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街の中のとみぃ
24話。掃討戦
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それからアイリスと国王様たちとの話の内容を聞かせてもらった。
まず、悪魔が現れたのは昨日の夕方のことだったらしい。
街壁の上を巡回していた兵士がたまたま早期に発見、すぐに報告して避難が行われたそうだ。
早期発見出来たおかげで、街への被害は大きかったが、伯爵級の悪魔に襲われたにしては人的被害は驚く程に少なく済んだようだ。
それも女神像の発する聖なる力と、俺たちがあのタイミングで到着したからだと深く感謝されたそうだ。
女神像の力で守られていたのか……本物は少し頼りない気もするが、やはり力はある凄まじいのだろう。
「というわけで、現在は明日から行われる魔物討伐部隊の編成をしているそうですわ」
「そっか、わかった。ありがとう。乗りかかった船だし、明日の魔物討伐は俺も出るよ」
「もちろんわたくしも出ますわ! 『デーモンバスターズ』初出動ですわ!」
アイリスのテンションは最高潮で、今にも駆け出してしまいそうだ。
「明日だからね? アイリスも今日はたくさん戦って疲れてるでしょ?無理はいけない」
「それ、うちのリーダーにも聞かせてやりたいですわね」
「無理はしてないんだけどなぁ……」
倒れたのも無理をしたからじゃなくて女神様に呼び出されたからだし。
「夕食を運ばせますわ。今日は夕食を食べてゆっくり休んでくださいな」
「そうだね。そうさせてもらおうかな」
もう日は完全に落ちている。
こんな時間から出来ることは何も無いので、お言葉に甘えてそうさせてもらうことにした。
◇◆
翌日、久しぶりにベッドで寝たことで疲れも取れてスッキリ爽快で目覚めると、すぐに朝食が運ばれてきた。
昨日の夕食でも思ったのだが、悪魔や魔物に襲われたにしては豪華な食事が用意されるな……
ちょっと心苦しい。
「失礼しますわ!」
きちんといただきますをしてお行儀よく食べていると、お行儀悪く扉をバンと開いてアイリスが入ってきた。
貴女貴族令嬢なんでしょ? ノックくらいしなさいよ。それ、ほんとに失礼だよ?
「おはようアイリス」
「おはようトミー。今日の予定を説明しますわ」
俺がジト目で見ていることを気にも留めず、アイリスは予定を話し始めた。
「今日の魔物討伐戦に参加することは既に伝えてありますわ。わたくしとトミーは街の西側を担当して欲しいと言われていますの」
「西側ね。俺たちに行って欲しいってことはそこに魔物が集中してるのかな?」
ちなみに今俺たちが居る教会……聖堂? は街の中に東側にある。
つまり街の反対側だね。
「おそらくそうかと。国王陛下のお話では、悪魔は魔物を引き連れて西側から攻めてきたそうですわ」
「なるほどね。南側は俺たちが昨日だいぶ倒したし、数も少なそうだよね」
「ええ。なので北側には冒険者を、そしてこの街の兵士が南側を見回ってその後北側に合流するそうですわ」
俺たちは二人で西側を担当するわけね。
オーケー、下手に知らない人と一緒に戦うとか巻き込む気しかしないからその方がありがたい。
「了解、早速出る?」
「わたくしは何時でも。トミー待ちですわ」
ふむ、確かにアイリスはいつもの乗馬服っぽい服を着ていて、腰にはロングソードを提げている。
そういえば鎧とか身に付けないのかな?
「軽鎧があれば身に付けますが、今はありませんの」
「相変わらず心の声に返事するよね……ご馳走様」
話ながら食事を終えたので食器を脇に寄せて立ち上がる。
急いで準備をと思ったが、今の俺の格好は作業用シャツにズボン、スリッパである。
あとは上着を羽織って安全靴を履けば準備完了だ。
「わたくしが言うのもアレですけれど、相変わらず軽装ですわね」
「今更。アイリスも相変わらずだよね」
乗馬服に剣だけの格好に言われても困る。
「さぁ! 『デーモンバスターズ』出陣ですわ!」
「テンションも相変わらずなんだ」
俺が準備を終えたのを見届けてから、アイリスが高らかに宣言する。
バトルジャンキーみたいでちょっと怖い。
国王様と神官長に挨拶しようかとも思ったが、既にアイリスが済ませたらしいのでそのまま出発する。
どれだけ待ち遠しかったのだろうか?
