【完結】私の婚約者は、妹を選ぶ。

❄️冬は つとめて

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婚約者は、妹を選ぶ。(本編)

お母様とエリシア。

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「奥様、お嬢様。ソルトミル様がお越しになりました。」
恭しく頭を下げて使用人が、要件を告げる。

「そう、ありがと。」
嬉しそうに奥様は返事を返す。

「さあ、エリシア。会いに行きなさい、今日はシエリア邪魔者はいないわ。」
「わ、私…… 」
母の言葉に俯くエリシア。

「でも…… エドワード様はに会いに来てる、と思うの。」
「ソルトミル様がそう言ったの? 」
もじもじ俯くエリシアに優しく母聞く。

「プレゼントとか、花束とか…… 」
「エリシア、先ずは話をするの。まだ、話を一言もしてないのでしょう。」
「三言くらいは、したわ…… 」
「それは話してないのと一緒よ。まあ、の所為だとは分かっているけど。」

総てシエリアの所為である。

「ソルトミル様が、気になるのでしょう。」
「……… 」
俯くエリシアに優しく問いかける。母にはわかっていた、エリシアが嬉しそうにプレゼントのネックレスを付けているのを。頂いた花束を大切にしていたことを。

「話をしなさい。駄目なら駄目ではっきりしないと、前には進めないでしょう。」
「はい。」
エリシアは母の言葉に頷いた。

「まぁ、その時はわたくしのこの扇子が黙ってはいませんけどね。おーほほほほっ!! 」
母は、扇子を持ってブンブンと振り回している。

「いっ時程したら、私達も挨拶に行くからエリシア。」
父も優しく声をかける。

優しい父の言葉と頼もしい母の応援にエリシアは奮起する。

(このままじゃいけない。何時までも消極的なんて…… )

振り向くと父が優しく頷いてくれる。

(シエリアがエドワード様に近いのが嫌で、嗜めていた…… こんな事は初めて。)

何時もエリシアは、シエリアと仲睦まじくなった人達から一歩下って見ていた。でも。エリシアは、シエリアに「エドワードに近すぎる」と初めて嗜めた。そして何より、初回の時に部屋を出なかったのはやはりエドワードの事が気になっていたからだった。

(エドワード様と話がしたい。)

エリシアは手を握りしめて、心から思った。

「お母様、お父様、私行ってくる。」

「頑張りなさい。」
力強い声と、力強い母の素振り。

エリシアはリビングルームから出て、エドワードのいる応接間へと廊下を歩く。

(エドワード様に目を向けると、よく目が合ったわ。コレって、少しは私のことを気にしてくれてるて思ってもいいの? )

仲睦まじい二人を見るのが嫌で下を向いていたエリシアであったが、気になって顔を上げると必ずエドワードと目が合っていた。そして彼は、困ったようにエリシアに微笑むのだ。

シエリアに優しく微笑みながらも、自分に目を向けてくれる。

(縁談相手だから…… )

エリシアは立ち止まり俯いた。

『頑張りなさい。』
母の力強い、素振りが目に浮かぶ。

エリシアは顔をあげた。

(少しでも気にしてくれるなら…… 私だって積極的に。)

シエリア程にはできないまでも。母の力強い素振りを思い出して、力をもらう。

エリシア再び歩き出す、エドワードの元へと。



そのちょっと前、

「う~ん、爽やかな目覚め。」

シエリアはベッドの上で伸びをする。先程、と言っても3時間程前の朝食に一服盛られたシエリアは爽やかに目覚めていた。

そう彼女は母と同じ、快眠快食快便で代謝もいいのだ。既に盛られた睡眠薬は体の中で分解されていた。

ベッドから立ち上がり、窓の外を見ると下にエドワードが乗って来ていた馬車を目にする。

「今日こそは、逃さないんだから~~!! 」
シエリアは素早くドアを開けた。

先ずはトイレである。

体で分解された毒素を外に出すのだ。それ以外にもシエリアは母と同じ、快便であるのだから。

「すっきり、爽やか!! 」
シエリアは目に強い意志を持って部屋を出る。

エドワードの待つ、応接間へと。


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