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ー辺境の花嫁ー ❉
女王となるカサンドラ。
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「美しいな、そなた。」
急に皇帝は話を変えた。
この場にフランクがいたらアンジュの中にカサンドラを彷彿させるモノを見出しただろう。カサンドラが、若かりし頃どれ程美しかったかを。
「歳はいくつになる。」
「19です。」
アンジュは不信に思いながらも、皇帝の言葉に応える。
「婚約者は、いるのか? 」
「いえ、いませんが…… 」
「うむ、うむ、そうか、いないのか。」
皇帝はアンジュの答に満足したように頷く。
「どうだ、我が甥との婚姻は考えられぬか。」
「「「「はぁ!? 」」」」
(((はぁ!? )))
その場にいる総て者が皇帝の言葉に呆気にとられた。
「そのような事をまた勝手に決めて、今度こそ刺されますよ。」
宰相の最もな言葉に、護衛騎士達は頷いた。
二度も勝手に決めた婚姻はフランクにとって最悪であった。どう見ても、婚姻とは言えず育児と介護にしか思えない。
「今回は違う。これ程の美人、涙を流して喜ぶに違いない。歳も成人している、血筋も申し分ない。」
今迄は相手を見もせずに決めていたが、今回は目の前にいる。歳も高齢ではなく幼女でもない、成人していて見目も麗しい。
「今度こそ、フランクも気に入るに違いない。そう思わぬか? 」
皇帝は弟である元帥を見る。
「何時までも、フランクが独身では跡取りに困るであろう。」
ふと、言い直す。
「あははは、独身ではなかったな!! 」
(((お前の所為だろ!! )))
楽しそう笑う皇帝に、元帥と宰相。護衛騎士達は心の中で突っ込んだ。
「お、お待ち下さい!! そのような事は…… 」
アンジュが蒼白になって声をあげた。
「なんだ、気に入らぬのか? 」
上から圧をかける低い声がアンジュに降りかかる。
「で、ですが…… フランク様の気持ちがありますので。」
アンジュは穏便に済ませようと言葉を選ぶ。
「婚約者はおらぬのであったな。好きな者でもいるのか? 」
「……いえ、そのような者もいません。」
皇帝の言葉に目を逸した。
「貴族である以上、政略結婚は常識。フランクとの婚姻は、我が帝国とイグニスの良い縁になるのは必定。」
皇帝の言葉は最もである。
「フランクと婚姻をすれば、その方達の悲願も達成されるだろう。」
「悲願…… 」
アンジュは押し黙った。
帝国が後ろ盾になってくれれば、王座奪還も夢ではないであろう。
「死神と呼ばれるフランクが怖いか? だが、フランクは懐に入れた者には限りなく優しいぞ。」
人質として送られてきた、マリーナとカサンドラにフランクは邪険にせず出来る限りの慈愛を注いでいる。
敵となれば恐ろしいが、味方になればこれ程頼もしい者はない。
「お待ち下さい、皇帝陛下。アンジーには急な話、どう対処してよいかわからぬはず。まずは、カサンドラ様との面会をお許しください。」
グリストが仲裁に入った。
「よい、許す。」
皇帝はにやにや笑いながら言う。
「フランクの屋敷で待っているがいい。フランクは、そなたにイグニスの王座をプレゼントしてくれるだろう。結納としては、破格であろう。」
「イグニスの王座……? 」
アンジュとグリストは目を見開いた。
「既にフランクが、新妻の為に王座を取り返しに行っている。最初で最後のプレゼントになるかも知れんがな。」
皇帝はアンジュを見据える。
「そなたの高祖伯母であるカサンドラ殿と話し合うがいい。フランクの第二夫人であるイグニスの女王となる者とな。」
既にカサンドラはイグニスの女王と帝国の皇帝がその即位を認めた。
「そなたは第三夫人であるが、事実上は第一夫人、正室になるだろう。」
既にアンジュとフランクの婚姻は決定事項のように語られる。
「カサンドラ殿は女王となり、フランクは王配となる。」
得意げに言う皇帝に、元帥と宰相は頭を押さえて溜息をついた。
