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彼女への手紙。
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お義姉さまお元気ですか。
お義姉さまたちが辺境へ帰られてから、色々とありました。お母さまが失踪し、一人残された私は悪夢のような混乱のソルトルアー国から逃げるように隣の国、帝国へと居を移し替えました。
カルパチィア帝国は、前皇帝を退けて皇太子様が新皇帝になったばかりのようでした。帝都と第二都市と呼ばれた都は殆どの民や貴族たちは悪夢に苛まれていて、使い物にならない状態で新皇帝様の権限により殆どの民と貴族たちを総入れ替えしている処に滑り込むように私は入り込みました。
どうやら今迄戦争に反対していた民や虐げられていた辺境の貴族たちが帝都に入り、重役に付いたようです。第二都市は新皇帝様の叔父の公爵様、元帥閣下が領主として束ねることになったようです。
新皇帝と元帥閣下の強い要望で帝国は武力行使を避け、各国に話し合いの交渉をするようになり平和条約が取り決められ今は戦争が無くなっています。小競り合いはありますが、帝国共々各国が小競り合いをする国に圧力を掛けてやめさせている模様です。
ソルトルアー国も帝国と同じように、王様の交代が行われたようです。王様も王太子様もあの時いた貴族たちも地方に引きこもって、他国に嫁いだ王女様の息子様が後を継いだようです。それはシュガーレ国も同様で他国に婿に出た第三王子様が国に戻り王座に着いたと聞きました。
お義姉さまの婚約者だったアフォガード様は、赤子のようになって下の世話から何まで人に頼らなくては生きて行けないようになってしまっているようです。シュガーレ国のアマージョ様の話は耳に届きません。
他の国々の王族の方たちや重臣も、よくわからないですけど何人か退いたと話に聞きます。
私は着の身着のまま国を逃げ出して、森をさ迷いボロボロのボロ雑巾になって狼のご飯になる処を帝国へと向かうキャラバンの一家族に拾われました。
森の中をさ迷い飢えというものを知りました。枝に刻まれ崖から落ちて痛みというものも知りました。狼たちに追われ、死の恐怖も知りました。
でも、伯父様に追われたときの方が恐かったですけど。これは内緒にしてください。
それでも私は、まだお義姉さまたちの所為だと恨んでいたのです。ボロ雑巾になりながら、青痣や骨折や傷だらけで醜い姿より私の心は醜いままだったのです。
悪態をつくこんな私を、我儘で何も出来ない私を根気強くものを教えてくれたのは私を拾ってくださった家族です。
まるで幼子にものを教えるように温かく私に接してくださったのです。手紙を書くことも彼から進められました。
最初の頃は罵詈雑言の悪態ばかりを書いてましが、諭され教えられて私がどれ程の醜い酷い人間かを実感しました。生きているのが恥ずかしい程に。
ごめんなさいお義姉さま、ほんとうにごめんなさい。謝ることしかできません。
伯父さまに愛され父親の愛を知るお義姉さまに嫉妬してました。でもお義姉さまも母親の愛を知らなかったのに。自分の事しか考えられなかったあの頃の私は馬鹿な子供でした。母の言葉だけを信じた醜い人間でした。
伯母さまは私を救うために母が罪を被ったように言ってくれましたが。母がそういう人間ではないと今なら分かります。
でもお人好しの伯母さまのお陰で母を憎まずにいられます。
ほんとうの家族の愛というものを、助けてくださった方々から彼から教えてもらいました。
こんな最低だった私が幸せになっていいのかと、悩みました。
でも、お人好しの伯母さまの「生きて幸せになって」の言葉に甘えます。
彼は伯父さまのように格好良くも強くもないけど、優しくて誰よりも素敵な人。自分より大切にしたい人に出会えた幸運に感謝します。
長々と書きましたが、お義姉さまの幸せを祈っています。
いえ、お義姉さまは幸せですね。だって、お義姉さまを愛するお母さまとお父さまがいらっしゃるんですもの。
私は今日、彼の元に嫁ぎます。と、言っても同じ家なんですけど。
お義姉さまに心からのお詫びと、幸せを願っています。
女性は手紙を折り畳み、便箋に詰めた。そして、引き出しを引きその中にそっと置いた。何枚もの便箋の上に置き、引き出しを閉めた。
送ることの出来ない手紙を女性は書き続ける。それは、忘れてはならない懺悔の意味を込めて。
「ーーーー。」
