2 / 58
また、失恋した件
しおりを挟む「兄貴!!」
静かなカフェの中に、大きなあたしの声が響き渡る。
夕方のこのカフェ「Green」には、今は女性客が数人しかいなくて。
このカフェの店長である、あたしの兄貴にここに入ってくるなりそう呼べば、
兄貴は何やらお客さんと楽しげに話していたけど、すぐに顔を上げて「おぉ、世奈」とあたしの名前を口にした。
そんな兄貴の名前は工藤勇斗、24歳。
あたし、工藤世奈の義理の兄貴で、バリバリの関西出身だ。
あたしは兄貴と目が合うと、顔を歪ませて言った。
「またフラれた…!」
「は…」
そう、あたしはついさっき失恋をしてしまったのである。
しかもまたその理由が、あたしの兄貴がイケメンすぎるからだって。
信じられない、あのヘタレ男!
「…ま、とりあえず落ち着けや。な?」
兄貴は優しい口調でそう言うと、あたしをカウンターの席へと案内する。
そしてすぐにオレンジジュースを用意すると、今にも泣きそうなあたしに兄貴が言った。
「突然やったな」
「…」
「…あー…と、ちなみに、何でフラれたん?」
兄貴はあたしにそう問いかけながら、あたしの隣の椅子に腰を下ろす。
あたしはその問いに、オレンジジュースを飲んだ後はっきり言った。
「兄貴のせいだからね!」
「!」
「兄貴がイケメンすぎんのがいけないんじゃん!」
あたしが怒ったような口調でそう言うと、兄貴はまるで「またか…」とでも言うように頭を抱えた。
実はあたしの兄貴、見た目も中身も全てパーフェクトで、イケメン以上に更にイケメンなのだ。
例えるなら誰だ?
…いや、わからない。
とにかくそこらへんの芸能人よりも、超カッコイイ。
兄貴は、身長178㎝でスラッとしたモデル体系であり、そのくせ程よく筋肉もついてるからまさに女性達の「理想像」だと思う。
そして真っ黒で染めていない綺麗なサラサラヘアの髪に、キリッとした眉、切れ長の目に鼻もスッとしてて高くて…
もう、とにかく何だろう。
兄貴は完璧すぎるのだ。
しかもそれだけじゃなくて優しいし、料理とかの家事だって全てこなす。
…だから、あたしはフラれたのだ。
全てがイケメンすぎる兄貴のせいで。
最初は元彼達のそんな気持ちがよくわからなかったけど、どうやらみんなは兄貴を見ると自分に自信をなくしてあたしを突き放してしまうらしい。
別にあたしの兄貴なんだから、何の問題もなくない?って元彼に聞いたことがあったけど、「そういう問題じゃないよ」って言われた。
…うん。女のあたしにはさっぱりわからん。
あたしがヤケ飲み状態でオレンジジュースを飲んでいると、しばらく黙っていた兄貴がまた口を開いて言う。
「…ほな、次の相手はアイツにしたらどうや」
「アイツって?」
兄貴の言葉に、?を浮かべるあたしに兄貴が悪戯顔で言った。
「決まってるやん!相沢健!」
「!!」
そんな兄貴のとんでもないアドバイスに、あたしは思わず口に含んでいたオレンジジュースを吹き出しそうになる。
「!?っ…バッカじゃないの!?アイツなんて絶対あり得ないし恋愛対象外だってば!!」
あたしはそう言うと、兄貴の肩をバシン、と叩いた。
相沢健とは、あたしと同い年の幼なじみだ。
昔からサッカーが大好きなサッカー馬鹿で、同じ学校に通っている今でもサッカー部に所属している。
それにサッカーが得意だし上手だから、女子によくモテているみたいで。
あんまり言いたくないけど…多分、イケメンなんだと思う。
「何でそんなにアイツを拒否んねん」
あたしがあまりにも拒否をするもんだから、兄貴がカウンターに肘をついてあたしにそう問いかけてきた。
「…だって、」
「アイツ、めっちゃええ奴やで?優しいし、人の痛みがわかるし、それに何よりな…」
兄貴が何かを言いかけたけど、あたしはアイツの話は聞きたくなくて無理矢理その場を終わらせた。
「兄貴、もういいよアイツの話は」
「…そか」
あたしは、アイツ、健のことが昔から大嫌いだ。
幼稚園の頃は凄く優しくて、いつもあたしを助けてくれてたヒーローだったのに今は全然違う。
今は、優しさのかけらもない。
小学校にあがった頃からだったかな?
