【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて

文字の大きさ
40 / 40

彼女への手紙。

しおりを挟む
お義姉さまお元気ですか。
お義姉さまたちが辺境へ帰られてから、色々とありました。お母さまが失踪し、一人残された私は悪夢のような混乱のソルトルアー国から逃げるように隣の国、帝国へと居を移し替えました。
カルパチィア帝国は、前皇帝を退けて皇太子様が新皇帝になったばかりのようでした。帝都と第二都市と呼ばれた都は殆どの民や貴族たちは悪夢に苛まれていて、使い物にならない状態で新皇帝様の権限により殆どの民と貴族たちを総入れ替えしている処に滑り込むように私は入り込みました。
どうやら今迄戦争に反対していた民や虐げられていた辺境の貴族たちが帝都に入り、重役に付いたようです。第二都市は新皇帝様の叔父の公爵様、元帥閣下が領主として束ねることになったようです。
新皇帝と元帥閣下の強い要望で帝国は武力行使を避け、各国に話し合いの交渉をするようになり平和条約が取り決められ今は戦争が無くなっています。小競り合いはありますが、帝国共々各国が小競り合いをする国に圧力を掛けてやめさせている模様です。

ソルトルアー国も帝国と同じように、王様の交代が行われたようです。王様も王太子様もあの時いた貴族たちも地方に引きこもって、他国に嫁いだ王女様の息子様が後を継いだようです。それはシュガーレ国も同様で他国に婿に出た第三王子様が国に戻り王座に着いたと聞きました。
お義姉さまの婚約者だったアフォガード様は、赤子のようになって下の世話から何まで人に頼らなくては生きて行けないようになってしまっているようです。シュガーレ国のアマージョ様の話は耳に届きません。
他の国々の王族の方たちや重臣も、よくわからないですけど何人か退いたと話に聞きます。

私は着の身着のまま国を逃げ出して、森をさ迷いボロボロのボロ雑巾になって狼のご飯になる処を帝国へと向かうキャラバンの一家族に拾われました。

森の中をさ迷い飢えというものを知りました。枝に刻まれ崖から落ちて痛みというものも知りました。狼たちに追われ、死の恐怖も知りました。
でも、伯父様に追われたときの方が恐かったですけど。これは内緒にしてください。

それでも私は、まだお義姉さまたちの所為だと恨んでいたのです。ボロ雑巾になりながら、青痣や骨折や傷だらけで醜い姿より私の心は醜いままだったのです。

悪態をつくこんな私を、我儘で何も出来ない私を根気強くものを教えてくれたのは私を拾ってくださった家族です。

まるで幼子にものを教えるように温かく私に接してくださったのです。手紙を書くことも彼から進められました。

最初の頃は罵詈雑言の悪態ばかりを書いてましが、諭され教えられて私がどれ程の醜い酷い人間かを実感しました。生きているのが恥ずかしい程に。

ごめんなさいお義姉さま、ほんとうにごめんなさい。謝ることしかできません。

伯父さまに愛され父親の愛を知るお義姉さまに嫉妬してました。でもお義姉さまも母親の愛を知らなかったのに。自分の事しか考えられなかったあの頃の私は馬鹿な子供でした。母の言葉だけを信じた醜い人間でした。

伯母さまは私を救うために母が罪を被ったように言ってくれましたが。母がそういう人間ではないと今なら分かります。
でもお人好しの伯母さまのお陰で母を憎まずにいられます。

ほんとうの家族の愛というものを、助けてくださった方々から彼から教えてもらいました。

こんな最低だった私が幸せになっていいのかと、悩みました。
でも、お人好しの伯母さまの「生きて幸せになって」の言葉に甘えます。

彼は伯父さまのように格好良くも強くもないけど、優しくて誰よりも素敵な人。自分より大切にしたい人に出会えた幸運に感謝します。

長々と書きましたが、お義姉さまの幸せを祈っています。
いえ、お義姉さまは幸せですね。だって、お義姉さまを愛するお母さまとお父さまがいらっしゃるんですもの。

私は今日、彼の元に嫁ぎます。と、言っても同じ家なんですけど。

お義姉さまに心からのお詫びと、幸せを願っています。

           







女性は手紙を折り畳み、便箋に詰めた。そして、引き出しを引きその中にそっと置いた。何枚もの便箋の上に置き、引き出しを閉めた。

送ることの出来ない手紙を女性は書き続ける。それは、忘れてはならない懺悔の意味を込めて。

「ーーーー。」
扉の向こうで女性の名を呼ぶ声がする。女性はこれから着る白いウエディングドレスを抱きしめて扉の方へ歩いていった。


しおりを挟む
感想 21

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(21件)

pupuji
2025.08.24 pupuji

この人だけ幸せになるなんて許せない。。。。

2025.08.30 ❄️冬は つとめて

安心してください。
リフィル、リフター、アニタ、一族みんな、辺境に戻って幸せに暮らしています。

ただ、リフィルの婚期はリフターの分厚い壁に邪魔され遅くなりそうです。

【ある家族の幸せ】

「俺より強い奴じゃ 」
「あ・な・た! いい加減にしなさい! 」
リフターはアニタにぺしっと頭を叩かれる

「はい…… 」
しゅんとするリフター。

「うふふふっ。」
両親の会話に微笑むリフィル。




解除
雪那
2023.10.30 雪那

神々は去り、ある意味のラグナロクですなぁ

やり直し後の世界だと門番という言葉は失くなりそうな気がします
だって彼らの無駄口が破滅の引き金なのですから、何故こうなったか知りたがる者が突き止めるか、彼ら自身が語るかどうかにしろ、門番のせいで辺境の者達が凶行に走ったと知られれば門番という言葉が忌まわれそうです

