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第4話
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私はメリンダ・デュプレクス
最近、2人の嫁が仲良くしているのが気に入らない。
下等なシャノン家の娘の分際で、リネットさんに取り入るなんて虫唾が走る。
なにより私を蔑ろにしているのが許せない。
毎日、リネットさんの部屋に出入りしては談笑する声が響いてくる。
リネットさんが部屋にこもってからしばらくが経つ。
最初はライラの妊娠を知ってショックのあまり塞ぎ込んでいるとばかり思っていたが、
リネットさんとの面会が許されているのはお付きのメイドとライラだけ。
非常に面白くない。
このままではライラにデカい顔をされる。
何か手はないかと考えて、ペンを手に取った。
リネットさんの体調不良を逆手に取って、“懐妊”の兆候ありとの手紙をラガルド家に送るのだ。
たとえ妊娠が間違いだったとしても兆候は外れるもの。私のウソにはならない。
この手紙でラガルド家の興味を惹き、本当に子ができればお家の繋がりはさらに強固なものになる。
走り出したペンは止まらない。
私には妹がいる。
妹は姉の私を差し置いて先に結婚。しかも当時、近隣で最も影響力を持っていた侯爵家に嫁いだのだ。
その時の両親のはしゃぎぶりは今でも忘れられない。
当の私はというと妹に遅れること1年。ようやくデュプレクス子爵家に嫁ぐことが決まった。
だけど、両親からは妹の時ほどの喜びを感じられなかった。
「結局、手を挙げたのはデュプレクス家だけだったか⋯⋯」
「メリンダの魅力じゃ、子爵家が精一杯なのね」
「公爵家や王家を期待していたが残念だ」
両親のがっかりした顔を見て、悔しくて、悔しくて。
両親と妹を見返してやろうとデュプレクス家を盛り立ててきたが伯爵家にするのが限界だった。
家族への復讐をあきらめかけていたとき、ラガルド家から息子への縁談が舞い込んできたときは飛び上がらんばかりに嬉しかった。
息子のロイクにはすでにライラがいたが、こんな千載一遇のチャンスはそうはない。
だから私は快くこの縁談を受け入れた。
ラガルド家の血をひく子がデュプレクス家に生まれれば、デュプレクス家は侯爵家に、そしてロイクの官職の位も上がり
妹が嫁いだ家など私が吹けば飛んでしまう。
両親にも思い知らせるんだ。正解だったのはメリンダの方だと。
リネット“懐妊”の手紙をラガルド家に送って1週間が経過した。
だが反応はいまだにない。
「おかしい。娘の懐妊を知れば、内務卿とまで行かなくても使者のひとり、ふたりはよこすはず」
痺れを切らした私は王都にあるラガルド家の屋敷にやってきた。
馬車で3日はかかる旅路。
たどり着くとそこで思わぬ反応が返ってきた。
「リネットのことなど知りません!」
門前でレオン・ラガルド夫人は腕を組み仁王立ちのままそう言い放った。
「リネットは前妻の子供。捨てるつもりでそちらに嫁がせたのです。
でなければかわいい子供を下等なデュプレクス家にやるわけないでしょ」
そんな⋯⋯リネットが夫人の子ではない?ーー
それに捨てた?
「このワタクシがようやく見つけたリネットにお似合いの嫁ぎ先ですもの。わびしくて、おまけに第二夫人。
いまさら返すと言われても困りますから、そちらで下女でもなんにでもして使ってちょうだい!」
じゃあリネットをいくら愛でたところでロイクの出世も爵位の昇格もないーー
私は何のためにこんな遠くまでやってきたというの。
何か手はないのか?
このままリネットを置いておいてもただの置き物。
何か息子を出世させる手はないの?
別の公爵家に王家の姫様。良家の娘はまだいる。
そうだそれだ。
そうなってくるとリネットも邪魔ね。
“下女でもなんでも使ってちょうだい”
そうだ。下女として置いておけばいいんだ。
リネットもライラも。
私は急ぎ屋敷に戻って、一目散にリネットの部屋の前に行ってドアをノックする。
「リネットさん。そろそろ部屋から出てこない? あなたにもそろそろ働いてもらわないと困るの。
ねぇ出てきて、明日から下女としてこの屋敷で働きなさい!お家になんの利益をもたらさない。
穀潰しが!早く出てこいッ!」
『ぎゃあぎゃあうるさいですよ。お義母様』
「ライラッ! どこから現れて⋯⋯」
次の瞬間、バシッという音と一緒に痛みが走る。
叩いた? この娘、私を叩いた!
