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悪役令嬢と思ったら、大間違いよ。 ✩
廊下で話は済みました。
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「ラックス様…… 」
ボロボロと涙を流すジュリエッタを見てラックスは鼻で笑った。
「今更泣いたって遅い、メリットはもっと地味に苦しんだんだ。」
「ええ、とても辛かったですわ。ラックスさま。」
ジュリエッタは深く深く頭を下げた。誰もが、虐めを謝ると思ったら。
「ありがとうございます、ラックス様。」
ジュリエッタは弾む声で感謝のお礼を言った。上げた顔は涙で濡れていたが、頬を赤らめ嬉しそうに笑顔を称えていた。
「ラックス様。いえ、ユニリーバ公爵令息様から婚約を破棄していただいて嬉しいです。」
ジュリエッタはぎゅっと両手を祈るように胸の前では組んだ。
「キズ者になったわたくしなら、あの方に受け入れて貰えるかもしれません。」
嬉しそうに微笑むジュリエッタに、学生達は怪訝の顔で見ている。ジュリエッタは夢見るように目を閉じ、呟いた。
「子供の頃からお慕いしているあの方に。子供の頃『大きくなったら結婚しょうね』と、約束したあの方に。」
ジュリエッタが子供の時から慕っている者がいると言う呟きに、周りの学生達がざわめく。
「わたくしは公爵令嬢、あの方は男爵令息。」
男爵令息と聞いて、学生達は子爵令嬢のメリットを見る。彼女より下の地位である。
「国王陛下に言われ、ユニリーバ公爵家との婚姻に頷くことしかできなかった幼いわたくし。泣く泣く、あの方を諦めるしかなかったのです。淡い初恋でした。」
国王陛下の勅命の婚姻を断れる訳はないと、学生達は頷いた。
「あの方とすれ違うたび、心は惹かれ続けました。でも、わたくしは婚約者のある身。目の端に留めおくことしかできませんでした。」
ジュリエッタは辛そうに俯いた。
「でも婚約破棄されるほどの令嬢、もしかしたら男爵令息のあの方との婚姻をお父様が許して下さるかもしれません。」
夢見るように顔を上げて、ハッとする。
「いえ、こんなキズ者令嬢。あの方が、好きになってくれる筈はありません…… 」
縮こまるように背を丸める。
「そんなことはない、ジュリエッタ!! 僕も、ずっと君のことが…… 」
人を掻き分けて、一人の男子生徒が現れた。茶色い髪と目の、少しカッコいい男子生徒である。何より彼は頭がよかった、学園の入学当時から主席を誰にも譲ったことのない秀才と呼ばれるロォミオ・ケミカル男爵令息。
「僕も君のことを何時も見ていたよ。何かあったら陰ながらでも助けられるように。」
ロォミオはゆっくりとジュリエッタに近寄る。
「力のない地位では無理だと分かっている、たからこそ知識を蓄えた。誰にも負けないために。」
「ロォミオ様。」
二人は見詰め合う。
「二人は慕い合っていた。それを王命で引き裂かれたのね。」
「結ばれ無いと分かっていながら彼女の為に、勉強を。」
「いざと言うときに、陰ながら力になるためにですって。」
「なんて事だ…… 」
学生達は、見詰め合う二人に感涙する。
「「「「純愛ですわ。」」」」
「「「「漢だな。」」」」
学生達はジュリエッタとロォミオを眩しい者を見るように目を細めた。そして、ラックスとメリットを醜いと目を逸した。
「結ばれたと言ってたな。」
「肉欲愛だな。」
「『真実の愛』なんて自分から言うものではありませんわ。」
「汚らわしい!! 」
『真実の愛』が『純愛』に負けた瞬間だった。
「ジュリエッタ、確かに君は婚約破棄をされた。しかし僕は男爵家、公爵家の御令嬢とは結ばれる事はない。」
