異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)

愛飢男

文字の大きさ
65 / 266
第3章……迷宮攻略編

60話……王都観光

しおりを挟む
 ケイトと2人で露店の立ち並ぶ区画へとやってきた。

「とりあえず適当に買い物しながら店主や客に勇者のことを聞けばいいのかな?」
「そうだね。クリードくんは自分も勇者だって明かしちゃダメだよ?」
「それくらい分かってるよ……」

 ケイトは「ホントに?」と聞きながらクスクス笑っている。
 完全にからかわれてるな……

 なんだか楽しそうなケイトに釣られ俺も楽しい気持ちになりながら色々な店を回って買い物をしたり話を聞いたりするが勇者の情報はあまり出回っていないようで情報収集は中々困難を極めた。

 2時間ほど店を周り分かったことは「勇者は訓練中、まだお披露目もされていない」という事だった。

 もう召喚されて2週間は経っているのだがまだ城から出てきてないのか?

「これは今以上に情報は集まりそうに無いね」
「そうだな……サーシャたちと合流してもいいけど待ち合わせは夕方だし、まだまだ時間あるな」

 現在時刻は11時、待ち合わせまではかなり時間が空いている。

「とりあえず食品以外のものを見てみる?  リバークでは中々手に入らないものも王都にはありそうだし」 
「それもそうだな……何を見て回る?」
「そうだね、まずは……」

 それから1時間程ケイトの思いつくままに色々な店を見て回った。
 今回は止める人も居ないので気になったものは結構俺も買ってしまっている。

「あ、これ……」

 そろそろ昼でも食べようかと言う時にケイトが何かを見つけたようだ。
 覗いてみるとアクセサリーを取り扱っている店のようだ。

「アクセサリー?  ケイト何か欲しいのか?」

 ケイトは普段アクセサリーは身に付けていない、寧ろ苦手だと移動中に聞いていた。

「僕はあんまり……でもこれなんかサーシャに似合うと思わない?」

 ケイトが指差したのは小さな花を模した飾りの付いた髪留めだった。
 確かにこの髪留めはサーシャに似合いそうだ。

「サーシャにか……お、これはリンにピッタリじゃないか?」

 俺が見つけたのは落ち着いたデザインだがどこか華やかさを感じる髪留め、クールビューティ系のリンによく似合いそうだ。

「クリードくん中々センスあるね、これはどう?  元気娘な感じのするアンナに合うと思わない?」
「じゃあこっちはソフィアに似合うと思うぞ」

 ケイトの選んだのは大きな花の飾りが付いた髪留め、確かにアンナの笑顔に似合いそうだ。
 俺が選んだのは落ち着いた飾りの着いたヘアゴム、いつもポニーテールに髪を括っているソフィアによく似合いそうだ。

「いいね、お土産に買っていこうか」
「そうだね、おっちゃんこれ4つ頂戴」

 選んだ4つの商品を店主に渡して代金を支払う。
 ケイトも出そうとしたがここは俺が出すべきだろう、お金を出そうとするケイトに構わないと告げて支払った。

「ん?」

 その時目に付いたのは青い花の飾りが付いた髪留め、ケイトによく似合いそうだと思った。

「おっちゃんこれも追加でお願い」
「毎度!」

 ケイトにバレないように追加で購入、後でみんなに渡す時に一緒に渡そう。

 買い物ついでに店主からオススメの店を教えてもらい昼食はそこで食べることにした。

 そこは王都でもそこそこ有名な店のようで、冒険者ギルドと提携していて新鮮な肉や野菜をふんだんに使った料理が人気の店だった。

 入店すると俺とケイトの冒険者証を確認されたのでゴールドの証を見せると奥の個室を用意して貰えた。
 店内は結構賑わっていて空き席も無さそうだったのに……
 ゴールドランクすげぇ、実感したね。

 2人で食事を美味しく楽しく頂いて店を出るがまだまだ時間はある、どうしようか……

「まだまだ時間はあるね……どうしようか?」
「うーん……装備品でも見てみる?  剣と鎧は頼んだけど予備の装備も持っておきたいしね」
「なら行ってみようか。ケイトはどんな装備頼んだの?」

 そういえばどんな装備を頼んだのだろう?   聞いてなかったな……

「ケイトはどんな装備たのんだの?」
「僕は剣と鎧だよ。貰ったミスリルも素材として出して作って貰ってるよ。クリードくんやソフィアのライトアーマーとアンナのフルプレートの間くらいかな?」

 俺やソフィアよりは少し防御力高めってことか。
 ソフィアはほぼ攻撃極振りみたいだし、俺は防御面は自身の耐久力と作業着任せだからある意味ケイトはバランス型ってところかな?

