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婚約破棄を言われましたが。 ✫
婚約破棄を言われましたが。
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「みんな聞いてくれ!! 僕は婚約破棄をしようと思う。」
華やかな舞踏会で、曲の合間に彼は声をあげてみんなに聞こえるように婚約破棄を言い出した。
彼の名はロミオ・キャピュレット侯爵令息。侯爵という地位以外これと言って誇るもののない普通の令息だ。顔も悪くはないが良くもない、普通の令息だ。その彼がみんなの前で婚約破棄を言い出した。
「ど、どうしてです? 今迄仲睦まじくやってきていたのに…… 」
声を上げたのはロザライン・パリス伯爵令嬢。美しい金髪、しなやかな身体、淑女の鏡なような大人しい令嬢であった。そして、パリス伯爵家は今や乗りに乗っている裕福な伯爵家だ。
「仲睦まじく? 何処をどうとれば、そんなふうに思えるのだ。」
ロミオ令息は苛つきながらロザライン令嬢に言ってのけた。
「でも、周りの方達もみなそう思っていたはずです。」
手を組み祈るようにロザライン令嬢はロミオ令息に話しかけた。ロザライン令嬢の言葉に周りの令息令嬢も頷いていた。
傍から見ても彼等は確かに仲睦まじく、ラブラブのバカップルだった。人前であろうとイチャイチャしまくりであった。それなのに婚約破棄を言い出すとは周りのみんなも信じられなかった。
「キャピュレット様、思い直して下さい。人も羨むようなバカップ。いえ、恋人同士であったはずです。」
「夢でも見たのか? そんなことは一秒たりともない!! 」
ロミオは言ってのけた。
「そ、そんな…… 」
ロザラインは悲しくなった。先程まで、そうこの会場に入るときも仲睦まじくエスコートをしていたのに。人の心はこうも直ぐに変わることが出来るのかと。
ロミオの横に、愛らしい令嬢が縋り付く。彼女の名はジュリエット・モンタギュー男爵令嬢。ふわりとした茶色の髪の庇護欲をそそる令嬢だ。
ロミオに縋り付くジュリエットを見て、ロザラインは目に涙を溜めた。
「僕はこのジュリエットを愛している!! だからロザライン、君との婚約を破棄する!! 」
ロミオはロザラインに言い放った。
「えっ!! 」
「「「「「えっ!! 」」」」」
ロザライン共々、周りの令嬢令息は驚きの声をあげた。
「キャピュレット様…… 少々お待ちくださいませ。」
ロザライン令嬢は淑女の鏡とは思われないほど狼狽え、辺りをきょろきょろと見回す。目当ての人物を見つけると、つい大きい声を出してしまった。
「お父様!! どう言うことですか? 私、キャピュレット様と婚約をしていたのですか? 」
周りのみんなもパリス伯爵に目を向けた。
「ごめ~ん。言うの忘れてた。」
テヘペロと、舌を出して謝るパリス伯爵。ロザラインは次にキャピュレット侯爵に目を向けた。
「すまない、色々あって正式に発表するの忘れてた。」
頭をかいて謝るキャピュレット侯爵。
そう、ロミオとロザラインが婚約をしていたことはロミオとジュリエット、キャピュレット侯爵とパリス伯爵しか知らなかった。
「キャピュレット様、申し訳ありません。私、婚約者だと知らなかったものなので…… 」
ロザラインはロミオに頭を下げた。そういえば学園に入学した頃気安くロミオが話しかけて来たと今更ながら思い出す。
「あの頃は気持ち悪い方だと思い、すみませんでした。」
ロザラインは深々と頭を下げた。
「でも宜しかったですわ。私、キャピュレット様がモンタギュー令嬢と婚約破棄をなさるのかと心を痛めていましたのよ。」