2023.11.05 ❄️冬は つとめて

例え門番が話さなくても、周知の事実なのでいつかはリフターの耳に入っていたことでしょう。リフターは娘に贈ったドレスと、アニタの形見を見つけていますし。

解除
BLACK無糖
2023.08.14 BLACK無糖

これは良いデウス・エクス・マキナ。
神々もキッチリ因果応報を食らったのも後読感をより良くサッパリしっとり。
憎悪に猛る父親はベルセルクの主人公のイメージで読んでたw
ずっと傷ついてきた親子…家族が健やかに幸せで有りますように。

最後の出せない手紙も良かった。
決して出す事は無い手紙って良いよね……
降り積もる雪のように、けれど手紙と込められた思いは消えることなく……

2023.08.17 ❄️冬は つとめて

リフィルもリフターも辺境に戻って、アニタと幸せに暮らしています。辺境の者達も殺戮などせずに普通の生活に戻っています。

従姉妹の女性も懺悔を胸に、日々穏やかに暮らしています。

解除

あなたにおすすめの小説

【完結】そして、誰もいなくなった

杜野秋人
ファンタジー
「そなたは私の妻として、侯爵夫人として相応しくない!よって婚約を破棄する!」 愛する令嬢を傍らに声高にそう叫ぶ婚約者イグナシオに伯爵家令嬢セリアは誤解だと訴えるが、イグナシオは聞く耳を持たない。それどころか明らかに犯してもいない罪を挙げられ糾弾され、彼女は思わず彼に手を伸ばして取り縋ろうとした。 「触るな!」 だがその手をイグナシオは大きく振り払った。振り払われよろめいたセリアは、受け身も取れないまま仰向けに倒れ、頭を打って昏倒した。 「突き飛ばしたぞ」 「彼が手を上げた」 「誰か衛兵を呼べ!」 騒然となるパーティー会場。すぐさま会場警護の騎士たちに取り囲まれ、彼は「違うんだ、話を聞いてくれ!」と叫びながら愛人の令嬢とともに連行されていった。 そして倒れたセリアもすぐさま人が集められ運び出されていった。 そして誰もいなくなった。 彼女と彼と愛人と、果たして誰が悪かったのか。 これはとある悲しい、婚約破棄の物語である。 ◆小説家になろう様でも公開しています。話数の関係上あちらの方が進みが早いです。 3/27、なろう版完結。あちらは全8話です。 3/30、小説家になろうヒューマンドラマランキング日間1位になりました! 4/1、完結しました。全14話。

復讐のための五つの方法

炭田おと
恋愛
 皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。  それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。  グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。  72話で完結です。

繰り返しのその先は

みなせ
ファンタジー
婚約者がある女性をそばに置くようになってから、 私は悪女と呼ばれるようになった。 私が声を上げると、彼女は涙を流す。 そのたびに私の居場所はなくなっていく。 そして、とうとう命を落とした。 そう、死んでしまったはずだった。 なのに死んだと思ったのに、目を覚ます。 婚約が決まったあの日の朝に。

逆転した王女姉妹の復讐

碧井 汐桜香
ファンタジー
悪い噂の流れる第四王女と、 明るく美しく、使用人にまで優しい第五王女。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

【完結】さよなら、馬鹿な王太子殿下

花草青依
恋愛
ビーチェは恋人であるランベルト王太子の傍らで、彼の“婚約破棄宣言”を聞いていた。ランベルトの婚約者であるニナはあっさりと受け入れて去って行った。それを見て、上手く行ったと満足するビーチェ。しかし、彼女の目的はそれだけに留まらず、王宮の平和を大きく乱すものだった。 ■主人公は、いわゆる「悪役令嬢もの」の原作ヒロインのポジションの人です ■画像は生成AI (ChatGPT)

最後に言い残した事は

白羽鳥(扇つくも)
ファンタジー
 どうして、こんな事になったんだろう……  断頭台の上で、元王妃リテラシーは呆然と己を罵倒する民衆を見下ろしていた。世界中から尊敬を集めていた宰相である父の暗殺。全てが狂い出したのはそこから……いや、もっと前だったかもしれない。  本日、リテラシーは公開処刑される。家族ぐるみで悪魔崇拝を行っていたという謂れなき罪のために王妃の位を剥奪され、邪悪な魔女として。 「最後に、言い残した事はあるか?」  かつての夫だった若き国王の言葉に、リテラシーは父から教えられていた『呪文』を発する。 ※ファンタジーです。ややグロ表現注意。 ※「小説家になろう」「カクヨム」にも掲載。

公爵令嬢アナスタシアの華麗なる鉄槌

招杜羅147
ファンタジー
「婚約は破棄だ!」 毒殺容疑の冤罪で、婚約者の手によって投獄された公爵令嬢・アナスタシア。 彼女は獄中死し、それによって3年前に巻き戻る。 そして…。

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。