 そんな会話をしつつ武器屋に到着、中に入って商品を眺める。

「アレって魔鉄使った剣かな?」
「どれ?  ……あぁ、そうだね。それがどうかしたの?」

 気になっていたけど聞くタイミングを失っていたことをケイトに教えてもらおう。

「魔鉄ってさ、なに?」
「え?  あぁ、魔鉄って言うのは魔鉱石を精錬してできる金属でね、普通の鉄とか鋼より頑丈で耐久力にも優れるし魔力伝導率もいいんだ。クリードくんのスキルに【魔力撃】ってあったよね?  魔力撃と相性のいい素材だよ」

【魔力撃】か、そういえば使ったことないしどんなスキルか知らないな……

「わかってない顔してるね。【魔力撃】っていうのは剣に魔力を流して攻撃力を上昇させるスキルだよ。鋼の剣でもかなり威力上がるけど魔鉄を使った剣ならさらに威力が増すから【魔力撃】を使える剣士はまず魔鉄製の剣を使うね。僕は使えないから鋼の剣で十分だけどね」
「なるほどー……ありがとう」

 ケイトにお礼を言って他の剣にも目を向ける。
 色々な素材を使っていたり形が違っていたり見ていて面白い。

「ミスリルは無いんだな」
「ここら辺に迷宮は無いからね。迷宮が無いとミスリルの産出量は少ないからなかなか出回らないんだ」
「だからリバークの武器屋には売ってたのか」
「うん、あの剣の素材のミスリルは多分僕たちが採掘してきたミスリルだよ」

 そういえばケイトたちはミスリル集めでゴールドランクを目指してたんだよな。
 5階層ではケイトたち以外見てないし流通してたミスリルはほぼケイトたちが集めたものなのか。

「キミたち少しいいかな?」

 そんな会話をしながら剣を眺めていると声をかけられた。
 振り返って見るとそこには白銀の冒険者証を身につけたイケメンが立っている。

 誰だ?

「いきなりすまないね。僕はカルロス、剣士の誇りってパーティの副リーダだよ」

 自己紹介しながら握手を求めてきたので一応こちらも返しておこう。

「いや……ゴールドランクパーティ自由の翼リーダーのクリードだ。何か用かな?」

 握手を交わすとなんだか思ったよりもガッチリと手を掴まれた。

「あれ?」

 カルロスは俺の手をニギニギしながら首を傾げる。

 なんだコノヤロウ喧嘩売ってんのか!?

 微妙な顔をしながらカルロスは俺から手を離してケイトに向き直る。

「カルロスだ、よろしく」
「自由の翼のケイトです。よろしく」

 カルロスはケイトの手を握ると俺の時とは違いウンウン頷く。

「この手、やはり! ケイトはもしや剣闘士では?」
「え……うん、そうだけど……」

 ケイトが答えると、カルロスは笑顔になり両手でケイトの右手を包み込む。

 ……なんかイライラするなこいつ。

「ゴールドランクのパーティなんて抜けてウチに来ないか?  歓迎するよ!」
「え、嫌です」

 ケイトはあっさりと断ってくれた。
 なんだかホッとしました。

「なぜだい?  僕たちは将来的にはミスリルランクにも到れるだろう、その時にはキミを僕の妻として迎えると約束してもいい。僕も剣闘士だからね、きっと僕たちの子供も立派な剣士になれるさ!」
「お断りですね。それに子供を産むとしたら……」

 ケイトはチラッとこちらに目を向けた。
 そろそろ頃合か、割り込もう。

「そろそろ手を離してもらえる?  それにウチのメンバー引き抜こうとするってどういうつもりだ?」

 おぉ、我ながら低い声が出たな……

 カルロスの肩に手を乗せるとカルロスは一歩飛び下がり右手を剣に伸ばそうとして止めた。

 殺気漏れちゃったかな?