ロザラインはロミオとジュリエットに微笑みかけた。
「二人はお似合いのバカップ、恋人同士ですもの。私、喜んで婚約破棄をお受け致しますわ。」
ロザラインは嬉しそうに婚約破棄を受け入れた。
「宜しいですよね、お父様。」
「うん、仕方ないな。」
パリス伯爵は頷いた。
「キャピュレット侯爵様も宜しいですよね。」
「私達の落ち度だ、すまなかった。」
キャピュレット侯爵も頷いた。
「二人はお似合いですわ。二人の仲をお許し下さいませ、侯爵様。」
ロザラインは責めるような目で、侯爵を見た。
「分かった…… 許そう。」
「宜しゅうございました、キャピュレット令息、モンタギュー令嬢。」
ロザラインは二人に微笑んだ
「ご婚約、おめでとうございます。」
「「「「「二人ともおめでとうございます。」」」」」
ロザラインの掛け声と共に周りの令嬢令息も祝福の声をあげた。会場内は祝福の声に溢れた。
そして、ただ一人複雑な思いで立ち尽くすロミオ・キャピュレットがいた。
【完】
★感想による、おまけ☆
「ロザライン嬢、お二人の婚姻をお勧めになったのはなぜかしら? 他家に、ご迷惑をかけないため? 」
「なんと言っても、お二人はお似合いのバカっ、恋人同士。誰も入りたくは、入る隙間はございませんわ。」
ロザラインがにっこり微笑むと、周りの令息令嬢も微笑みながら頷いた。
❣編集する前に貰った感想❣
❀千夜歌様より
面白かったです。
婚約を知っていた4人とその他との認識の違いが(笑)
すっかり騙されました♪
二度、三度読み返してニンマリする。
ロザライン嬢がやや強引に婚約を押し進めたのは『これ以上他家に迷惑かけるな』の牽制だったのかしら?
ジュリエットは奪ったつもり、ロミオは切り捨てたつもりなら後世に残る醜聞になることでしょう。ハズカシ~
素敵なお話ありがとうございました。これからもご活躍を楽しみにお待ち申し上げます。
❢ありがとうとございました❢
華やかな舞踏会で、曲の合間に彼は声をあげてみんなに聞こえるように婚約破棄を言い出した。
彼の名はロミオ・キャピュレット侯爵令息。侯爵という地位以外これと言って誇るもののない普通の令息だ。顔も悪くはないが良くもない、普通の令息だ。その彼がみんなの前で婚約破棄を言い出した。
「ど、どうしてです? 今迄仲睦まじくやってきていたのに…… 」
声を上げたのはロザライン・パリス伯爵令嬢。美しい金髪、しなやかな身体、淑女の鏡なような大人しい令嬢であった。そして、パリス伯爵家は今や乗りに乗っている裕福な伯爵家だ。
「仲睦まじく? 何処をどうとれば、そんなふうに思えるのだ。」
ロミオ令息は苛つきながらロザライン令嬢に言ってのけた。
「でも、周りの方達もみなそう思っていたはずです。」
手を組み祈るようにロザライン令嬢はロミオ令息に話しかけた。ロザライン令嬢の言葉に周りの令息令嬢も頷いていた。
傍から見ても彼等は確かに仲睦まじく、ラブラブのバカップルだった。人前であろうとイチャイチャしまくりであった。それなのに婚約破棄を言い出すとは周りのみんなも信じられなかった。
「キャピュレット様、思い直して下さい。人も羨むようなバカップ。いえ、恋人同士であったはずです。」
「夢でも見たのか? そんなことは一秒たりともない!! 」
ロミオは言ってのけた。
「そ、そんな…… 」
ロザラインは悲しくなった。先程まで、そうこの会場に入るときも仲睦まじくエスコートをしていたのに。人の心はこうも直ぐに変わることが出来るのかと。
ロミオの横に、愛らしい令嬢が縋り付く。彼女の名はジュリエット・モンタギュー男爵令嬢。ふわりとした茶色の髪の庇護欲をそそる令嬢だ。