アンジュとグリストには、皇帝の言葉はニスラス国に変わって強国帝国がイグニス国を支配すると聞こえて二人は青ざめ俯いた。
急に皇帝は話を変えた。
この場にフランクがいたらアンジュの中にカサンドラを彷彿させるモノを見出しただろう。カサンドラが、若かりし頃どれ程美しかったかを。
「歳はいくつになる。」
「19です。」
アンジュは不信に思いながらも、皇帝の言葉に応える。
「婚約者は、いるのか? 」
「いえ、いませんが…… 」
「うむ、うむ、そうか、いないのか。」
皇帝はアンジュの答に満足したように頷く。
「どうだ、我が甥との婚姻は考えられぬか。」
「「「「はぁ!? 」」」」
(((はぁ!? )))
その場にいる総て者が皇帝の言葉に呆気にとられた。
「そのような事をまた勝手に決めて、今度こそ刺されますよ。」
宰相の最もな言葉に、護衛騎士達は頷いた。
二度も勝手に決めた婚姻はフランクにとって最悪であった。どう見ても、婚姻とは言えず育児と介護にしか思えない。
「今回は違う。これ程の美人、涙を流して喜ぶに違いない。歳も成人している、血筋も申し分ない。」
今迄は相手を見もせずに決めていたが、今回は目の前にいる。歳も高齢ではなく幼女でもない、成人していて見目も麗しい。
「今度こそ、フランクも気に入るに違いない。そう思わぬか? 」
皇帝は弟である元帥を見る。
「何時までも、フランクが独身では跡取りに困るであろう。」
ふと、言い直す。
「あははは、独身ではなかったな!! 」
(((お前の所為だろ!! )))
楽しそう笑う皇帝に、元帥と宰相。護衛騎士達は心の中で突っ込んだ。
「お、お待ち下さい!! そのような事は…… 」
アンジュが蒼白になって声をあげた。
「なんだ、気に入らぬのか? 」
上から圧をかける低い声がアンジュに降りかかる。
「で、ですが…… フランク様の気持ちがありますので。」
アンジュは穏便に済ませようと言葉を選ぶ。
「婚約者はおらぬのであったな。好きな者でもいるのか? 」
「……いえ、そのような者もいません。」
皇帝の言葉に目を逸した。
「貴族である以上、政略結婚は常識。フランクとの婚姻は、我が帝国とイグニスの良い縁になるのは必定。」
皇帝の言葉は最もである。
「フランクと婚姻をすれば、その方達の悲願も達成されるだろう。」
「悲願…… 」
アンジュは押し黙った。
帝国が後ろ盾になってくれれば、王座奪還も夢ではないであろう。
「死神と呼ばれるフランクが怖いか? だが、フランクは懐に入れた者には限りなく優しいぞ。」
人質として送られてきた、マリーナとカサンドラにフランクは邪険にせず出来る限りの慈愛を注いでいる。
敵となれば恐ろしいが、味方になればこれ程頼もしい者はない。
「お待ち下さい、皇帝陛下。アンジーには急な話、どう対処してよいかわからぬはず。まずは、カサンドラ様との面会をお許しください。」
グリストが仲裁に入った。
「よい、許す。」
皇帝はにやにや笑いながら言う。
「フランクの屋敷で待っているがいい。フランクは、そなたにイグニスの王座をプレゼントしてくれるだろう。結納としては、破格であろう。」
「イグニスの王座……? 」
アンジュとグリストは目を見開いた。
「既にフランクが、新妻の為に王座を取り返しに行っている。最初で最後のプレゼントになるかも知れんがな。」
皇帝はアンジュを見据える。
「そなたの高祖伯母であるカサンドラ殿と話し合うがいい。フランクの第二夫人であるイグニスの女王となる者とな。」
既にカサンドラはイグニスの女王と帝国の皇帝がその即位を認めた。
「そなたは第三夫人であるが、事実上は第一夫人、正室になるだろう。」
既にアンジュとフランクの婚姻は決定事項のように語られる。
「カサンドラ殿は女王となり、フランクは王配となる。」
得意げに言う皇帝に、元帥と宰相は頭を押さえて溜息をついた。
アンジュとグリストには、皇帝の言葉はニスラス国に変わって強国帝国がイグニス国を支配すると聞こえて二人は青ざめ俯いた。
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