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俺達、神でした。

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「ツクヨ。」
圧力をツクヨは解いた。
「あ、有難う御座います。」
押さえ付けられる圧力が解けて、元管理者達は礼を言う。
「行きなさい。」
テルは冷たく言い放った。
管理者達は、ツクヨの力に寄って其れ其れの星へと送られた。

「スサ。何を剝れているのです。」
「気に入らない。」
「すさ、おこってる。」
「怒ってる。」
言いながらツクヨを抱き締める。
「あんな奴等を許すなんて……。」
「ゆるしてない。」
「当然です。ルーンを傷つけた者を許すはずはないでしょう。」
テルもツクヨを抱き締める。
「死より辛い罰を与えたまでです。」
「死より? 」
スサは首を傾げる。
「ふろめてうすのばつ。」
「何だ? プロメテウスて。」
「地球のギリシャ神話です。」

大神ゼウスを欺いたプロメテウスは、大鷲に生きながら肝臓をついまばれ続けるという罰を与えられた。刑期は三万年。


「彼等は、生きながら魔物に食べられ続けるという罰を与えたまでです。死より辛い罰を。」
こくこくと、ツクヨが頷く。
「スサ、貴方は彼等に痛みを与えたのでしょう。」
「ああ。」
スサは笑った。

管理者に寿命と痛みはない。だが、スサは彼等に痛みを与えた。そして、テル達は永遠の苦しみを与える。ルーンを傷つけたそれが罰であった。刑期は自分が管理していた星が、世界が終わるまで。
消滅という一瞬の恐怖より、永遠の恐怖と苦痛を三神は彼等に与えたのであった。
「今頃彼等は願っていることでしょう、殺してくれと。」
テルは興味なさげに呟いた。

生きながら魔物に食べられ、再生し再び食べられる。プロメテウスのように縛られてはいない。それ故、逃れられるのかもと希望を持つ。だが、魔物の森に囲われ魔力も持たない管理者は逃げられず罰を受ける。ただ一人、狂うことも許されず恐怖と苦痛を世界が終わるまで。それは永遠と言う名に相応しい罰を。

「お許し下さい!! 」
「お助け下さい!! 」
「どうか私を、殺して下さい。」
彼等は森の中で、許しを請い逃げまどう。だが、既に三神は彼等に興味を無くしていた。



お姉さんに促されて俺は部屋を出た。少しテル達が気になったが、大丈夫だろう。
(だって、テル達は優しいから。)
きっと、彼等に確認も取らずに攻撃をしてはいけないと説教をしてくれているだろう。
俺は安心して応接室へ戻って来た。マックス王子とボブさんは相も変わらず『ぷちぷち』に勤しんでいた。
テーブルの上のお菓子は無くなっていた。
(流石は食欲魔神、抜け目ない。)
此処を出る時お菓子を山盛り置いていった筈が、今は空っぽである。俺が此処を出て三十分もたってないのにね。
(そう言えば、電気どうなるのだろう。)
出会って直ぐに殺されそうに成ったんだし、もしかして無かった事になるのかな。
(宝の持ち腐れ、フル電なのに? )
神妙な顔をしているとお姉さんが心配して声をかけてくれた。
「ルーン様、大丈夫ですか? 」
「うん。電気どうしょう。」
俺の言葉にお姉さん達は、安心した顔をした。電気以外に何か心配事があるのだろうか。
(動かないエレベーターなんて、最悪なんですが。)
一番上まで階段を使わなければ成らなくなるなんて、最悪でしょう。
(あれ、違うのか? )
首を傾げると、お姉さんは微笑んでくれた。
(うっ、今心臓を射抜かれました。)
綺麗なお姉さんの笑顔、最高です。
「その事なら須佐之男様が何とかしてくれるでしょう。」
「須佐之男。」
俺は後に居るイケメン弟をみる。イケメン弟は頭を振った。だとしたらもう一人の。
「スサ、スサのこと? 」
「はい。須佐之男様です。」
そうだ同じ名前なんだ、ややこしいな。俺が彼等から付けたんだっけ。
「スサが何とかしてくれるの? 」
(不安なんだが。)
「はい。あの星はスサ様が管理なさって折られますから。」
「スサが!? 」
(凄く、不安なんだが。)
「少々の事では壊れないように創って折られます。」
「そうなんだ。」
(よく、解らないけど。まあ、テルがいるから大丈夫だろう。うん。)

「お、ノボル帰った来たのか? 」
「話はつきましたか? 」
ボブさん達が迎えてくれた。手は『ぷちぷち』しているが。
「えっと。」
俺がどう答えようかと迷っていると、お姉さんが肩に手を置いてくれました。マックス王子も悔しそうに見ています。
(ふふん、いいだろ。)
「取り敢えず、作ってしまうことにしました。」
「そうですか……。」
お姉さんの笑顔に、真っ赤に成ってマックス王子が目を反らしてます。
(うぶですね、ふふふっ。)
綺麗なお兄さんも、好きですよ。

「つまらない物ですが。」
メイド姿の弟さんが追加のお菓子を持ってきてくれました。お姉さんに促されて俺は再びソファに座った。

「粗茶ですが。」
イケメン弟もお茶を出してくれる。
先程お姉さんに言われたことを学習していたようです。俺はお茶を飲んで一息つく。

「取り敢えず作って、後から電気の事は考えましょう。」
お姉さんが笑顔で言ってくる。
「えっ、そんなんでいいんですか? 」
「大丈夫です、何とか成ります。」
にっこり微笑む、お姉さん。結構大ざっぱですね。
「だって、私達は……。」
(そうでした俺達、神でした。)














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