【完結】アンジェラス ー祈りの鐘ー

緑豊かな世界。

彼等は戸惑っていた、目の前に光景に。呪われた大地に送られた筈なのに、目の前には緑豊かな世界が広がっていた。　

「これはいったい……。」
「どう言う事でしょう。」
公爵夫人と執事は、幻を見ているようであった。後に続いた使用人達も、無理やり送られた者達も言葉を無くした。

「リリス！？　」
「は、母上！！　」　
公爵夫人に声をかける二人の男性、腕捲くりをした姿はどことなくたくましい。

「リカルド、アベル。」
「旦那様、アベル様。」
「「どうして、ここに？　」」
二人はリリスや執事、後ろにいる人々を見て問いかけた。

「そんなことより、これはどう言う事なのです？　此処は呪われた大地、旧アンゼラスなのでは？　」
夫人の言葉に後ろの人々は、耳をすます。

「ああ、見てのとおりだ。」
「母上、呪いは解けました。」
二人は素っ気なく言った。その言葉に後ろの人々は歓喜に声をあげた。







それは邪神が変わった日、優しい霧雨は国中の呪いを解いていく。

「大地が浄化されていく。」
「ああ、大地に水が……｡」
ガウディが目を見開くとガイヤ公爵は目を細める。大地が潤い、川に水が流れ出す。水と共に魚も泳ぐ。

「風が、風が生まれてる。」
「柔らかい風だわ。」
オフィリアが嬉しそうに手を広げると、シルフィ公爵は靡く緑の髪を手でかき上げる。さわさわと爽やかな風がみんなを撫でる。風と共に鳥が飛んで来る。

「生命の息吹を感じる。」
「アンゼラスが生まれ変わる。」
大地に芽が芽吹き、実りの木々が育つ。王都の周りもかって麦畑だった所が黄金色に輝いている。その向こう側に森の緑が鮮やかに蘇る。

浄化の雨であり、祈りの雨であった。
　
「あ、アベル？　」
立ち尽くし生まれ変わった王都を呆然とながめていた公爵家族の上の方から聞き慣れた声が聞こえてきた。

「リンネル……様？　」
見上げると聖堂の上の方から銀髪の青年に抱きかかえられながら、ふわりと空を降りてくるリンネの姿があった。

「ご無事でしたか、リンネル様。」
「よ、よかった～。」　　
アベルが安度すると、オフィリアがその場に崩れ落ちた。

「リンネル様、そちらの方々は？　」
「なんて、美しい……。」
リンネを抱きかかえながら、ふわりと地に着地するリンネルの後ろに女神アンジェラスも降り立った。

ガウディがリンネに問いかけセラミド達三人が、二人の神々しさに声をもらした。

「「「「先王、リンネル様！！　」」」」
四人の公爵達が声をあげた、彼らは今は亡き先王リンネルの若かりし頃を見知っていた。似ている姿につい声をあげでしまったのだ、そんな筈はないのに。

（（だが似すぎている。））
（（まさか、隠し子……｡））
先王は、あらぬ疑いをかけられた。

「みんな、どうしてこんな所に？　」
リンネはリンネルにお姫様抱っこをされたまま、アベルに聞いた。

「我々はリンネル様を追って。」
「あ、アベル。僕はもうリンネルじゃないんだ。」
「「「「はあ？　」」」」
アベル達は首を傾げた。

「死ぬ予定だったから、名前のないリンネルに僕の名前をあげたんだ。今、僕、リンネだよ。」
「「「「はあ？　」」」」
意味も分からず、アベル達は首を傾げた。

「俺がリンネルで、こいつはリンネだ。俺をたてまつるなよ。」
「「「「はあ？　」」」」
青年の言葉に、アベル達は首を傾げる。

「貴方は、先王様のお子様なのでしょうか？　」　
無理やり代表にさせられたリカルドが、リンネルに問いかけた。

「俺がガキだと？　俺がガキな訳がないだろ、お前らより年上だ！！　」
「「「「はあ？　」」」」
リカルド達は、首を傾げた。

「あ、リカルド。みんなも。」
「「「「はい、リンネル様。」」」」
「リンネだよ。いくら廊下が冷たくて気持ちいいからて、眠ったら風邪をひくよ。」
「「「「はあ？　」」」」　
リカルド達は、首を傾げた。



「……と、言う訳なんだ。」
リカルドとアベルは互いに頷きあった。

「「「いや、説明ベタ！！　」」」
リリスや執事、後ろの人々は二人の説明が分からず声をあげた。