「くっ、ゴールドランク程度の雑魚が僕に歯向かうなんて痛い目でも見たいのかい?」

 へぇ?  ランクでマウント取ってくる感じ?
 ならこっちもマウント取りに行くよ?

「はっ!  ゴールド程度ってひとつしか変わらないだろ?  それに俺とケイトはミスリルランク昇格がほぼ内定してるぜ?」

 俺の方が実質ランク上よ?  と鼻で笑ってやるとカルロスは耐えられないという風に笑った。

「ははは!  ゴールドランクのキミがミスリル昇格だって?  そんな嘘をついてまで僕に対抗しようって言うのかい?  笑わせるね、それとも事実だって言うのかい?  事実だと言うのならどんな功績を挙げたか言ってみたまえよ」
「リバーク迷宮の大暴走スタンピードの鎮圧」

 俺がそう答えるとカルロスは目を見開く。やったのはほとんどウルトだけど嘘はついてないよ?

「大暴走?  リバーク迷宮が?  聞いたことないけどね。そこまで言うならケイトを賭けて決闘でもしようじゃないか!」

 カルロスは何を血迷ったのかそんなことを言い出したが答えは決まってる。

「全くもってお断る」
「いいよ」

 やるわけないだろばーかといった雰囲気を出しながら断りの返事を告げたが何故かケイトが了承してしまった。

「ルールは装備品以外の魔道具の使用の禁止、殺し無し、それでいいかな?」
「良いだろう。では僕が勝てばケイトは僕のものだ、それでいいね?」
「いいよ。クリードくんは負けないから」
「ではギルドの訓練所でやろう。着いてきたまえ」

 カルロスはそう言って踵を返して店から出ていく。

 え?  マジでやるの?

「ケイト……」
「ごめん、ちょっと腹立っちゃって……」

 申し訳なさそうに謝られるがもう決まったことは仕方ない。
 俺がカルロスに勝てばいいだけだろ、最悪負けそうになったらウルトでぶっ飛ばしてやんよ。

「はぁ……まぁ仕方ない、行こうか」
「ごめんね……でも僕は剣士の誇りには行きたくないし、あんな奴の子供も産みたくないからね?」

 そういえば子供産むなら……みたいなこと言ってたな。
 誰の子供なら産んでもいいんだろう?

 付き合いの長さからしてディム、クレイ、ロディの誰かかな?
 ハンスはミナとくっつくみたいだから違うだろうし……

 なんか想像したら腹立ってきた、リバークに戻ったら訓練しようぜ!  とか言ってぶっ飛ばしてやろう。

 なんだかモヤモヤしながら俺たちはカルロスについて行く。
しおりを挟む
感想 194

あなたにおすすめの小説

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

『辺境伯一家の領地繁栄記』スキル育成記~最強双子、成長中~

鈴白理人
ファンタジー
ラザナキア王国の国民は【スキルツリー】という女神の加護を持つ。 そんな国の北に住むアクアオッジ辺境伯一家も例外ではなく、父は【掴みスキル】母は【育成スキル】の持ち主。 母のスキルのせいか、一家の子供たちは生まれたころから、派生スキルがポコポコ枝分かれし、スキルレベルもぐんぐん上がっていった。 双子で生まれた末っ子、兄のウィルフレッドの【精霊スキル】、妹のメリルの【魔法スキル】も例外なくレベルアップし、十五歳となった今、学園入学の秒読み段階を迎えていた── 前作→『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

【完結】異世界で魔道具チートでのんびり商売生活

シマセイ
ファンタジー
大学生・誠也は工事現場の穴に落ちて異世界へ。 物体に魔力を付与できるチートスキルを見つけ、 能力を隠しつつ魔道具を作って商業ギルドで商売開始。 のんびりスローライフを目指す毎日が幕を開ける!

処理中です...