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旅するとみぃ
35話。トラック運転手ですが、ちょっとだけ真面目に考えてみました
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「おはようございますわトミー! 出発の朝ですわ!」
「おはざますッ!」
翌朝、日も登り始めたのでそろそろ起きようかと布団の中でモゾモゾしていると、最近毎朝恒例のようになっているアイリスの突撃で驚いて目が覚めた。
「まだ寝てましたの? 早く朝食を食べて出発しますわよ?」
「早くない?」
まだ朝も早い。スマホを見てみると、まだ朝7時前だった。
「このままここに居ると何だか嫌な予感がビンビンですわ」
「ビンビンとか言わないの。なにそれ、予知能力にでも目覚めたの?」
ビンビンはやめて欲しい。今まさにビンビンだから。
寝起きだから仕方ないのだ。
「予知能力なんかではありませんわ。ただ、このままこの城に滞在すればトミーがあの泥棒猫に篭絡される夢を見ましたわ」
「それ予知能力じゃん」
朝から何を言っているのやら……
「予知ではありません。女の勘ですわ!」
「女の勘て……」
「トミーって女性に対する免疫が無さそうなんですもの」
「ごめんて」
それは事実でしかないので反論の余地は無い。
ただ、俺は自分がモテないおっさんだってちゃんと自覚してるから、篭絡されるなんてことはない……と……思う……よ?
「わたくしの好意には気付かない癖に……」
「なんて?」
ボソッと言うのはやめて欲しい。
完全に覚醒していればちゃんと聞き取れるのだが、寝起きは38歳相当の視力と聴力しかないのだ。
小声だとちゃんと聞き取れない。
寝起き上半身はおっさんで、下半身は若者とかバランスが悪すぎる。
女神様には是非とも調整をお願いします。
「なんでもありませんわ! それより、さっさと朝食を食べて出発しますわよ!」
「もうちょっとだけ待って……」
俺が布団から出られるようになるまでの間にアイリスは朝食の配膳をお願いしてくれたようで、立ち上がると同時に朝食が運ばれてきた。
「それで、ここの次はなんてところなの?」
ふわふわのパンをちぎり、バターを付けて頬張る。
右手に持った箸で半熟に焼かれた目玉焼きを切り分けながらアイリスに質問すると、アイリスはガン見していた目玉焼きから視線を俺の顔に戻して答えてくれる。
「次は『サドア』ですが、セドカンとサドアは徒歩でも半日の距離ですわ。ばいくで移動するのなら今日中にはエフリの南の国、『セターン』まで行けると思いますわ」
「そのセターンからエフリまでは?」
「徒歩一日半くらいですわ」
徒歩とバイクが入り交じるからイマイチ分かりづらいな。まぁ車やバイクの存在しない世界で一度乗っただけのバイクを基準には出来なくても仕方ないか。
しかし俺以前にもかなりの数の転生者が居るっぽいんだけど、車とかバイクが開発されてないのはなんだか不思議。
山田太郎氏は学生だったっぽいし、異世界転生平均年齢は俺が思っていたより若いのかもしれない。
料理に関しては、こんな食材をこんな風に……的な説明が出来ればこの世界の料理人が試行錯誤して完成させることは出来るだろう。
しかし機械は無理だろうね。
余程の知識持ちか、技術者が絶対に造るという意志を持って行動しなければ造られることは無いだろう。
例外は俺みたいに【物質創造】を使った魔力のゴリ押しだけど、これにたどり着く人もなかなか居ないと思う。
俺が思い至ったのも聖竜さんにギャフンと言わせるために考えに考え抜いた結果だし。
そもそもトラック創ってぶつけるとか非人道的すぎてドン引き案件である。
これを思いついた時の俺は追い詰められていたに違いない。
そんなことを考えていると、少し険のある声が聞こえてきた。
「どこ見てますの?」
「へ?」
当然アイリスの声だ。
声に反応してアイリスの顔を見ると、少し頬を赤く染めながら胸元を抑えて俺を睨みつけていた。
「わ……わたくしの胸をじっと見て、なにを考えていたんですの?」
しまった、そんなつもりは毛頭無かったのだが、おじさん専用マイナススキルである【無自覚型セクハラ】が発動していたようだ。
これはいかん。平謝り以外の選択肢は存在しない。
「ごめんなさい」
「わ……わたくしはファミマト王国公爵令嬢にして王太子殿下の元婚約者、殿方から魅力的な女性に見られるよう努力はしてきましたわ! なので……み、見るなとは申しませんが、せめてもう少しバレないようにと言いますか、なんと言いますか……」
おー、テンパってるテンパってる。
けどごめんね、マジでそんな気は無かったの。考え事してただけなの。
伝えてあげたいけど、今それ言っても言い訳にしかならないから言えないんだけどね。
「と、とにかく! 見たいのならバレないようこっそり見るか、せめて許可をとってくださいまし!」
「頼んだら見てもいいの?」
「……トミーなら」
今回はちゃんと聞こえた。
いいんだ……俺なら別にいいんだ……そっか……
「話は以上ですわ! わたくしは部屋におりますので、食事を終えたら呼びに来てくださいませ!」
割と衝撃的なことを聞いて、俺のおめめがバタフライをしているうちにアイリスは立ち上がり、部屋を出ていってしまった。
「あー……うん、よし、聞かなかったことにしよう!」
そう心に決めて、とりあえず朝食を終わらせるために手を動かすのだった。
「おはざますッ!」
翌朝、日も登り始めたのでそろそろ起きようかと布団の中でモゾモゾしていると、最近毎朝恒例のようになっているアイリスの突撃で驚いて目が覚めた。
「まだ寝てましたの? 早く朝食を食べて出発しますわよ?」
「早くない?」
まだ朝も早い。スマホを見てみると、まだ朝7時前だった。
「このままここに居ると何だか嫌な予感がビンビンですわ」
「ビンビンとか言わないの。なにそれ、予知能力にでも目覚めたの?」
ビンビンはやめて欲しい。今まさにビンビンだから。
寝起きだから仕方ないのだ。
「予知能力なんかではありませんわ。ただ、このままこの城に滞在すればトミーがあの泥棒猫に篭絡される夢を見ましたわ」
「それ予知能力じゃん」
朝から何を言っているのやら……
「予知ではありません。女の勘ですわ!」
「女の勘て……」
「トミーって女性に対する免疫が無さそうなんですもの」
「ごめんて」
それは事実でしかないので反論の余地は無い。
ただ、俺は自分がモテないおっさんだってちゃんと自覚してるから、篭絡されるなんてことはない……と……思う……よ?
