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二月 訃報。
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ガシャーン!! と、ティカップの割れる音が響いた。
口元から血をひたたらせながら王カイゼルは、最後の力を振り絞り愛する妻クラリスに手を延ばした。クラリスは既に毒に寄って、事切れていた。
「クラリス。」
愛する妻の名を呼んで、王カイゼルは事切れた。
「貴方達が悪いのです。キャロット様を認めようとはしないから。」
ジェームズは、静かに椅子から離れ倒れる王を見下す。
「彼女は、クラウス様を『解っている』素晴らしい方なのです。クラウス様を支えるに相応しい女性。」
ジェームズは王が確実に死んでいるかを確かめる。
「況してや、クラウス様を排斥するとは神おも恐れぬ行為。」
立ち上がり、テーブルの上のカップを手に取った。
「クラウス様は、この世界を総べる方。その崇高さが解らないなんて、残念です。」
ジェームズはうっとりと、目を閉じる。クラウスを脳裏に思い浮かべて。
「クラウス様。貴方の憂いは総て、私が連れて行きます。」
カップのお茶を飲み干した。
「総ては、クラウス様の為に。」
ジェームズは、血を吐き微笑みながら倒れた。
石から地下水が染み出し、冷たく薄暗い地下牢。
「ジョルジュ様。助けに参りました、今開けます。」
「やめなさい。」
「しかし…。」
ジョルジュは、格子を握り締める部下に首を振った。
王付の執事ジョルジュは、王を毒殺したと疑いを掛けられ牢屋に入れられていた。王と王妃を殺した毒は、茶葉から見つかった。其れを管理しているのは執事のジョルジュであった。ジョルジュは、素直に捕まった。
「私は、王を…カイゼル様達を護れなかった。なんたる失態。」
「其れを言われれば、私はアンジェリカ様を護れませんでした。」
部下は、格子を握り決めた。
「其れは、仕方ないこと。学園内でのことは、お前には解らなかったでしょう。」
ジョルジュは、優しく微笑んだ。
「私は、老いた。もっと早くに、王城を去るべきでした。」
「そんなことは!! 」
「私は、ジェームズ様の狂気に気づかなかった。」
苦悩するジョルジュに、部下はつい声を上げた。
「ジョルジュ様。」
「ブレイブ様は、助けられますか。」
部下は、首を振った。
「彼は捕まる時に抵抗をしたことに寄って、足を砕かれました。その後、自白されるよう拷問を……もう……。」
クラウスの主治医のブレイブは、毒を作った者として捕まっていた。彼は、無実を訴えていた。
「そうですか。安らかな、最後を与えて下さい。」
痛ましげに、目を瞑る。
「解りました、ジョルジュ様。」
「さあ、もう行きなさい。」
ジョルジュは、部下に微笑む。
「クラウス様の事を頼みます。」
部下セバスチャンは、静かに頷いて消えた。
小高い丘の上、小さな礼拝堂がある。其れは、王族の墓碑でもあった。
礼拝堂の中、霊前に佇む白金の髪の青年クラウスが立っていた。傍に二人の家臣が着きそう。ジェラルドとエドガーは、隣国。今は、ベルハルト国となった領土を納める為に王都を留守にしていた。
ベクトル侯爵領も、侯爵に近き貴族達が反発し。今も、アルバートはベクトル侯爵領に残っている。クラウスだけが、王と王妃の訃報を聞いて王都に駆け戻って来ていた。王都に残っていたジェームズは、言う。
「執事のジョルジュが、王と王妃に毒を盛ったのです。」
「ブレイブ殿が、毒を作り。ジョルジュ殿が、王と王妃に毒を盛ったのです。」
ブレイブが毒を作り、ジョルジュが王達に毒を盛ったと。
(私が生き残った理由は、クラウス様の憂いを祓うため。)
ジェームズは、クラウスの足元で膝を折り 靴に口付ける。
「私の美しい王、クラウス様。クラウス国王陛下。」
陶酔した眼を、クラウスに向ける。
「私の為に、王と王妃を殺してくれたのか? 」
クラウスは、静かに言った。
「はい、クラウス様。貴方の憂いを取り除くのが、私の役目。」
ジェームズは、褒められた事に嬉々として応える。
クラウスは、ジェームズを見る。その目は、無機質で光りをともさない。
「ジェームズ。良く顔を、見せてくれ。」
「はい、クラウス様。」
言われるままに、立ちクラウスに近付く。自分より少し高い、ジェームズの黄土色の髪を撫でる。そのまま、手を頰に滑らす。
ジェームズは、恍惚として目を閉じた。クラウスは、ジェームズを抱き締めた。
「クラウス…様。」
ジェームズが、目を開き呟く。
「疲れただろう、眠れ。」
クラウスは、ジェームズの耳元で囁いた。
「はい、クラウス様。」
ジェームズの開かれた目は、静かに閉じられ口元は微笑んでいた。まるで聖母の胸に抱かれる赤子の様に、安堵した顔をしていた。
小高い丘の上、小さな礼拝堂の中でクラウスは冷え行くジェームズの躰を暫し抱き締めていた。
