【完結】アンジェラス ー祈りの鐘ー

❄️冬は つとめて

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魔道具が止まる時。

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「か、鐘が、鐘が消えた! 」
何時もはリンネが祈りを捧げる聖堂の祈りの場、真上に鐘が掲げられていた。先程まで鐘の音を鳴らしていた白銀のアンジェラスが、霧のように司祭の前で消えていった。

「た、大変だ! 早く教皇様にお知らせしなくては! 」
司祭は慌てて、通信用の魔道具のある場所に駆けつけた。

「た、大変です! 鐘が、祈りの鐘が、消えました!! 」
通信用具を使うが反応がない。

「壊れたのか? もしもし、もしもし!! 」
やはり反応は無かった。司祭は魔道具を諦め、扉に向かった。聖堂の扉は鐘の音の防音対策の為に大きく分厚く出来ていた。
「開け!! 開け!! 何故開かない!! 」
何度触れても扉は開かない。この扉も自動で開く魔道具の一種だ。仕方がないので押してみたが、びくともしない。当然だ、大きく分厚い扉なのだから。
「誰か!! 誰か、いないか!! 鐘が消えて、扉が開かないのだ!! 」
聖堂に閉じ込められた司祭は、声が枯れるほど叫んだ。

一般家庭。
「あら? 火が消えた。」
カチカチと火の出る魔道具を何度も点火する。朝の食事の用意をしていた母親は火の点かない魔道具に困り果てる。
「これじゃ朝ご飯ができないよ。」
「お母さーん、なんか冷蔵箱効いてないよ。」
娘が冷蔵箱を開けて冷気が感じないと母親に話しかける。
「なんだい、冷蔵箱も壊れたのかい!? 」
「かーさん大変だ! 」
「なんだい、あんた。こっちは釜戸が壊れて冷蔵箱まで壊れてるんだ! 」
イライラと奥さんは旦那にあたる。

「こっちはもっと大変だ……。トイレが流れない……。」
「なんだって!! 」
「いゃぁぁあああ!! 」
娘が悲鳴をあげた。

外壁の門前。
「いい加減開けてくれ! 今日中に隣の街までこの荷物を運ばないとならないんだ。」
イライラと運び屋達は、門兵にあたる。
「入荷時間に間に合わなかったら責任を取って貰うぞ。」
「待て、魔道具が反応しないのだ。」
先程から何度もスイッチを押しているが門の扉はピクリとも動かない。

「なんだ壊れたのか、整備不良じゃないのか? これは国に責任を取って貰わないとな!! 」
イライラと、早く開けろと急かす。
「頭、てぇへんだ!! 」
「なんだ、煩いぞ!! 」
「冷凍魔道馬車の中が動いていないんでぇ!! 」
「なんだと!! 」

魔道具店。
「店の冷蔵箱を直してくれ!! 」
「いや、オレの処の冷凍小屋を直してくれ!! 」
「私が先だ!! 」
「いや、オレだ!! 」
「私のは、生成食品だぞ!! 」
「オレのところは、冷凍物だ!! 」 
あちらこちらで、自分の処の魔道具を直してくれと魔道具店に詰めかけ、我先にと喧嘩を始める。
「ま、待ってくれ!! 修理道具が、動かないんだ!! 」


王城。
「顔を洗う水はまだなの。」
「申し訳ございません、王妃様。」
侍女達が汗をかきながら、急いで顔を洗う桶を持ってくる。
「何なの……この水は、臭いわ。」
「申し訳ございません、水道の魔道具が不工合を起こし井戸の水を持って来ました。」
それだけではない移動部屋も使えず、此処まで階段を上って運んで来た。

「今まで、放置していたので少し臭いますが……。他に水はございません。」
「熱湯消毒をしようにも、釜戸に火が点かないのでございます。」
申しな下げに言うが、他に水はない。

「こんな臭い水で顔を洗えるわけないでしょう!! 」
王妃は水が入った桶を侍女達に投げつけた。


「な、流れない……。」
ヘンリーはトイレの便器を見つめて途方に暮れていた。朝起きてトイレに入り、頑張った結果が目の前にある。だが、トイレの頑張った結果を流す水が出てこない。

「殿下、どうなさいました? 殿下、殿下、返事をしてください。」
「まさか中でお倒れに? 」
彼等近衛達はまだ水が止まる前にトイレを使っていたので今の王太子の状況が理解できなかった。いくら待っても出てこない王太子に不安を覚え、トイレのドアを思い切り開けた。

「うわぁぁああ!! あ、開けるな!! 」
ヘンリーは悲惨な声をあげた。


「食事はまだか!! 」
王族家族は何時間も朝食を椅子に座って待っていた、もう昼に近い。

「も、申し訳ございません。釜戸が壊れ、薪を拾うところから始めなくてはなりませんので……。」
顔を青ざめて受注長は頭をヘコヘコしながら言った。

「釜戸など他にもあるであろう!! 」
「そ、それが、城中の釜戸が壊れまして。釜戸だけでなく水道や冷蔵箱等、他にも……。」
城中ではなく、国中の魔道具が機動しなくなっていた。田舎はまだマシだが、都会になればなるほど魔道具に頼っていたから溜まったものでは無かった。

「いったい、何が起こっているのだ!! 」
腹の音を鳴らしながら王は叫んだ。




    
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