見詰め合っているが、手を取ることもなく距離を置いているロォミオ。縋りつきたいのを我慢している、ジュリエッタ。
「「「「健気だわ。」」」」
「「「「漢だな。」」」」
悲しく距離を置くジュリエッタとロォミオ。ベタベタとところ構わず引っ付き合ってるラックスとメリット。誰もが前者二人を応援したくなった。
「大丈夫ですわ、わたくしが力になりますわ。」
この国の王女が前に進み出た。
「私も力になろう。」
王太子も進み出た。
「ケミカル男爵令息のように優秀な者なら、養子縁組も引く手数多だろう。」
「わたくしも、お父様にお願いしますわ。」
「王女殿下…… 」
「ありがとうございます、王太子殿下。」
ロォミオは深く頭を下げた。
「ジュリエッタ、もし。もしも、君に釣り合う地位になれたら、僕と結婚してくれるかい? 」
ここで始めて、幼き子供の時のようにそっとジュリエッタの手を取る。
「はい。」
嬉し涙を流しながら、ジュリエッタはロォミオの婚姻を受入れた。
「「「「うおぉーーーお!! 」」」」
廊下は二人を祝福する歓喜の声が上がった。
ロォミオは、なんとユニリーバ家の養子となりラックスの代わりにオーガニック家と縁を結ぶ婚姻となった。ラックスが継ぐはずの侯爵領を貰い受ける。
ラックスはメリットのカオウ子爵家に婿養子に出され、縁を切られた。ちなみに虐めはなかった、メリットの勘違いで教科書等、靴もどこぞに置き忘れていただけだった。
そしてロォミオとジュリエッタは結婚し、幸せに暮らしましたとさ。
【完】
❣編集する前に貰った感想❣
❀秋桜様より
短くて読みやすく、でもテンプレなのに面白いというか、なんとなく好きです。投稿てほんわか?した話をありがとうございますと伝えたいほど。
❢ありがとうとございます。優しい感想、嬉しいです。❢
✿おかん様より
悪役令嬢のお父様から来ました。こちらの作品のネーミングセンスが秀逸で面白かったです。
頭の中でそれぞれのボトルが飛び跳ねてしまいました♡
❢シャンプーの家名です。❢
ボロボロと涙を流すジュリエッタを見てラックスは鼻で笑った。
「今更泣いたって遅い、メリットはもっと地味に苦しんだんだ。」
「ええ、とても辛かったですわ。ラックスさま。」
ジュリエッタは深く深く頭を下げた。誰もが、虐めを謝ると思ったら。
「ありがとうございます、ラックス様。」
ジュリエッタは弾む声で感謝のお礼を言った。上げた顔は涙で濡れていたが、頬を赤らめ嬉しそうに笑顔を称えていた。
「ラックス様。いえ、ユニリーバ公爵令息様から婚約を破棄していただいて嬉しいです。」
ジュリエッタはぎゅっと両手を祈るように胸の前では組んだ。
「キズ者になったわたくしなら、あの方に受け入れて貰えるかもしれません。」
嬉しそうに微笑むジュリエッタに、学生達は怪訝の顔で見ている。ジュリエッタは夢見るように目を閉じ、呟いた。
「子供の頃からお慕いしているあの方に。子供の頃『大きくなったら結婚しょうね』と、約束したあの方に。」
ジュリエッタが子供の時から慕っている者がいると言う呟きに、周りの学生達がざわめく。
「わたくしは公爵令嬢、あの方は男爵令息。」
男爵令息と聞いて、学生達は子爵令嬢のメリットを見る。彼女より下の地位である。
「国王陛下に言われ、ユニリーバ公爵家との婚姻に頷くことしかできなかった幼いわたくし。泣く泣く、あの方を諦めるしかなかったのです。淡い初恋でした。」
国王陛下の勅命の婚姻を断れる訳はないと、学生達は頷いた。
「あの方とすれ違うたび、心は惹かれ続けました。でも、わたくしは婚約者のある身。目の端に留めおくことしかできませんでした。」
ジュリエッタは辛そうに俯いた。
「でも婚約破棄されるほどの令嬢、もしかしたら男爵令息のあの方との婚姻をお父様が許して下さるかもしれません。」
