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突き落とされる、階段。
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「お気をつけください、迦具夜様。」
此処は生徒達が勉学する本校舎と違い、その都度専門の勉学に勤しむ他校舎である。一階が調理室、二階が理科室、三階が美術室で四階が音楽室の校舎である。
二階の渡り廊下を渡って、迦具夜と鈴音と鈴香は二階と一階の間の階段の踊り場に立っていた。
迦具夜は何気なく階段に近づく。
「お気をつけください、お姫様!! 」
鈴音が迦具夜を庇うように咄嗟に前に出る。
「此処は、何故か特定の女生徒が落ちてしまうという階段なのです!! 」
鈴香が、その理由を伝える。
「お怪我はないの? 」
「はい。通りかかったある男子生徒に抱きとめられ、怪我はなかった模様です。」
「其れは良かったですわ。」
迦具夜はほっと胸をなでおろす。
「しかし、誰かしらに背を押されたと特定の女生徒は言っております。」
「あま、なんですって!! 」
鈴音の付け足した説明に迦具夜は驚きの声をあげた。
「此れはもう立派な事件ですわ!! 殺人未遂事件ですわ!! 」
迦具夜は背筋を正し、凛と立つ。
襟元から、扇子を取り出し階段に向けて腕を伸ばした。
「此の、月夜見迦具夜。此の事件の犯人をきっと見つけて見せますわ、月夜見家の名にかけて。」
「「流石でごさいます、迦具夜様!! 」」
鈴音と鈴香は迦具夜を称賛して手を叩く。パチパチとした音が誰も居ない校舎に響き渡る。
「それで、目撃者はいないのかしら? 」
「はい。目撃者はいます。」
迦具夜の問に鈴音は神妙に答える。
「其れは話が早いですわ。その方が、犯人を目撃しているのね。」
「それが…… 」
言いよどむ鈴香。
「目撃した女生徒は、誰もいなかったと。」
「目の先で、自ら階段を落ちて行ったと。」
「あら、では事故かしら? 」
迦具夜は閉じた扇子を唇に寄せて、首を傾げる。
「しかし、特定の女生徒は確かに背を押されたと。」
「挙げ句、目撃した女生徒が押したのではと騒ぐ始末。」
「其れはいけませんわ、証拠もなく犯人扱いをすることは許されませんわ。」
迦具夜は目を閉じ、首を振った。
「しかも、高位グループの男子生徒達もその特定の女生徒を庇うように騒ぎ出し。」
「まあ、なんてこと。」
鈴香の言葉に迦具夜は悲しみの顔になる。
「いけませんわ、いけませんわ。目撃者の女生徒に、数人の殿方が押し迫るなんて。」
「そこは目撃者と共にいた、お友達の方々が庇ってくださったようです。」
「彼女彼等は目撃はしてませんが、悲鳴がした時は確かに目撃女生徒は自分達の側にいたと。」
迦具夜に安心させるように、鈴音と鈴香は事のいきさつを話した。
「よかったわ。目撃者の女生徒には、無実を証言してくださる方々がいらっしゃったのね。」
「「はい、迦具夜様。」」
慈愛に満ちた微笑みの迦具夜に、二人は頬を染めて見つめていた。
「目撃者は、誰もいなかったと言ったのね。」
「はい、迦具夜様。故に、迦具夜様に見て頂こうと。」
「此処5年、この場所で特定の女生徒の転落事故が続いています。」
此処も生徒会の書紀に書かれた七不思議の一つであった。
「階段だけに、階段かしら? 」
沈黙。
「ふふっ、言葉遊びですわ。」
「おやめください、迦具夜様!! 」
「お腹が、ねじれてしまいます!! 」
鈴音と鈴香は、肩を震わせて迦具夜にお願いをする。彼女等にとって迦具夜の言葉は、例え◯◯◯言葉でも尊いものなのである。
『キーンコーンカーンコーン。キーンコーンカーンコーン。』
その時、予冷の鐘がなった。
「あら、いけない。今日は、全校集会がありますわ。急ぎますわよ、鈴音、鈴香。」
