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第6章……復讐の勇者編

152話……ことわりはずれ

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 式を終えて晩餐会へと場は移る。

 今回もよめーずに護衛されながら貴族たちからの祝辞を受け取る簡単なお仕事だ。

 ただ結婚式を終えた直後のこの場で自分の妹や娘などを側室に……と言ってくる貴族が居ることに辟易した。

 そういうのは黙っててもよめーずが断ってくれるので有難い。
 というか俺が口を開く前に断るので有難い気持ちと同時に情けない気持ちにもなる。

 もちろん先程の光や神の言葉について聞いてくる人もいるのだがそんなもの俺にも分からないので答えようがない。

 ウルトに聞いてみても『後程ゆっくりと』しか言わないのでさっぱりわからないのだ。

 そんな時間を数時間過ごしてようやく解放、出来たばかりの新クリード邸へと帰ってきた。

「おかえりなさいませ旦那様、奥方様」

 玄関を開くとそこには数名の執事とメイドの姿が……俺雇った記憶ないよ?

「初めまして旦那様、奥方様、私は家令を務めますクリストフと申します。よろしくお願い致します」

 クリストフと名乗った壮年の執事は腰を直角に折り頭を下げる。

「メイド長を任されましたエレーナでございます」
「料理長を務めさせて頂きますベリルと申します」

 それぞれが名乗り綺麗な礼をする。
 え、なにこれ……

「レオ様、頭をあげるようにと」
「みんな頭を上げてください」

 サーシャに促され頭を上げるように言うと全員揃った動作で頭を上げた。
 やだ……怖い……

「クリストフさんはライノス家でも父の補佐をしていましたね。レオ様はお会いしたことが無かったと思います」
「メイド長のエレーナはヒメカワ家でメイド長補佐をしていたわね、うちやライノス家から派遣されたのかしらね」

 どうやらサーシャやリンの家で仕えていた人たちらしい。
 全く知らない人よりかはかなり安心だな。

 使用人たちに案内されて家の中を見て回る。
 ライノス邸よりは少し小さいが想像してたより大きい。
 日本ではトラック運転手でしか無かった俺にはデカすぎる家……屋敷だ。

 一通り案内されて中を見て周り庭の東屋で休憩、メイドの淹れてくれた紅茶を飲む。

「てかソフィアとアンナも座りなよ」
「いえ……」
「しかしッスね……」

 なんとも歯切れが悪い。

「警備面が少々不安です。門番は居ますが中を巡回する兵が居ないのは……」
「だから自分たちが警護するッス!」
「いや……」

 何時まで護衛のつもりでいるの?  いや今でも護衛なのか?

 俺の認識では護衛ではなくよめーずの一員だから家ではのんびりして欲しいものだ。

「警護に関しては【気配察知(極)】もあるし心配しなくていいよ。これ以上屋敷内に人が増えるとその人の気配も覚えないといけないから面倒だ」

 今は使用人の気配を覚えるのに必死だから巡回の兵まで加わるとパンクする。

「それにウルトも監視してくれてるから心配するだけ損だよ。悪意やら敵意も察知しますって豪語してたから」
『お任せ下さい』

 懐から取り出したウルトが喋ったことに使用人たちは驚いている。
 中には驚いていない人もいるのでその人たちはおそらくライノス家から来た人たちだろう。

 今の今まで使用人にウルトを見せなかったのにも当然理由はある。
 敵意や悪意を感知出来ると言うので使用人たちにその気がないか確かめさせていたのだ。

 結果この邸内にいる使用人にそのような気持ちを持った使用人は居ない。
 なので安心してウルトを見せたのだ。

「極秘って訳じゃないけどあまり言いふらさないでね」

 さっきの結婚式であれだけ盛大にやらかしたから口止めに意味は無いだろうがまぁ一応ね。

 かしこまりましたと使用人一同が返事をしたのでこの話はお終い。
 ここからが大切なお話だ。

「それでウルト、神の座って?」
『言葉の通り神の座す地のことです。本来世界に縛られる生物に神と対話することは例外を除いて有り得ません。マスターの持つ【理外ことわりはずれはその数少ない例外に当たります】』

 ほへぇ……

「ちょっと待って、【理外ことわりはずれ】ってなんのこと?」
「レオ様の称号だとは聞きましたが……一体いつ手に入れたのですか?」

 あれ?  言ってなかったかな?

「魔王を倒した時にね……職業【魔王】と一緒に手に入れたというか手に入っちゃったというか……」
「え?」
「レオ様……魔王なのですか?」

 サーシャとリンだけではない、この場にいる全員が目を見開いて言葉を失っている。

『マスターは【魔王】であり【勇者】です。矛盾したふたつの力を持つマスターだからこそ【理外ことわりはずれ】なのです』
「なる……」
「……ほど?」

 分かっているのか分かっていないのか……
 ちなみに俺は分かっていない。

「それでクリ……レオ、魔王からは何のスキルを奪ったの?」
「そういえばなにも奪ってないような……」

 ちゃんと強欲の剣で斬ったはずなんだけど……持ってなかったのかな?

『現在マスターにスキルはありません。なんでも出来ますが何も出来ない、そのようは状態です』
「ん?  どゆこと?」

 なんでも出来てなんにも出来ない?

『はい。この世界の理の外の存在となりましたのでこの世界固有のスキルなどはマスターにはありません』

 無いの!?

「ステータスオープン!」


 ◇◆

 名前……レオ・クリード  Lv-
 職業……トラック運転手
 年齢……21
 生命力……-  魔力……-  筋力………-  素早さ……-
 耐久力……-  魔攻……-  魔防……-

 スキル

 ◇◆

 わぉ……

「これは……」
「綺麗に何もありませんね」

 よめーずもステータスを覗き込んでなにやら話している。

 そうだ、ベラとは共有してなかったな……ベラにも見えるようにしておかないとね。

「あ、あたしにも見えましたわ」

 見えましたわ?

 いつもと口調が違っているが俺のステータスを見て固まってしまい何も言わなくなった。
 まぁスルーでいいかな?

「見えない……」

 そういえば普通に居るから忘れそうだけどまだイリアーナ送り届けてないんだよな。
 別にもう色々知られてるから見せてもいいんだけど一応線引きは必要かな。

「それでなんでも出来てなんにも出来ないってどういうことだ?」
『出来ると思えばなんでも出来ますが出来ないと思ってしまうと何もできません』

 哲学?
 いや言葉通りか……全てを持っているけど意識して使おうとしなければ何も使えないってことかな。

「まぁ【気配察知(極)】は普通に使えてるっぽいし慣れれば問題無さそうだな。それに元々持ってたスキルは意識しやすいし」
『これからはマスターの在り方その物が大切になってきますので』
「はいよ。ところで年齢表示はあるけどこれは普通に歳取って死ぬのか?」

 老衰とか病気とか……

『不老不死で在ろうとするならそうなりますが在ろうとしなければ普通の人間同様歳を取ります』

 超便利じゃん。

 それからいくつかの質問をしたがウルトは全てに答えてくれた。
 うん、これなら何とかなりそうだ。

 イリアーナはずっとチラチラとこちらを見て見せろ、もっと説明しろアピールを続けていたがスルーし続けてやった。

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