【完結】どうやら、乙女ゲームのヒロインに転生したようなので。逆ざまぁが多いい、昨今。慎ましく生きて行こうと思います。

❄️冬は つとめて

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『落ちぬなら、落として見せよう眼鏡君。』

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帰りの連絡が終わると生徒達は蜘蛛の子を散らすように教室から出て行った。彼女ロロリイと関わるのが、みんな嫌だったのであろう。
彼女が立ち上がった途端に、皆逃げ出した。ただ一人捕まった犠牲者、黒縁眼鏡の男子生徒を除いては。
彼は不思議な生徒であった。何故だか攻略対象の好感度や現れる場所好きな物を教えて助けてくれる、乙女ゲームで言う『お助けキャラ』である。
彼女はそれに目をつけた。

「眼鏡君、話があるの。」
手首を掴んで放さない。
「逃げないから放してくれ。」
ぎりぎりと締め付ける手を眼鏡君は見詰める。彼女も彼の手首を見る。
(この子、結構鍛えてるわ。優男に見えるけど……。)
彼女は先程掴んだ彼の肩を思い出す。骨格がしっかりして、筋肉もほどなくついていた。
(そして、王子達の情報を不思議な程知り尽くしている情報量。)
彼女は思った『間者』かもと。
(ちょっと待って、思考がロロリイに成っている。普通転生したら、そのキャラを乗っ取っちゃうのよね。私が乗っ取られて、如何すんの? 私が乗っ取られたらロロリイはロロリイのままじゃん。意味ないじゃん。)
彼女は自分の存在意義を考える。ロロリイがロロリイのままなら、攻略対象をボッコボコに。
(ボッコボコにするのは悪役令嬢か。そうじゃないわ、私が転生した意味無いじゃん。)
ロロリイのままじゃ、彼女は悪役令嬢を破滅ルートへと追い込んでしまう。彼女が慎ましく暮らすなど、夢のまた夢。
(私はロロリイには、負けない。)
彼女はいったい何と闘ったいるのか。彼女は眼鏡君を睨み付けた。
(私がキラキラルートを回避して、慎ましく暮らすにはこの眼鏡君が必要なの。例え間者でも、彼の情報は無視できない。)
彼女は無意識に手に力を込める。
(逃がしてなるものか、例え足を叩き折っても彼を手に入れてみせる。)
足を叩き折らなくても彼はお助けキャラ、頼めば情報を吐き出してくれる。だが、彼女の思考はロロリイに乗っ取られている。既に彼を『獲物』として認識してしまった。

獲物を得るには。
母曰く。
『オーホホホホッ。完膚無きほど握り潰すのよ。』

父曰く。
『うむ、急所を突くのだ。』

長女曰く。
『懐に入り、殴り倒すのよ。』

次女曰く。
『まず、足を突き怯んだ処にトドメを刺すのよ。』
彼女等は何の事を言っているのか。

(お母様、お父様、お姉様。私はこの獲物を必ず手に入れて見せますわ。)
彼女は黒縁眼鏡君、彼に向かって不敵に笑った。
「だって私は、ロロリイ・エボックですもの。」
(狙った獲物は逃がさない。)









「て、違うわよ!! 何考えてるのよ私!! 」
(毒されてる!! 毒されてるわ、ロロリイに!! )
突然の奇声に、眼鏡君は驚く。
けど、ロロリイは手を話さない。
(暴力は駄目よ、暴力は。暴力無しでも人は落とせるから!! )
だが、彼女もロロリイも男性と付き合ったことは無い。
(オタクを舐めるな!! )
誰も舐めていません。オタクは既に文化、探究者は総てオタクなのだから。
(アニメや漫画、ゲームで鍛えた乙女心の心情、男心の欲情。暴力無しでキラキラ王子等、落としてみせるわ。私の知識とこの眼鏡君の情報量で。そう、完膚なきまでに……。)






「駄目じゃん、落としたら駄目じゃ!! 」
彼女は、また奇声を上げた。
だが、手は放さない。
(キラキラルート〓残虐ルート。残虐非道のヒロインではなく、慎ましく私は活きるのよ。その為には、キラキラ王子等を避けるのよ。)
彼女は、眼鏡君を上目遣いで見る。彼女奇行を知らぬ男子生徒が見れば心ときめいただろう。
(彼の情報量が、必要なのよ。)
ふふふっ、と微笑む。
(きっと、落としてみせるわ。)
眼鏡君は、背中に悪寒を感じた。

その思考がロロリイだと彼女は気づいていない。そして、彼女は勘違いしている。これは転生、憑依では無い。つまり彼女はロロリイ自身だと言う事を。
(落ちぬなら、落として見せよう眼鏡君。)
その目は『獲物』を狩る狩人であった。







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