最近、2人の嫁が仲良くしているのが気に入らない。
下等なシャノン家の娘の分際で、リネットさんに取り入るなんて虫唾が走る。
なにより私を蔑ろにしているのが許せない。
毎日、リネットさんの部屋に出入りしては談笑する声が響いてくる。
リネットさんが部屋にこもってからしばらくが経つ。
最初はライラの妊娠を知ってショックのあまり塞ぎ込んでいるとばかり思っていたが、
リネットさんとの面会が許されているのはお付きのメイドとライラだけ。
非常に面白くない。
このままではライラにデカい顔をされる。
何か手はないかと考えて、ペンを手に取った。
リネットさんの体調不良を逆手に取って、“懐妊”の兆候ありとの手紙をラガルド家に送るのだ。
たとえ妊娠が間違いだったとしても兆候は外れるもの。私のウソにはならない。
この手紙でラガルド家の興味を惹き、本当に子ができればお家の繋がりはさらに強固なものになる。
走り出したペンは止まらない。
私には妹がいる。
妹は姉の私を差し置いて先に結婚。しかも当時、近隣で最も影響力を持っていた侯爵家に嫁いだのだ。
その時の両親のはしゃぎぶりは今でも忘れられない。
当の私はというと妹に遅れること1年。ようやくデュプレクス子爵家に嫁ぐことが決まった。
だけど、両親からは妹の時ほどの喜びを感じられなかった。
「結局、手を挙げたのはデュプレクス家だけだったか⋯⋯」
「メリンダの魅力じゃ、子爵家が精一杯なのね」
「公爵家や王家を期待していたが残念だ」
両親のがっかりした顔を見て、悔しくて、悔しくて。
両親と妹を見返してやろうとデュプレクス家を盛り立ててきたが伯爵家にするのが限界だった。
家族への復讐をあきらめかけていたとき、ラガルド家から息子への縁談が舞い込んできたときは飛び上がらんばかりに嬉しかった。
息子のロイクにはすでにライラがいたが、こんな千載一遇のチャンスはそうはない。
だから私は快くこの縁談を受け入れた。
ラガルド家の血をひく子がデュプレクス家に生まれれば、デュプレクス家は侯爵家に、そしてロイクの官職の位も上がり
妹が嫁いだ家など私が吹けば飛んでしまう。
両親にも思い知らせるんだ。正解だったのはメリンダの方だと。
リネット“懐妊”の手紙をラガルド家に送って1週間が経過した。
だが反応はいまだにない。
「おかしい。娘の懐妊を知れば、内務卿とまで行かなくても使者のひとり、ふたりはよこすはず」
痺れを切らした私は王都にあるラガルド家の屋敷にやってきた。
馬車で3日はかかる旅路。
たどり着くとそこで思わぬ反応が返ってきた。
「リネットのことなど知りません!」
門前でレオン・ラガルド夫人は腕を組み仁王立ちのままそう言い放った。
「リネットは前妻の子供。捨てるつもりでそちらに嫁がせたのです。
でなければかわいい子供を下等なデュプレクス家にやるわけないでしょ」
そんな⋯⋯リネットが夫人の子ではない?ーー
それに捨てた?
「このワタクシがようやく見つけたリネットにお似合いの嫁ぎ先ですもの。わびしくて、おまけに第二夫人。
いまさら返すと言われても困りますから、そちらで下女でもなんにでもして使ってちょうだい!」
じゃあリネットをいくら愛でたところでロイクの出世も爵位の昇格もないーー
私は何のためにこんな遠くまでやってきたというの。
何か手はないのか?
このままリネットを置いておいてもただの置き物。
何か息子を出世させる手はないの?
別の公爵家に王家の姫様。良家の娘はまだいる。
そうだそれだ。
そうなってくるとリネットも邪魔ね。
“下女でもなんでも使ってちょうだい”
そうだ。下女として置いておけばいいんだ。
リネットもライラも。
私は急ぎ屋敷に戻って、一目散にリネットの部屋の前に行ってドアをノックする。
「リネットさん。そろそろ部屋から出てこない? あなたにもそろそろ働いてもらわないと困るの。
ねぇ出てきて、明日から下女としてこの屋敷で働きなさい!お家になんの利益をもたらさない。
穀潰しが!早く出てこいッ!」
『ぎゃあぎゃあうるさいですよ。お義母様』
「ライラッ! どこから現れて⋯⋯」
次の瞬間、バシッという音と一緒に痛みが走る。
叩いた? この娘、私を叩いた!
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