ロミオに縋り付くジュリエットを見て、ロザラインは目に涙を溜めた。
「僕はこのジュリエットを愛している!! だからロザライン、君との婚約を破棄する!! 」
ロミオはロザラインに言い放った。
「えっ!! 」
「「「「「えっ!! 」」」」」
ロザライン共々、周りの令嬢令息は驚きの声をあげた。
「キャピュレット様…… 少々お待ちくださいませ。」
ロザライン令嬢は淑女の鏡とは思われないほど狼狽え、辺りをきょろきょろと見回す。目当ての人物を見つけると、つい大きい声を出してしまった。
「お父様!! どう言うことですか? 私、キャピュレット様と婚約をしていたのですか? 」
周りのみんなもパリス伯爵に目を向けた。
「ごめ~ん。言うの忘れてた。」
テヘペロと、舌を出して謝るパリス伯爵。ロザラインは次にキャピュレット侯爵に目を向けた。
「すまない、色々あって正式に発表するの忘れてた。」
頭をかいて謝るキャピュレット侯爵。
そう、ロミオとロザラインが婚約をしていたことはロミオとジュリエット、キャピュレット侯爵とパリス伯爵しか知らなかった。
「キャピュレット様、申し訳ありません。私、婚約者だと知らなかったものなので…… 」
ロザラインはロミオに頭を下げた。そういえば学園に入学した頃気安くロミオが話しかけて来たと今更ながら思い出す。
「あの頃は気持ち悪い方だと思い、すみませんでした。」
ロザラインは深々と頭を下げた。
「でも宜しかったですわ。私、キャピュレット様がモンタギュー令嬢と婚約破棄をなさるのかと心を痛めていましたのよ。」
ロザラインはロミオとジュリエットに微笑みかけた。
「二人はお似合いのバカップ、恋人同士ですもの。私、喜んで婚約破棄をお受け致しますわ。」
ロザラインは嬉しそうに婚約破棄を受け入れた。
「宜しいですよね、お父様。」
「うん、仕方ないな。」
パリス伯爵は頷いた。
「キャピュレット侯爵様も宜しいですよね。」
「私達の落ち度だ、すまなかった。」
キャピュレット侯爵も頷いた。
「二人はお似合いですわ。二人の仲をお許し下さいませ、侯爵様。」
ロザラインは責めるような目で、侯爵を見た。
「分かった…… 許そう。」
「宜しゅうございました、キャピュレット令息、モンタギュー令嬢。」
ロザラインは二人に微笑んだ
「ご婚約、おめでとうございます。」
「「「「「二人ともおめでとうございます。」」」」」
ロザラインの掛け声と共に周りの令嬢令息も祝福の声をあげた。会場内は祝福の声に溢れた。
そして、ただ一人複雑な思いで立ち尽くすロミオ・キャピュレットがいた。
【完】
★感想による、おまけ☆
「ロザライン嬢、お二人の婚姻をお勧めになったのはなぜかしら? 他家に、ご迷惑をかけないため? 」
「なんと言っても、お二人はお似合いのバカっ、恋人同士。誰も入りたくは、入る隙間はございませんわ。」
ロザラインがにっこり微笑むと、周りの令息令嬢も微笑みながら頷いた。
❣編集する前に貰った感想❣
❀千夜歌様より
面白かったです。
婚約を知っていた4人とその他との認識の違いが(笑)
すっかり騙されました♪
二度、三度読み返してニンマリする。
ロザライン嬢がやや強引に婚約を押し進めたのは『これ以上他家に迷惑かけるな』の牽制だったのかしら?
ジュリエットは奪ったつもり、ロミオは切り捨てたつもりなら後世に残る醜聞になることでしょう。ハズカシ~
素敵なお話ありがとうございました。これからもご活躍を楽しみにお待ち申し上げます。
❢ありがとうとございました❢
応援ありがとうございます!
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