「「はい、迦具夜様。」」
三人は早足で体育館へと向かうのであった。
此処は生徒達が勉学する本校舎と違い、その都度専門の勉学に勤しむ他校舎である。一階が調理室、二階が理科室、三階が美術室で四階が音楽室の校舎である。
二階の渡り廊下を渡って、迦具夜と鈴音と鈴香は二階と一階の間の階段の踊り場に立っていた。
迦具夜は何気なく階段に近づく。
「お気をつけください、お姫様!! 」
鈴音が迦具夜を庇うように咄嗟に前に出る。
「此処は、何故か特定の女生徒が落ちてしまうという階段なのです!! 」
鈴香が、その理由を伝える。
「お怪我はないの? 」
「はい。通りかかったある男子生徒に抱きとめられ、怪我はなかった模様です。」
「其れは良かったですわ。」
迦具夜はほっと胸をなでおろす。
「しかし、誰かしらに背を押されたと特定の女生徒は言っております。」
「あま、なんですって!! 」
鈴音の付け足した説明に迦具夜は驚きの声をあげた。
「此れはもう立派な事件ですわ!! 殺人未遂事件ですわ!! 」
迦具夜は背筋を正し、凛と立つ。
襟元から、扇子を取り出し階段に向けて腕を伸ばした。
「此の、月夜見迦具夜。此の事件の犯人をきっと見つけて見せますわ、月夜見家の名にかけて。」
「「流石でごさいます、迦具夜様!! 」」
鈴音と鈴香は迦具夜を称賛して手を叩く。パチパチとした音が誰も居ない校舎に響き渡る。
「それで、目撃者はいないのかしら? 」
「はい。目撃者はいます。」
迦具夜の問に鈴音は神妙に答える。
「其れは話が早いですわ。その方が、犯人を目撃しているのね。」
「それが…… 」
言いよどむ鈴香。
「目撃した女生徒は、誰もいなかったと。」
「目の先で、自ら階段を落ちて行ったと。」
「あら、では事故かしら? 」
迦具夜は閉じた扇子を唇に寄せて、首を傾げる。
「しかし、特定の女生徒は確かに背を押されたと。」
「挙げ句、目撃した女生徒が押したのではと騒ぐ始末。」
「其れはいけませんわ、証拠もなく犯人扱いをすることは許されませんわ。」
迦具夜は目を閉じ、首を振った。
「しかも、高位グループの男子生徒達もその特定の女生徒を庇うように騒ぎ出し。」
「まあ、なんてこと。」
鈴香の言葉に迦具夜は悲しみの顔になる。
「いけませんわ、いけませんわ。目撃者の女生徒に、数人の殿方が押し迫るなんて。」
「そこは目撃者と共にいた、お友達の方々が庇ってくださったようです。」
「彼女彼等は目撃はしてませんが、悲鳴がした時は確かに目撃女生徒は自分達の側にいたと。」
迦具夜に安心させるように、鈴音と鈴香は事のいきさつを話した。
「よかったわ。目撃者の女生徒には、無実を証言してくださる方々がいらっしゃったのね。」
「「はい、迦具夜様。」」
慈愛に満ちた微笑みの迦具夜に、二人は頬を染めて見つめていた。
「目撃者は、誰もいなかったと言ったのね。」
「はい、迦具夜様。故に、迦具夜様に見て頂こうと。」
「此処5年、この場所で特定の女生徒の転落事故が続いています。」
此処も生徒会の書紀に書かれた七不思議の一つであった。
「階段だけに、階段かしら? 」
沈黙。
「ふふっ、言葉遊びですわ。」
「おやめください、迦具夜様!! 」
「お腹が、ねじれてしまいます!! 」
鈴音と鈴香は、肩を震わせて迦具夜にお願いをする。彼女等にとって迦具夜の言葉は、例え◯◯◯言葉でも尊いものなのである。
『キーンコーンカーンコーン。キーンコーンカーンコーン。』
その時、予冷の鐘がなった。
「あら、いけない。今日は、全校集会がありますわ。急ぎますわよ、鈴音、鈴香。」
「「はい、迦具夜様。」」
三人は早足で体育館へと向かうのであった。
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