異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)

愛飢男

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第1章……王国編

15話……激突ゴブリン軍

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『マスター!  増援来ます!』

 ウルトの叫びのような声で血塗れの作業着から顔を上げると森から大量のゴブリンが出てくるのが見えた。
 今度のゴブリンは木の棒だけではなく棒の先に尖った石を取り付けた簡易的な槍や斧のようなものを持っている個体もいる。

 ……あれくらいなら痛くないかな?

 振り返って見てみると仲間との距離もある。とりあえず一人で戦ってみよう。

 森から飛び出してきたゴブリンの集団の先頭はもう目と鼻の先、踏み込んで先頭のゴブリンの首を飛ばす。

 突き出された槍を首を傾けて回避、体を捻って剣を突き出して槍持ちのゴブリンの胸を貫く。

 続々と襲いかかってくるゴブリンの攻撃を「見て」回避。攻撃を空振りして隙だらけのゴブリンを一撃で仕留めていく。

 剣を横に振るって首を飛ばす……違う。
 目の前のゴブリンを袈裟斬りに斬り裂く……違う。
 後ろから襲いかかってくるゴブリンを逆袈裟に斬りあげる……違う。

 一振りごとに違うという言葉が頭を埋め尽くす。
 もっと早く、もっと鋭く、もっと正確に。

 一振りすると間違いを見つけ次の一振りで修正。
 何度も何度も繰り返して頭の中の正解に近付けていく。

 そんな作業をしているとふと視界が開けた。周りに立っているゴブリンは居ない。

「あら?」

 夢中になり過ぎたか……背後の死体の山を眺めながらそんなことを考えていると、森の中からガサリと音がした。

 まだ……居たね?

 森に向かって剣を構える。
 音のした方に視線をやりながら気配を探ると、2匹のゴブリン……いやこれは2匹じゃなくて2体だな……

 今まで戦っていたゴブリンより大きい、俺と同じくらいの身長のゴブリンが2体現れた。

「デカイな……でも関係無い!」

 まずは先制――
 前に出ている大きいゴブリンに向け駆け出す。

「グォォオ!」

 大きいゴブリン……大ゴブリンは雄叫びを上げながら右ストレートを放ってきた。

 速い!

 今までのゴブリンとは違い速い打撃、でも見えてる。

 体を捻って拳を回避、そのまま一回転して伸びきった右腕を断ち切る。

「ガァァアア!!」

 右腕を失いタタラを踏む大ゴブリン……隙だらけだ。

 肩と肘を上手く使って振り上げた剣の勢いを反対向きに……そのまま横に剣を払って大ゴブリンの首を斬り飛ばした。

 まだもう1体……

 首を斬り飛ばした大ゴブリンが倒れるのを待たずもう1体へ駆け出す。

 先程の戦いを見ていたのかこちらの大ゴブリンは簡単に手を出して来ない……腰を落としてこちらの様子を伺っている。

 なら……!

 剣を振り上げて一気に踏み込む。
 大ゴブリンは腕を交差させて首を守る構えだ。

 俺はそのまま左にステップ、がら空きの胴体に向けて剣を振り下ろした。
 刃はなんの抵抗も無く大ゴブリンを通過、真っ二つに斬り裂いた。

「ふぅ……」

 どこから襲いかかられても大丈夫なよう腰を落として周囲を警戒……動くものの気配は無さそうだ。

 サーシャたちの方を振り返ると、慌てたようにこちらに走ってくる姿が見えた。

 ……思ったより離れてたんだな。

 一番最初にソフィアが俺のところにたどり着いて声をかけてきた。


「クリード殿!  お怪我は!?  まさかホブゴブリンが現れるとは……」

 ソフィアは慌てたように俺の体を確認するが当然俺は怪我なんてしていない。
 血塗れではあるが全て返り血だ。

「クリード様!  だ、大丈夫ですか!?」
「平気ッスか!?」

 サーシャとアンナもやって来て同じようなことを聞いてくる。

「あぁ、大丈夫だよ。一発も攻撃受けてないよ」

 剣を鞘に収め両手を上げて大丈夫アピール。

「本当ですか?  これだけの数、さらにホブゴブリンまで相手にして無傷だなんて……」

 ホブゴブリン?  ファンタジー小説でよく見るゴブリンの上位種かな?
 あのでかいのがホブゴブリンってことか……

「と、とにかく浄化しますね!  ちょっと動かないでください!」

 そう言ってからサーシャは俺に向けて両手を向けてきた。
 するとサーシャの手から光の玉が発射されて俺に直撃、一瞬俺の全身が光ったと思えばすぐに光は消えてしまった。

 体を確認すると、先程までゴブリンの青黒い血に濡れていたのが嘘のように綺麗になっていた。
 これが浄化の魔法か……

「はい、これで綺麗になりました!  あの、ほんとに怪我してません?」
「してないよ。アイツらの攻撃は全部見えてたから避けるのは難しくなかったよ」
「え?  ど、どういうことですかクリード殿!」
「ちょ、どういうことッスか!?」

 なんかソフィアとアンナがえげつない食いつき見せてきてるけど……昨日今日の戦い見てたら君らも出来る……よね?

「え……言葉の通りなんだけど……いや、2人も見えてるし余裕で躱してたじゃん」

 何言ってんの?  くらいの気持ちで話していたがどうやら違うらしい。
 ソフィアとアンナは大きく首を横に振っている。

「いえ、確かに数匹程度が相手なら同じことは出来ます。しかし……」
「あの数は無理ッス!  100近いゴブリン、さらにホブゴブリンまで相手にあんなこと出来るわけ無いッス!」
「そ、そうなの?」

 あまりの剣幕に一歩引いてしまう。
 サーシャは喜んだらいいのか怒ったらいいのか分からない顔をしているし、どうしたもんかな?

 さてどうしようかと悩んでいると、ドスンと大きな音が響いてきた。
 何事かとそちらに目を向けるとウルトが数匹のウルフを撥ね飛ばしているところだった。

 血の臭いに釣られて来たのかな、なんにせよウルトが対応してくれて助かった。

 じゃあリンは?  と思いリンの姿を探すと、ゴブリンの死体の山のところにいた。
 何してるんだろ?

「なぁ、リンは何してるんだ?  やけに難しそうな顔してるけど」
「え?  ここからリンさんの表情まで見えるんスか?」
「普通に見えるけど……もしかしてこれ異世界召喚の影響かな……」

 普通に見えたので意識しなかったがよく考えたら200メートルくらい離れてるこの距離で表情まで見えるのはおかしいよな……

「なにか考えているようですね。行ってみましょう」

 ソフィアが歩き始めたので3人で後に続く。
 近寄ってみるとリンはゴブリンの持っていた槍や斧を見ているようだった。

「リンさん、どうかしましたか?」
「サーシャちゃんこれ……ゴブリンが石斧と石槍を使ってたみたいなんだけど……」

 そういえば持ってたな……木の棒よりは脅威だったけどどうせノーダメージだろと思ってスルーしてた。

「上位種のホブゴブリンも居ましたし、そんなにおかしい事でしょうか?」
「ホブゴブリンが1匹だけならね。石の武器を持ったゴブリンにホブゴブリンが複数……これはもしかしたら……」

 リンは真剣な表情で一度言葉を切った。

「ゴブリンキングが現れたかもしれない」

 サーシャたちは口をつぐみ誰も声を出さない。
 そこにはウルトがウルフを撥ね飛ばす音だけが響いていた――
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