扉の向こうで女性の名を呼ぶ声がする。女性はこれから着る白いウエディングドレスを抱きしめて扉の方へ歩いていった。
お義姉さまたちが辺境へ帰られてから、色々とありました。お母さまが失踪し、一人残された私は悪夢のような混乱のソルトルアー国から逃げるように隣の国、帝国へと居を移し替えました。
カルパチィア帝国は、前皇帝を退けて皇太子様が新皇帝になったばかりのようでした。帝都と第二都市と呼ばれた都は殆どの民や貴族たちは悪夢に苛まれていて、使い物にならない状態で新皇帝様の権限により殆どの民と貴族たちを総入れ替えしている処に滑り込むように私は入り込みました。
どうやら今迄戦争に反対していた民や虐げられていた辺境の貴族たちが帝都に入り、重役に付いたようです。第二都市は新皇帝様の叔父の公爵様、元帥閣下が領主として束ねることになったようです。
新皇帝と元帥閣下の強い要望で帝国は武力行使を避け、各国に話し合いの交渉をするようになり平和条約が取り決められ今は戦争が無くなっています。小競り合いはありますが、帝国共々各国が小競り合いをする国に圧力を掛けてやめさせている模様です。
ソルトルアー国も帝国と同じように、王様の交代が行われたようです。王様も王太子様もあの時いた貴族たちも地方に引きこもって、他国に嫁いだ王女様の息子様が後を継いだようです。それはシュガーレ国も同様で他国に婿に出た第三王子様が国に戻り王座に着いたと聞きました。
お義姉さまの婚約者だったアフォガード様は、赤子のようになって下の世話から何まで人に頼らなくては生きて行けないようになってしまっているようです。シュガーレ国のアマージョ様の話は耳に届きません。
他の国々の王族の方たちや重臣も、よくわからないですけど何人か退いたと話に聞きます。
私は着の身着のまま国を逃げ出して、森をさ迷いボロボロのボロ雑巾になって狼のご飯になる処を帝国へと向かうキャラバンの一家族に拾われました。
森の中をさ迷い飢えというものを知りました。枝に刻まれ崖から落ちて痛みというものも知りました。狼たちに追われ、死の恐怖も知りました。
でも、伯父様に追われたときの方が恐かったですけど。これは内緒にしてください。
それでも私は、まだお義姉さまたちの所為だと恨んでいたのです。ボロ雑巾になりながら、青痣や骨折や傷だらけで醜い姿より私の心は醜いままだったのです。
悪態をつくこんな私を、我儘で何も出来ない私を根気強くものを教えてくれたのは私を拾ってくださった家族です。
まるで幼子にものを教えるように温かく私に接してくださったのです。手紙を書くことも彼から進められました。
最初の頃は罵詈雑言の悪態ばかりを書いてましが、諭され教えられて私がどれ程の醜い酷い人間かを実感しました。生きているのが恥ずかしい程に。
ごめんなさいお義姉さま、ほんとうにごめんなさい。謝ることしかできません。
伯父さまに愛され父親の愛を知るお義姉さまに嫉妬してました。でもお義姉さまも母親の愛を知らなかったのに。自分の事しか考えられなかったあの頃の私は馬鹿な子供でした。母の言葉だけを信じた醜い人間でした。
伯母さまは私を救うために母が罪を被ったように言ってくれましたが。母がそういう人間ではないと今なら分かります。
でもお人好しの伯母さまのお陰で母を憎まずにいられます。
ほんとうの家族の愛というものを、助けてくださった方々から彼から教えてもらいました。
こんな最低だった私が幸せになっていいのかと、悩みました。
でも、お人好しの伯母さまの「生きて幸せになって」の言葉に甘えます。
彼は伯父さまのように格好良くも強くもないけど、優しくて誰よりも素敵な人。自分より大切にしたい人に出会えた幸運に感謝します。
長々と書きましたが、お義姉さまの幸せを祈っています。
いえ、お義姉さまは幸せですね。だって、お義姉さまを愛するお母さまとお父さまがいらっしゃるんですもの。
私は今日、彼の元に嫁ぎます。と、言っても同じ家なんですけど。
お義姉さまに心からのお詫びと、幸せを願っています。
女性は手紙を折り畳み、便箋に詰めた。そして、引き出しを引きその中にそっと置いた。何枚もの便箋の上に置き、引き出しを閉めた。
送ることの出来ない手紙を女性は書き続ける。それは、忘れてはならない懺悔の意味を込めて。
「ーーーー。」
扉の向こうで女性の名を呼ぶ声がする。女性はこれから着る白いウエディングドレスを抱きしめて扉の方へ歩いていった。
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