異世界勇者のトラック無双。トラック運転手はトラックを得て最強へと至る(トラックが)

愛飢男

文字の大きさ
166 / 266
第6章……復讐の勇者編

157話……帝国へ

しおりを挟む
 ライノス家の前に転移で現れた瞬間、ライノス家の門番が緊張した面持ちで警戒を露にした。

「何者……サーシャお嬢様?」

 門番は慌てて腰の剣に伸ばした手を引っ込め頭を下げる。

「申し訳ありませんでした!  まさかお嬢様だとは思わず……」
「あ、頭を上げてください!  いきなり転移で現れた私たちに非があるのですから!」

 サーシャがあたふたしている。珍しいものが見れた。

「もう!  クリード様!  少しは考えて転移してください!」
「ごめんごめん、次から気をつけるよ」

 呼び方が戻っていることを突っ込むのは野暮だな。

「他に人が居なかったから良かったですが、人がいたらどうするのですか?」
「ちゃんと転移する直前に【傲慢なる者の瞳】で人が居ないのは確認したよ?」

 通行人がいたら危ないからね。

「なんでその気遣いを……もぅいいです。次からは気を付けてくださいね!」
「分かりました、ごめんなさい」

 ちょっと調子に乗りすぎたな、反省しないと。

 サーシャから説教されているうちに門番が連絡したのだろう、屋敷内からメイドが出てきて俺たちをアンドレイさんの下まで案内してくれた。

「おはようございます。お父様、お兄様」
「おはようございます」

 執務室に入ると、アンドレイさんとアンドレイさんの息子でサーシャの兄であるアレクセイが書類を見ながら何かを話していた。

「おや?  おはようレオくん、サーシャ。こんな朝からどうしたんだい?」
「おはようレオ、サーシャ。こんな早くから遊びに来たのかい?」

 アンドレイさんは不思議そうに、アレクセイは嬉しそうに挨拶を返してくる。

「遊びに来たんじゃないんだ、実は帝国に向かうにあたって連絡手段を確保しておこうと思いまして」

 懐からタブレットを取り出して2人に見せる。

「連絡手段?  それにそれは?」
「これは俺の元居た世界の道具です。これがあれば俺の持っている他の道具と繋いで離れた場所に居ても会話が可能になります」

 逆の手でスマホを取り出して見せる。
 2人はスマホとタブレットを見比べて不思議そうな顔をしている。

「では使い方を説明しますね……アレクセイも聞いといてくれ」

 ちなみにアレクセイとは同い年だ。
 結婚式の前に顔合わせをして以来割と仲良くしている。

「まずはここのボタンを押して……」

 簡単にタブレットの使い方を説明する。
 ウルトがらくらくフォン以上に簡単に操作出来るようにしているので分からないということは無いと思いたい。

 何度かタブレットからスマホに向けて電話を掛けてみたり、サーシャが別の部屋に移動して会話してみたりと実演するとすぐに使い方を覚えたようだ。

「これは……とても便利な物だね。レオくんの居た世界ではこんな道具がたくさんあるのかい?」
「そうですね、スマホやタブレットは国民の大半が持ってたんじゃないですかね?  何時でも何処でも家族や知り合いと会話出来て見ている景色を共有出来ていましたね」

 スマホ以外にも便利な道具はいくらでもあるけど説明が難しいし紹介する必要も無いだろう。

「すごい世界だな……」
「まあ想像出来ないでしょうね、俺たちの世界の住人からしても、魔物が跋扈して魔法が存在する世界なんて御伽噺みたいなものですし」
「そういうものか……」

 俺の説明に納得したようにアンドレイさんは頷く。

「では俺たちは帝国に向かいますのでこれで失礼します……アレクセイ、また遊びに来るよ」
「待ってるよ。今度はサーシャとの子供を連れてきてね」
「産まれるまで来るなってことか?」

 軽く冗談を言い合って部屋を後にする。
 サーシャは真っ赤になって俯いていた。アレクセイのせいだな。

 玄関を出た所で今度は自宅の庭に向けて転移を発動、徒歩0分で帰宅する。

「ただいま」
「早かったわね……ってなんでサーシャちゃん真っ赤なの?」
「アレクセイにからかわれてね。じゃあ出発しようと思うんだけど……準備はいい?」

 俺がそう聞くと、全員が肯定した。

「そういえばどうやって行く?  帝都の目の前まで転移で行くことも出来るけど……それは不味いよな?」
「それは不味いわね。聖都の外まで転移してそこからウルトでのんびり行けばいいんじゃないかしら?」

 うーむ……さっさと行って迷宮を攻略したいんだけど……

「昨日も思ったけど、レオは少し焦りすぎよ。もっと余裕を持たないといざという時に失敗しちゃうわよ?」
「焦りすぎか……そうかもしれないな」

 一刻も早く帝国の迷宮を攻略して神の座に行くことばかり考えていたかもしれない……

 ベラやイリアーナも含め俺の願いは知っている。
 そればかり見ているのはよめーずみんなに失礼でもあるな。

 それにトラック運転手は焦ってはならない。
 焦ると碌なことが無いことは知っているはずなのにな。

「分かった、ちょっと冷静じゃ無かったかも……ありがとうリン」
「どういたしまして。貴方を支えるのがあたしたちの仕事なんだからもっと頼ってもいいのよ?」
「はは……頼りにしてるよ」