「居ますわね」
「たくさんだね」
聖堂を出発してしばらく、昨日悪魔と戦った中央広場を抜けて街の西側に到着するとそこにはたくさんの魔物が蠢いていた。
「ここはわたくしの魔法で……」
「ちょっと待って」
攻撃魔法を発動しようと魔力を練り上げるアイリスにストップをかけた。
「なんですの?」
「せっかくだから光属性使ってみれば?」
女神様の加護で使えるようになったとはいえ、使いこなすには訓練が必要だろう。
そして、実践に勝る訓練はない。
「そうですわね。でも、光属性の攻撃魔法ってどんなものがあるのかわかりませんわ」
「聖拳突き使ってみます?」
「それは結構ですわ」
「なんで?」
「わたくし、淑女ですの。淑女が拳を振り上げて敵に突撃なんて……はしたないですわ」
え? 今更?
「まぁ物は試しとも言いますし、とりあえずやってみますわ」
固まっている俺を無視してアイリスは再度魔力を練り上げる。
練り上げた魔力を光属性へと変換して、前に向けて翳した右手から極太の光のレーザーを放った。
「なるほど、わかってきましたわ」
「もう? 早くない?」
今のが初光属性でしょ?
「一度使えば大まかにはわかりますわ」
アイリスは右手に魔力を集中、光属性に変換して上空へと放った。
「【シャイニングレイン】」
放たれた光の塊は上空で拡散。
雨のように降り注ぎ、一撃で数十の魔物をモヤへと変えた。
「え?」
「とても使いやすいですわ」
それからアイリスは光の矢を放ってみたり、光の波でまとめて魔物を消し去ったり、光の翼を出して浮いてみたりとやりたい放題だった。
明らかに俺より上手く使いこなしている。
これ、俺要らなくね?
まず、悪魔が現れたのは昨日の夕方のことだったらしい。
街壁の上を巡回していた兵士がたまたま早期に発見、すぐに報告して避難が行われたそうだ。
早期発見出来たおかげで、街への被害は大きかったが、伯爵級の悪魔に襲われたにしては人的被害は驚く程に少なく済んだようだ。
それも女神像の発する聖なる力と、俺たちがあのタイミングで到着したからだと深く感謝されたそうだ。
女神像の力で守られていたのか……本物は少し頼りない気もするが、やはり力はある凄まじいのだろう。
「というわけで、現在は明日から行われる魔物討伐部隊の編成をしているそうですわ」
「そっか、わかった。ありがとう。乗りかかった船だし、明日の魔物討伐は俺も出るよ」
「もちろんわたくしも出ますわ! 『デーモンバスターズ』初出動ですわ!」
アイリスのテンションは最高潮で、今にも駆け出してしまいそうだ。
「明日だからね? アイリスも今日はたくさん戦って疲れてるでしょ?無理はいけない」
「それ、うちのリーダーにも聞かせてやりたいですわね」
「無理はしてないんだけどなぁ……」
倒れたのも無理をしたからじゃなくて女神様に呼び出されたからだし。
「夕食を運ばせますわ。今日は夕食を食べてゆっくり休んでくださいな」
「そうだね。そうさせてもらおうかな」
もう日は完全に落ちている。
こんな時間から出来ることは何も無いので、お言葉に甘えてそうさせてもらうことにした。
◇◆
翌日、久しぶりにベッドで寝たことで疲れも取れてスッキリ爽快で目覚めると、すぐに朝食が運ばれてきた。
昨日の夕食でも思ったのだが、悪魔や魔物に襲われたにしては豪華な食事が用意されるな……
ちょっと心苦しい。
「失礼しますわ!」
きちんといただきますをしてお行儀よく食べていると、お行儀悪く扉をバンと開いてアイリスが入ってきた。
貴女貴族令嬢なんでしょ? ノックくらいしなさいよ。それ、ほんとに失礼だよ?