夢見るように顔を上げて、ハッとする。
「いえ、こんなキズ者令嬢。あの方が、好きになってくれる筈はありません…… 」
縮こまるように背を丸める。
「そんなことはない、ジュリエッタ!! 僕も、ずっと君のことが…… 」
人を掻き分けて、一人の男子生徒が現れた。茶色い髪と目の、少しカッコいい男子生徒である。何より彼は頭がよかった、学園の入学当時から主席を誰にも譲ったことのない秀才と呼ばれるロォミオ・ケミカル男爵令息。
「僕も君のことを何時も見ていたよ。何かあったら陰ながらでも助けられるように。」
ロォミオはゆっくりとジュリエッタに近寄る。
「力のない地位では無理だと分かっている、たからこそ知識を蓄えた。誰にも負けないために。」
「ロォミオ様。」
二人は見詰め合う。
「二人は慕い合っていた。それを王命で引き裂かれたのね。」
「結ばれ無いと分かっていながら彼女の為に、勉強を。」
「いざと言うときに、陰ながら力になるためにですって。」
「なんて事だ…… 」
学生達は、見詰め合う二人に感涙する。
「「「「純愛ですわ。」」」」
「「「「漢だな。」」」」
学生達はジュリエッタとロォミオを眩しい者を見るように目を細めた。そして、ラックスとメリットを醜いと目を逸した。
「結ばれたと言ってたな。」
「肉欲愛だな。」
「『真実の愛』なんて自分から言うものではありませんわ。」
「汚らわしい!! 」
『真実の愛』が『純愛』に負けた瞬間だった。
「ジュリエッタ、確かに君は婚約破棄をされた。しかし僕は男爵家、公爵家の御令嬢とは結ばれる事はない。」
見詰め合っているが、手を取ることもなく距離を置いているロォミオ。縋りつきたいのを我慢している、ジュリエッタ。
「「「「健気だわ。」」」」
「「「「漢だな。」」」」
悲しく距離を置くジュリエッタとロォミオ。ベタベタとところ構わず引っ付き合ってるラックスとメリット。誰もが前者二人を応援したくなった。
「大丈夫ですわ、わたくしが力になりますわ。」
この国の王女が前に進み出た。
「私も力になろう。」
王太子も進み出た。
「ケミカル男爵令息のように優秀な者なら、養子縁組も引く手数多だろう。」
「わたくしも、お父様にお願いしますわ。」
「王女殿下…… 」
「ありがとうございます、王太子殿下。」
ロォミオは深く頭を下げた。
「ジュリエッタ、もし。もしも、君に釣り合う地位になれたら、僕と結婚してくれるかい? 」
ここで始めて、幼き子供の時のようにそっとジュリエッタの手を取る。
「はい。」
嬉し涙を流しながら、ジュリエッタはロォミオの婚姻を受入れた。
「「「「うおぉーーーお!! 」」」」
廊下は二人を祝福する歓喜の声が上がった。
ロォミオは、なんとユニリーバ家の養子となりラックスの代わりにオーガニック家と縁を結ぶ婚姻となった。ラックスが継ぐはずの侯爵領を貰い受ける。
ラックスはメリットのカオウ子爵家に婿養子に出され、縁を切られた。ちなみに虐めはなかった、メリットの勘違いで教科書等、靴もどこぞに置き忘れていただけだった。
そしてロォミオとジュリエッタは結婚し、幸せに暮らしましたとさ。
【完】
❣編集する前に貰った感想❣
❀秋桜様より
短くて読みやすく、でもテンプレなのに面白いというか、なんとなく好きです。投稿てほんわか?した話をありがとうございますと伝えたいほど。
❢ありがとうとございます。優しい感想、嬉しいです。❢
✿おかん様より
悪役令嬢のお父様から来ました。こちらの作品のネーミングセンスが秀逸で面白かったです。
頭の中でそれぞれのボトルが飛び跳ねてしまいました♡
❢シャンプーの家名です。❢
応援ありがとうございます!
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