あたしが話しかけても無視しだして、返事をしてくれたかと思えば「うっせー」「黙れ」「あっち行け、ブス」とかそればっか。
あまりにもそんな冷たい態度ばかりとられるから、あたしはもうアイツのことが大嫌いになった。
だから、いくらアイツがイケメンすぎる兄貴の存在を知っていても、あたしはアイツとそんな甘い関係になるなんてまっぴらごめんだ。
考えただけで吐き気がする。
「はい、兄貴ごちそうさま」
「ん、」
あたしがそう考えながら空になったコップを兄貴に渡すと、兄貴はそれを受け取って店の裏に入って行った。
…あぁ、元彼の愚痴を兄貴に聞いてもらいにここに来たはずが、いつのまにかアイツの話になってしまった。
ってか、兄貴がいきなりアイツの名前なんて出すからいけないんだ。
そう思って椅子から立ち上がると、あたしは裏にいる兄貴に声をかけた。
「兄貴ー、あたし先帰ってるね」
何より、今は18時半をとっくに過ぎている。
早く帰らないと19時から始まる大好きなテレビ番組に間に合わないじゃん。
だから出来るだけ直ぐに帰りたかったのに、兄貴がさっきあたしが飲んでいたコップを洗いながら言った。
「え、嘘やん!?ちょー待って!これ洗ったらすぐあがるわ!」
「…」
……そしてそれから数分後。
店を他の店員に任せて、あたしは兄貴と一緒にカフェを出た。
あたしと兄貴は、マンションで二人暮らしをしている。
前はよくカップルが同棲してるだの新婚さんだのいろいろ言われたけど、なんとかちゃんと説明して今はそれも言われなくなった。
本当は、あたしのお父さんと兄貴のお母さんも一緒に暮らすはずだったんだけど、
あたしが高校にあがってすぐに、九州の方にお父さんの仕事の都合のため二人でそこに行ってしまっているのだ。
…気持ち、ちょっとだけ寂しいけど。
しばらく兄貴と二人で静かなところを歩いていたら、ふいに兄貴が言った。
「世奈」
「…うん?」
「失恋は、確かに悲しいし寂しいかもしれんけどさ、」
「…」
「でも、それをキッカケに次めっちゃええ奴に出会えたら、それって最高やん」
「!」
「せやから、今は耐えとけ。今のそれも何かの通過点や」
兄貴はあたしにそう言って励ますと、優しい笑顔でニッコリ笑う。
…あぁ、やっぱり兄貴はイケメンです。
細胞からしてもう、他の人とはつくりが違う気がします。
13
あなたにおすすめの小説
ポンコツ気味の学園のかぐや姫が僕へのラブコールにご熱心な件
鉄人じゅす
恋愛
平凡な男子高校生【山田太陽】にとっての日常は極めて容姿端麗で女性にモテる親友の恋模様を観察することだ。
ある時、太陽はその親友の妹からこんな言葉を隠れて聞くことになる。
「私ね……太陽さんのこと好きになったかもしれない」
親友の妹【神凪月夜】は千回告白されてもYESと言わない学園のかぐや姫と噂される笑顔がとても愛らしい美少女だった。
月夜を親友の妹としか見ていなかった太陽だったがその言葉から始まる月夜の熱烈なラブコールに日常は急変化する。
恋に対して空回り気味でポンコツを露呈する月夜に苦笑いしつつも、柔和で優しい笑顔に太陽はどんどん魅せられていく。
恋に不慣れな2人が互いに最も大切な人になるまでの話。
7月14日 本編完結です。
小説化になろう、カクヨム、マグネット、ノベルアップ+で掲載中。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
10年ぶりに再会した幼馴染と、10年間一緒にいる幼馴染との青春ラブコメ
桜庭かなめ
恋愛
高校生の麻丘涼我には同い年の幼馴染の女の子が2人いる。1人は小学1年の5月末から涼我の隣の家に住み始め、約10年間ずっと一緒にいる穏やかで可愛らしい香川愛実。もう1人は幼稚園の年長組の1年間一緒にいて、卒園直後に引っ越してしまった明るく活発な桐山あおい。涼我は愛実ともあおいとも楽しい思い出をたくさん作ってきた。
あおいとの別れから10年。高校1年の春休みに、あおいが涼我の家の隣に引っ越してくる。涼我はあおいと10年ぶりの再会を果たす。あおいは昔の中性的な雰囲気から、清楚な美少女へと変わっていた。
3人で一緒に遊んだり、学校生活を送ったり、愛実とあおいが涼我のバイト先に来たり。春休みや新年度の日々を通じて、一度離れてしまったあおいとはもちろんのこと、ずっと一緒にいる愛実との距離も縮まっていく。
出会った早さか。それとも、一緒にいる長さか。両隣の家に住む幼馴染2人との温かくて甘いダブルヒロイン学園青春ラブコメディ!