「おはようアイリス」
「おはようトミー。今日の予定を説明しますわ」
俺がジト目で見ていることを気にも留めず、アイリスは予定を話し始めた。
「今日の魔物討伐戦に参加することは既に伝えてありますわ。わたくしとトミーは街の西側を担当して欲しいと言われていますの」
「西側ね。俺たちに行って欲しいってことはそこに魔物が集中してるのかな?」
ちなみに今俺たちが居る教会……聖堂? は街の中に東側にある。
つまり街の反対側だね。
「おそらくそうかと。国王陛下のお話では、悪魔は魔物を引き連れて西側から攻めてきたそうですわ」
「なるほどね。南側は俺たちが昨日だいぶ倒したし、数も少なそうだよね」
「ええ。なので北側には冒険者を、そしてこの街の兵士が南側を見回ってその後北側に合流するそうですわ」
俺たちは二人で西側を担当するわけね。
オーケー、下手に知らない人と一緒に戦うとか巻き込む気しかしないからその方がありがたい。
「了解、早速出る?」
「わたくしは何時でも。トミー待ちですわ」
ふむ、確かにアイリスはいつもの乗馬服っぽい服を着ていて、腰にはロングソードを提げている。
そういえば鎧とか身に付けないのかな?
「軽鎧があれば身に付けますが、今はありませんの」
「相変わらず心の声に返事するよね……ご馳走様」
話ながら食事を終えたので食器を脇に寄せて立ち上がる。
急いで準備をと思ったが、今の俺の格好は作業用シャツにズボン、スリッパである。
あとは上着を羽織って安全靴を履けば準備完了だ。
「わたくしが言うのもアレですけれど、相変わらず軽装ですわね」
「今更。アイリスも相変わらずだよね」
乗馬服に剣だけの格好に言われても困る。
「さぁ! 『デーモンバスターズ』出陣ですわ!」
「テンションも相変わらずなんだ」
俺が準備を終えたのを見届けてから、アイリスが高らかに宣言する。
バトルジャンキーみたいでちょっと怖い。
国王様と神官長に挨拶しようかとも思ったが、既にアイリスが済ませたらしいのでそのまま出発する。
どれだけ待ち遠しかったのだろうか?
「居ますわね」
「たくさんだね」
聖堂を出発してしばらく、昨日悪魔と戦った中央広場を抜けて街の西側に到着するとそこにはたくさんの魔物が蠢いていた。
「ここはわたくしの魔法で……」
「ちょっと待って」
攻撃魔法を発動しようと魔力を練り上げるアイリスにストップをかけた。
「なんですの?」
「せっかくだから光属性使ってみれば?」
女神様の加護で使えるようになったとはいえ、使いこなすには訓練が必要だろう。
そして、実践に勝る訓練はない。
「そうですわね。でも、光属性の攻撃魔法ってどんなものがあるのかわかりませんわ」
「聖拳突き使ってみます?」
「それは結構ですわ」
「なんで?」
「わたくし、淑女ですの。淑女が拳を振り上げて敵に突撃なんて……はしたないですわ」
え? 今更?
「まぁ物は試しとも言いますし、とりあえずやってみますわ」
固まっている俺を無視してアイリスは再度魔力を練り上げる。
練り上げた魔力を光属性へと変換して、前に向けて翳した右手から極太の光のレーザーを放った。
「なるほど、わかってきましたわ」
「もう? 早くない?」
今のが初光属性でしょ?
「一度使えば大まかにはわかりますわ」
アイリスは右手に魔力を集中、光属性に変換して上空へと放った。
「【シャイニングレイン】」
放たれた光の塊は上空で拡散。
雨のように降り注ぎ、一撃で数十の魔物をモヤへと変えた。
「え?」
「とても使いやすいですわ」
それからアイリスは光の矢を放ってみたり、光の波でまとめて魔物を消し去ったり、光の翼を出して浮いてみたりとやりたい放題だった。
明らかに俺より上手く使いこなしている。
これ、俺要らなくね?
応援ありがとうございます!
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