その姿を、傍に居る二人はただ黙って見詰めていた。
口元から血をひたたらせながら王カイゼルは、最後の力を振り絞り愛する妻クラリスに手を延ばした。クラリスは既に毒に寄って、事切れていた。
「クラリス。」
愛する妻の名を呼んで、王カイゼルは事切れた。
「貴方達が悪いのです。キャロット様を認めようとはしないから。」
ジェームズは、静かに椅子から離れ倒れる王を見下す。
「彼女は、クラウス様を『解っている』素晴らしい方なのです。クラウス様を支えるに相応しい女性。」
ジェームズは王が確実に死んでいるかを確かめる。
「況してや、クラウス様を排斥するとは神おも恐れぬ行為。」
立ち上がり、テーブルの上のカップを手に取った。
「クラウス様は、この世界を総べる方。その崇高さが解らないなんて、残念です。」
ジェームズはうっとりと、目を閉じる。クラウスを脳裏に思い浮かべて。
「クラウス様。貴方の憂いは総て、私が連れて行きます。」
カップのお茶を飲み干した。
「総ては、クラウス様の為に。」
ジェームズは、血を吐き微笑みながら倒れた。
石から地下水が染み出し、冷たく薄暗い地下牢。
「ジョルジュ様。助けに参りました、今開けます。」
「やめなさい。」
「しかし…。」
ジョルジュは、格子を握り締める部下に首を振った。
王付の執事ジョルジュは、王を毒殺したと疑いを掛けられ牢屋に入れられていた。王と王妃を殺した毒は、茶葉から見つかった。其れを管理しているのは執事のジョルジュであった。ジョルジュは、素直に捕まった。
「私は、王を…カイゼル様達を護れなかった。なんたる失態。」
「其れを言われれば、私はアンジェリカ様を護れませんでした。」
部下は、格子を握り決めた。
「其れは、仕方ないこと。学園内でのことは、お前には解らなかったでしょう。」
ジョルジュは、優しく微笑んだ。
「私は、老いた。もっと早くに、王城を去るべきでした。」
「そんなことは!! 」
「私は、ジェームズ様の狂気に気づかなかった。」
苦悩するジョルジュに、部下はつい声を上げた。
「ジョルジュ様。」
「ブレイブ様は、助けられますか。」
部下は、首を振った。
「彼は捕まる時に抵抗をしたことに寄って、足を砕かれました。その後、自白されるよう拷問を……もう……。」
クラウスの主治医のブレイブは、毒を作った者として捕まっていた。彼は、無実を訴えていた。
「そうですか。安らかな、最後を与えて下さい。」
痛ましげに、目を瞑る。
「解りました、ジョルジュ様。」
「さあ、もう行きなさい。」
ジョルジュは、部下に微笑む。
「クラウス様の事を頼みます。」
部下セバスチャンは、静かに頷いて消えた。
小高い丘の上、小さな礼拝堂がある。其れは、王族の墓碑でもあった。
礼拝堂の中、霊前に佇む白金の髪の青年クラウスが立っていた。傍に二人の家臣が着きそう。ジェラルドとエドガーは、隣国。今は、ベルハルト国となった領土を納める為に王都を留守にしていた。
ベクトル侯爵領も、侯爵に近き貴族達が反発し。今も、アルバートはベクトル侯爵領に残っている。クラウスだけが、王と王妃の訃報を聞いて王都に駆け戻って来ていた。王都に残っていたジェームズは、言う。
「執事のジョルジュが、王と王妃に毒を盛ったのです。」
「ブレイブ殿が、毒を作り。ジョルジュ殿が、王と王妃に毒を盛ったのです。」
ブレイブが毒を作り、ジョルジュが王達に毒を盛ったと。
(私が生き残った理由は、クラウス様の憂いを祓うため。)
ジェームズは、クラウスの足元で膝を折り 靴に口付ける。
「私の美しい王、クラウス様。クラウス国王陛下。」
陶酔した眼を、クラウスに向ける。
「私の為に、王と王妃を殺してくれたのか? 」
クラウスは、静かに言った。
「はい、クラウス様。貴方の憂いを取り除くのが、私の役目。」
ジェームズは、褒められた事に嬉々として応える。
クラウスは、ジェームズを見る。その目は、無機質で光りをともさない。
「ジェームズ。良く顔を、見せてくれ。」
「はい、クラウス様。」
言われるままに、立ちクラウスに近付く。自分より少し高い、ジェームズの黄土色の髪を撫でる。そのまま、手を頰に滑らす。
ジェームズは、恍惚として目を閉じた。クラウスは、ジェームズを抱き締めた。
「クラウス…様。」
ジェームズが、目を開き呟く。
「疲れただろう、眠れ。」
クラウスは、ジェームズの耳元で囁いた。
「はい、クラウス様。」
ジェームズの開かれた目は、静かに閉じられ口元は微笑んでいた。まるで聖母の胸に抱かれる赤子の様に、安堵した顔をしていた。
小高い丘の上、小さな礼拝堂の中でクラウスは冷え行くジェームズの躰を暫し抱き締めていた。
その姿を、傍に居る二人はただ黙って見詰めていた。
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