※特別編6が完結しました!(2026.1.21)
※小説家になろう(N9714HQ)とカクヨムでも公開しています。
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
天才天然天使様こと『三天美女』の汐崎真凜に勝手に婚姻届を出され、いつの間にか天使の旦那になったのだが...。【動画投稿】
田中又雄
恋愛
18の誕生日を迎えたその翌日のこと。
俺は分籍届を出すべく役所に来ていた...のだが。
「えっと...結論から申し上げますと...こちらの手続きは不要ですね」「...え?どういうことですか?」「昨日、婚姻届を出されているので親御様とは別の戸籍が作られていますので...」「...はい?」
そうやら俺は知らないうちに結婚していたようだった。
「あの...相手の人の名前は?」
「...汐崎真凛様...という方ですね」
その名前には心当たりがあった。
天才的な頭脳、マイペースで天然な性格、天使のような見た目から『三天美女』なんて呼ばれているうちの高校のアイドル的存在。
こうして俺は天使との-1日婚がスタートしたのだった。
とっていただく責任などありません
まめきち
恋愛
騎士団で働くヘイゼルは魔物の討伐の際に、
団長のセルフイスを庇い、魔法陣を踏んでしまう。
この魔法陣は男性が踏むと女性に転換するもので、女性のヘイゼルにはほとんど影響のない物だった。だか国からは保証金が出たので、騎士を辞め、念願の田舎暮らしをしようとしたが!?
ヘイゼルの事をずっと男性だと思っていたセルフイスは自分のせいでヘイゼルが職を失っただと思って来まい。
責任を取らなければとセルフイスから、
追いかけられる羽目に。
サクラブストーリー
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の速水大輝には、桜井文香という同い年の幼馴染の女の子がいる。美人でクールなので、高校では人気のある生徒だ。幼稚園のときからよく遊んだり、お互いの家に泊まったりする仲。大輝は小学生のときからずっと文香に好意を抱いている。
しかし、中学2年生のときに友人からかわれた際に放った言葉で文香を傷つけ、彼女とは疎遠になってしまう。高校生になった今、挨拶したり、軽く話したりするようになったが、かつてのような関係には戻れていなかった。
桜も咲く1年生の修了式の日、大輝は文香が親の転勤を理由に、翌日に自分の家に引っ越してくることを知る。そのことに驚く大輝だが、同居をきっかけに文香と仲直りし、恋人として付き合えるように頑張ろうと決意する。大好物を作ってくれたり、バイトから帰るとおかえりと言ってくれたりと、同居生活を送る中で文香との距離を少しずつ縮めていく。甘くて温かな春の同居&学園青春ラブストーリー。
※特別編8-お泊まり女子会編-が完結しました!(2025.6.17)
※お気に入り登録や感想をお待ちしております。
高嶺の花の高嶺さんに好かれまして。
桜庭かなめ
恋愛
高校1年生の低田悠真のクラスには『高嶺の花』と呼ばれるほどの人気がある高嶺結衣という女子生徒がいる。容姿端麗、頭脳明晰、品行方正な高嶺さんは男女問わずに告白されているが全て振っていた。彼女には好きな人がいるらしい。
ゴールデンウィーク明け。放課後にハンカチを落としたことに気付いた悠真は教室に戻ると、自分のハンカチの匂いを嗅いで悶える高嶺さんを見つける。その場で、悠真は高嶺さんに好きだと告白されるが、付き合いたいと思うほど好きではないという理由で振る。
しかし、高嶺さんも諦めない。悠真に恋人も好きな人もいないと知り、
「絶対、私に惚れさせてみせるからね!」
と高らかに宣言したのだ。この告白をきっかけに、悠真は高嶺さんと友達になり、高校生活が変化し始めていく。
大好きなおかずを作ってきてくれたり、バイト先に来てくれたり、放課後デートをしたり、朝起きたら笑顔で見つめられていたり。高嶺の花の高嶺さんとの甘くてドキドキな青春学園ラブコメディ!
※2学期編4が完結しました!(2025.8.4)
※お気に入り登録や感想、いいねなどお待ちしております。
明日のために、昨日にサヨナラ(goodbye,hello)
松田丹子(まつだにこ)
恋愛
スパダリな父、優しい長兄、愛想のいい次兄、チャラい従兄に囲まれて、男に抱く理想が高くなってしまった女子高生、橘礼奈。
平凡な自分に見合うフツーな高校生活をエンジョイしようと…思っているはずなのに、幼い頃から抱いていた淡い想いを自覚せざるを得なくなり……
恋愛、家族愛、友情、部活に進路……
緩やかでほんのり甘い青春模様。
*関連作品は下記の通りです。単体でお読みいただけるようにしているつもりです(が、ひたすらキャラクターが多いのであまりオススメできません…)
★展開の都合上、礼奈の誕生日は親世代の作品と齟齬があります。一種のパラレルワールドとしてご了承いただければ幸いです。
*関連作品
『神崎くんは残念なイケメン』(香子視点)
『モテ男とデキ女の奥手な恋』(政人視点)
上記二作を読めばキャラクターは押さえられると思います。
(以降、時系列順『物狂ほしや色と情』、『期待ハズレな吉田さん、自由人な前田くん』、『さくやこの』、『爆走織姫はやさぐれ彦星と結ばれたい』、『色ハくれなゐ 情ハ愛』、『初恋旅行に出かけます』)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる