロットは、嬉しそうに微笑む。
「憶えている、其方か。」

アルジェリカの事を進言した声。忘れずはずも無い。

「キャロットです、クラウス様。」
「ああ、そうか。」

此所まで、来たのか。

クラウスの目が、細まった。

「キャロットは、クラウス様を支える良き王妃と成りますわ。」
手を組み祈るように上目遣いで、クラウスを見る。

「私を愛しているのか。」
「愛して、折ります。」
クラウスの言葉に、キャロットは微笑み応えた。

「其方は、既に私の王妃。放れることは適わない。」
「キャロットは、クラウス様から放れませんわ。」
嬉しそうに、言う。

「喪が明けたら……。弟が成人したら、私は退位し王位をアルファに譲る積もりだ。」
「えっ!? 」
「退位した後は、北のキリギス修道院で余生を送る。」
クラウスは、冷たい目でキャロットを見詰めた。
「勿論、其方も一緒だ。」
「そんな、急に!! 」
「私は、罪人だ。神に、アンジェリカに懺悔をしながら生涯を終える。其方は、妃。私と共に在らねば成らない。」
クラウスはキャロットの首筋に手を掛ける。
「その前に、教会を粛正せねばならぬが。」
「ヒッ!! 」
指に力がこもる。

「ジェームズは、もういない。」

逃げることは、かなわない。

クラウスの氷の眼差しに、キャロットは息を飲んだ。
「さあ、もう戻るがいい。我が妃よ。」
そっと、首筋に指の後を残し手を放す。立ち尽くすキャロットに、クラウスはもう興味は失せた。
即位式の礼装を脱ぎ捨て、部屋を出る。

陸の孤島と言われるキリギス修道院。極寒地の岸壁の上に立つ寺院。貴族達が恐れる、流刑所と言われる。罪を懺悔し、生涯を終える牢獄とも呼ばれている。
(冗談じゃないわ!! 私は、若く綺麗なのよ!! この年で、世捨て人に成るつもりはないわ!! なんとかしなくちゃ!! )
部屋に残されたキャロットは、体中を震わせて考えていた。
(肝心な時にジェームズ、死んでしまってるなんて。毒にも負けずに、元気だったのに。)
キャロットは、顔色を変えた。
(そう、元気だったのよ。なのに急死? 嘘よ。)
体を抱き締める。
(クラウス様が、帰ってきて……。まさか、毒殺が……。)
「私は、悪くないわ。あれは、ジェームズが勝手に。」

『その前に、教会を粛正せねばばならぬが。』

(まさか、クラウス様に粛正された……? )
「そんなはずは無い、二人は仲の良い学友で……。」
(『氷の王』と、呼ばれているわ。人を殺すのにためらいもないと……。)
キャロットは、フラフラとクラウスの部屋を後にする。
「なんとかしないと……。」
(世捨て人も、殺されるのも嫌よ。)
キャロットは、体を抱き締める。先程クラウスに触れられた首筋が、痛む。

『我が、妃よ。』
クラウスの冷たい声が、頭の中を木霊する。
「なんとかしないと。」
(やっと此所まで、来たのに。)
「なんとかしないと。」
キャロットは、呟きながら廊下を歩いていた。









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