 さて、改めて出発しようか。

【傲慢なる者の瞳】を使って目標地点を確認、周りに人影無し。

「じゃあ行こうか」

 全員で円になり手を繋ぐ。
 しっかりと繋いでいることを確認して転移を発動した。
しおりを挟む
感想 194

あなたにおすすめの小説

元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~

下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。 二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。 帝国は武力を求めていたのだ。 フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。 帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。 「ここから逃げて、田舎に籠るか」 給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。 帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。 鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。 「私も連れて行ってください、お兄様」 「いやだ」 止めるフェアに、強引なマトビア。 なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。 ※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。

どうも、命中率0%の最弱村人です 〜隠しダンジョンを周回してたらレベル∞になったので、種族進化して『半神』目指そうと思います〜

サイダーボウイ
ファンタジー
この世界では15歳になって成人を迎えると『天恵の儀式』でジョブを授かる。 〈村人〉のジョブを授かったティムは、勇者一行が訪れるのを待つ村で妹とともに仲良く暮らしていた。 だがちょっとした出来事をきっかけにティムは村から追放を言い渡され、モンスターが棲息する森へと放り出されてしまう。 〈村人〉の固有スキルは【命中率0%】というデメリットしかない最弱スキルのため、ティムはスライムすらまともに倒せない。 危うく死にかけたティムは森の中をさまよっているうちにある隠しダンジョンを発見する。 『【煌世主の意志】を感知しました。EXスキル【オートスキップ】が覚醒します』 いきなり現れたウィンドウに驚きつつもティムは試しに【オートスキップ】を使ってみることに。 すると、いつの間にか自分のレベルが∞になって……。 これは、やがて【種族の支配者(キング・オブ・オーバーロード)】と呼ばれる男が、最弱の村人から最強種族の『半神』へと至り、世界を救ってしまうお話である。

異世界召喚された俺の料理が美味すぎて魔王軍が侵略やめた件

さかーん
ファンタジー
魔王様、世界征服より晩ご飯ですよ! 食品メーカー勤務の平凡な社会人・橘陽人(たちばな はると)は、ある日突然異世界に召喚されてしまった。剣も魔法もない陽人が頼れるのは唯一の特技――料理の腕だけ。 侵略の真っ最中だった魔王ゼファーとその部下たちに、試しに料理を振る舞ったところ、まさかの大絶賛。 「なにこれ美味い!」「もう戦争どころじゃない!」 気づけば魔王軍は侵略作戦を完全放棄。陽人の料理に夢中になり、次々と餌付けされてしまった。 いつの間にか『魔王専属料理人』として雇われてしまった陽人は、料理の腕一本で人間世界と魔族の架け橋となってしまう――。 料理と異世界が織りなす、ほのぼのグルメ・ファンタジー開幕!

【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』

ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。 全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。 「私と、パーティを組んでくれませんか?」 これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!

迷宮に捨てられた俺、魔導ガチャを駆使して世界最強の大賢者へと至る〜

サイダーボウイ
ファンタジー
アスター王国ハワード伯爵家の次男ルイス・ハワードは、10歳の【魔力固定の儀】において魔法適性ゼロを言い渡され、実家を追放されてしまう。 父親の命令により、生還率が恐ろしく低い迷宮へと廃棄されたルイスは、そこで魔獣に襲われて絶体絶命のピンチに陥る。 そんなルイスの危機を救ってくれたのが、400年の時を生きる魔女エメラルドであった。 彼女が操るのは、ルイスがこれまでに目にしたことのない未発見の魔法。 その煌めく魔法の数々を目撃したルイスは、深い感動を覚える。 「今の自分が悔しいなら、生まれ変わるしかないよ」 そう告げるエメラルドのもとで、ルイスは努力によって人生を劇的に変化させていくことになる。 これは、未発見魔法の列挙に挑んだ少年が、仲間たちとの出会いを通じて成長し、やがて世界の命運を動かす最強の大賢者へと至る物語である。

無魔力の令嬢、婚約者に裏切られた瞬間、契約竜が激怒して王宮を吹き飛ばしたんですが……

タマ マコト
ファンタジー
王宮の祝賀会で、無魔力と蔑まれてきた伯爵令嬢エリーナは、王太子アレクシオンから突然「婚約破棄」を宣告される。侍女上がりの聖女セレスが“新たな妃”として選ばれ、貴族たちの嘲笑がエリーナを包む。絶望に胸が沈んだ瞬間、彼女の奥底で眠っていた“竜との契約”が目を覚まし、空から白銀竜アークヴァンが降臨。彼はエリーナの涙に激怒し、王宮を半壊させるほどの力で彼女を守る。王国は震え、エリーナは自分が竜の真の主であるという運命に巻き込まれていく。

『辺境伯一家の領地繁栄記』序章:【動物スキル?】を持った辺境伯長男の場合

鈴白理人
ファンタジー
北の辺境で雨漏りと格闘中のアーサーは、貧乏領主の長男にして未来の次期辺境伯。 国民には【スキルツリー】という加護があるけれど、鑑定料は銀貨五枚。そんな贅沢、うちには無理。 でも最近──猫が雨漏りポイントを教えてくれたり、鳥やミミズとも会話が成立してる気がする。 これってもしかして【動物スキル?】 笑って働く貧乏大家族と一緒に、雨漏り屋敷から始まる、のんびりほのぼの領地改革物語!

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

処理中です...