「わたくしの好意には気付かない癖に……」
「なんて?」
ボソッと言うのはやめて欲しい。
完全に覚醒していればちゃんと聞き取れるのだが、寝起きは38歳相当の視力と聴力しかないのだ。
小声だとちゃんと聞き取れない。
寝起き上半身はおっさんで、下半身は若者とかバランスが悪すぎる。
女神様には是非とも調整をお願いします。
「なんでもありませんわ! それより、さっさと朝食を食べて出発しますわよ!」
「もうちょっとだけ待って……」
俺が布団から出られるようになるまでの間にアイリスは朝食の配膳をお願いしてくれたようで、立ち上がると同時に朝食が運ばれてきた。
「それで、ここの次はなんてところなの?」
ふわふわのパンをちぎり、バターを付けて頬張る。
右手に持った箸で半熟に焼かれた目玉焼きを切り分けながらアイリスに質問すると、アイリスはガン見していた目玉焼きから視線を俺の顔に戻して答えてくれる。
「次は『サドア』ですが、セドカンとサドアは徒歩でも半日の距離ですわ。ばいくで移動するのなら今日中にはエフリの南の国、『セターン』まで行けると思いますわ」
「そのセターンからエフリまでは?」
「徒歩一日半くらいですわ」
徒歩とバイクが入り交じるからイマイチ分かりづらいな。まぁ車やバイクの存在しない世界で一度乗っただけのバイクを基準には出来なくても仕方ないか。
しかし俺以前にもかなりの数の転生者が居るっぽいんだけど、車とかバイクが開発されてないのはなんだか不思議。
山田太郎氏は学生だったっぽいし、異世界転生平均年齢は俺が思っていたより若いのかもしれない。
料理に関しては、こんな食材をこんな風に……的な説明が出来ればこの世界の料理人が試行錯誤して完成させることは出来るだろう。
しかし機械は無理だろうね。
余程の知識持ちか、技術者が絶対に造るという意志を持って行動しなければ造られることは無いだろう。
例外は俺みたいに【物質創造】を使った魔力のゴリ押しだけど、これにたどり着く人もなかなか居ないと思う。
俺が思い至ったのも聖竜さんにギャフンと言わせるために考えに考え抜いた結果だし。
そもそもトラック創ってぶつけるとか非人道的すぎてドン引き案件である。
これを思いついた時の俺は追い詰められていたに違いない。
そんなことを考えていると、少し険のある声が聞こえてきた。
「どこ見てますの?」
「へ?」
当然アイリスの声だ。
声に反応してアイリスの顔を見ると、少し頬を赤く染めながら胸元を抑えて俺を睨みつけていた。
「わ……わたくしの胸をじっと見て、なにを考えていたんですの?」
しまった、そんなつもりは毛頭無かったのだが、おじさん専用マイナススキルである【無自覚型セクハラ】が発動していたようだ。
これはいかん。平謝り以外の選択肢は存在しない。
「ごめんなさい」
「わ……わたくしはファミマト王国公爵令嬢にして王太子殿下の元婚約者、殿方から魅力的な女性に見られるよう努力はしてきましたわ! なので……み、見るなとは申しませんが、せめてもう少しバレないようにと言いますか、なんと言いますか……」
おー、テンパってるテンパってる。
けどごめんね、マジでそんな気は無かったの。考え事してただけなの。
伝えてあげたいけど、今それ言っても言い訳にしかならないから言えないんだけどね。
「と、とにかく! 見たいのならバレないようこっそり見るか、せめて許可をとってくださいまし!」
「頼んだら見てもいいの?」
「……トミーなら」
今回はちゃんと聞こえた。
いいんだ……俺なら別にいいんだ……そっか……
「話は以上ですわ! わたくしは部屋におりますので、食事を終えたら呼びに来てくださいませ!」
割と衝撃的なことを聞いて、俺のおめめがバタフライをしているうちにアイリスは立ち上がり、部屋を出ていってしまった。
「あー……うん、よし、聞かなかったことにしよう!」
そう心に決めて、とりあえず朝食を終わらせるために手を動かすのだった。
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