【完結】猛反した王子は、婚約破棄を頑張りたい。

❄️冬は つとめて

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氷の王子、クラウス。心の傷。

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「おい、聞いたか? 」
「人形姫の事か。」
「不義密通だとよ。」

「まあ、本当に? 」
「人形姫が、殿方と逢い引きを。」
「見た方が、居たそうですわ。」

学園内は、同じ様な噂が何処かしこから聞こえてくる。シルビアは、焦った。
自分がどれ程、呆けていたのか。

(アンジェリカ様は、何処。)

「おねぇ様。アンジェリカ様は、東校舎の中庭にいるみたいですわ。」
「東校舎ね、急ぐわよ。」
シルビアは、走った。

東校舎の中庭、と言っても木しか植えてない小さな庭。アンジェリカ様は、一人佇んでいた。
「アンジェリカ様。」
シルビアの声に、アンジェリカは振り向いた。
寂しそうに、微笑みを称える。シルビア達は、胸が詰まった。
「昔。お母様のお国の吟遊詩人を、屋敷に呼んだの。」
アンジェリカは、話し出した。シルビア達は、静かに耳を傾ける。
「お母様の大好きな、吟遊詩人で 名前は確か。
ゴーロウ・ノグーチて、言ってたかしら。」
アンジェリカは、首を傾げて思い出す。
「その歌の詩が、子供ながらに心に残って。」
「どんな詩、ですか? 」
シルフィは、静かに聞いた。
『時間ばかり費やしていた 悪戯に。貴方の心の中に、傷一つも残せないで 愛と呼べる筈も無い。』
アンジェリカは、唄うように呟いた。
「まるで、今の私。」
目を閉じ、手を組んだ。
「好きな方の、お心に何一つも残せない。」
アンジェリカは、哀しそうに微笑んだ。
「聞いているでしょう、学園内の噂。」

「アンジェリカ様。否定しましょう、根も葉もない噂。」
シルビアは、進言する。
「そうですわ。おねぇ様が、地の底に沈めますわ。この、ナックルで。」
シルフィは、シルビアの右手を勝利宣言の様に上げる。


「いいの。」
「「アンジェリカ様? 」」
「いいのよ。」

アンジェリカは、噂について否定も肯定もしなかった。ただ微笑んで、いるだけだった。

(アンジェリカ様。まさか、本当に好きな方が。)
シルビア達は、途方に暮れるので有った。

アンジェリカは、思う。
「私に好きな方がいると知ったら、クラウス様は驚くかしら。少しは、傷付いてくれるかしら。」
アンジェリカは、馬車の中で考える。
「婚約解消は、しないわ。婚約解消なら、きっと忘れられる。でも、婚約破棄なら。『あの日、婚約破棄をしてやったな。』なんて、笑いながらクラウス様に思い出して貰えるかも知れない。」
アンジェリカは微笑んだ、彼女は其れだけで良かった。


その噂は、勿論 クラウス達の耳にも入っていた。
北校舎裏でクラウス 他三名がいた。
「落ち込んでいるのか、クラウス。」
クラウスは木の幹に額をあて、じっ と木の根を見ていた。そのまま、
「落ち込む? 何故私が。アンジェリカに、好きな者がいるのなら 」
クラウスは無症状の顔を、アルバートに向けた。
「喜ばしい事ではないか。」
淡々と声を出す。
「これで、アンジェリカとの婚約を解消出来る。」
「そうですね。アンジェリカ様に、好きな方がいるのなら父上も母上も 反対はしないでしょう。」
ベンチに座る アルファが、考えも無しに声に出した。
「そうだな。哀れなる弟よ。」
クラウスは、アルファの頭に手を置いた。アルファは、頭を撫でて貰えると喜んでいたが。
「痛い!! 痛いです、兄上!! 」
クラウスは、アルファの頭を握力で締め付けていた。
「動揺してますね。」
「ああ、めちゃくちゃ動揺してるな。」
「動揺など、していない。私は、アンジェリカの幸せのため婚約を解消するのだ。」
「痛い!! 痛いです、兄上!! 」
手に力が、籠もる。
「本当に、いいのか? 」
「無論、是は政略結婚。」
ますます、クラウスの手に力が籠もる。
「痛いです!! 兄上、痛いです。」
涙ながらに、アルファは訴える。手を外そうと頑張るが、クラウスの腕力は凄ましかった。自分より大きく成った弟の頭を、握力で握り潰そうとしていた。
「政略結婚なら、恋愛は無視して婚姻するのでは。」
ジェームズが、正論を言った。アルバートが、頷く。
「だよな。」
「私は、アンジェリカと婚約を解消する。解消しなければ、アンジェリカを また殺してしまう。」
「その前に、僕が死んでしまいます!! 」
アルファは、訴えた。
「クラウス様が、斬首刑を言い渡さねば アンジェリカ様は死にません。」
ジェームズは、正論を言った。アルバートは、頷く。
「だよな。」
「僕が、死にまーす。兄上、死んで、しまーす。」
声を張り上げるが、哀れなるアルファを助ける者はいなかった。
「私は、アンジェリカと婚約破棄をするのだ!! 絶対、するのだ!! 」
駄々っ子の様に言い張り、思い切り手に力を籠める。
「きゅう。」
変な声を出して、アルファは動かなくなった。
「死んだか? 」
「死にましたか? 」
静かに成ったアルファを、二人は見る。クラウスは、手を離した。
ドサッと、アルファはベンチから下に崩れ落ちた。
「地獄の使者よ、やはり私は弟を殺す運命に有ったのだな。きっと、アンジェリカも殺してしまうのだ。」
クラウスは、膝を付き手を組んだ。アルファに、祈りを捧げる。
「哀れなる、弟よ。兄を許せ、何故か手に力が籠もってしまった。」
ひとしきり祈ると、立ち上がる。そのまま、アルファを踏み付けて振り返る。
二人は、踏み付けられているアルファを見た。
「私は、是から父上と母上に婚約解消を お願いしてくる。」
アルバートとジェームズをゆっくりと見る。
「哀れなる弟を、頼む。」
ぐるぐる と、踵で踏み付けている。其れを見て二人は、アルファを哀れに思った。アルファは、きっと何かクラウスの気に触ったのであろう。
『アンジェリカ様に、好きな方』
その言葉が、クラウスの気に触ったので有った。
クラウスは口では、何でも無いと言いながら 体は正直で有った。
アルファを見て、二人は言葉には気をつけ様との心に誓っていた。

哀れなる弟、アルファ。
十五歳、若い命を落としたのであった。


 

「僕は、死にませーん!! 死んでませーん!! 」
アルファは、教会に行くこともなく蘇った。


「クラウス様が、お可哀想。」

「アンジェリカ様は、酷いです。」

「アンジェリカ様は、クラウス様に相応しくありません。」

至る所で、キャロットは話していた。
キャロットは、アンジェリカに醜聞を立て クラウスとの婚約を壊そうと目論んでいた。


今此処に、婚約破棄をしたいクラウスと、婚約破棄をされたいアンジェリカと、婚約破棄をさせたいキャロットが揃った。
三つ巴の戦いが、始まるのか?
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