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朝、いつもと違う時間に。
しおりを挟む家のドアを開けると、青い空と白い雲の光が目に飛び込んでくる。少しジリジリとし始めた日差しを避けて、セミが鳴く街路樹のアーチの下を自転車で駆け抜ける。肌に触る空気は日中と違ってまだ少しひんやり
していて気持ちがいい。
いつもの駅で、いつもの場所に自転車を置き、いつものホームで電車を待つ。
コトコト コトコト コトコト ……
線路から伝わってくる音が段々と大きくなり、遠くから踏切の鳴る音が聞こえ始めた。もうすぐ電車が到着する。
でも、今日はいつもとは少しだけ違う時間に電車に乗る。
周りにあまり人がいない。いつもだったら通勤・通学の人たちで座れないのに、今日は余裕で座れる。乗っている人たちも、なんだかゆったりしている。いつもは眠さや疲れを押し殺して寝ている人やとにかくスマホばかり見て暇つぶしをしているような人たちばかりなのに。たった30分違うだけなのに、こんなにも雰囲気と流れる時間が違うものなのかと思う。
窓の外を流れていく景色を見ていると、何度も見ているはずなのに「あれ?あんなのあったっけ?」って思わされるものが次々と目に飛び込んでくる。私も、他の人達からすれば「余裕がない人間」なんだろうなあって、ちょっと笑えてくる。
いつもの駅に降りると、いつもはなんだか難しい顔して足早に通り過ぎていく人たちでいっぱいの駅が、がらんとしている。そのかわりに見かけるのは、大きな荷物を持っている人や小さな可愛いリュックを背負った子ども連れの家族たち。やっぱりいつもの人たちに比べれば、少しゆったりとリラックスした顔の人たちが多い。
エスカレーターに乗って地下街に行ってみる。早めに開けたお店では、朝ご飯だろうか、トランクケースを持った人たちがご飯を食べ、カフェではのんびりコーヒーを飲んでいる人たちがいる。まだ開いていないお店の前では、お店の人がシャッターを開けてたりしている。行列も音楽もなく、人通りはまばらだ。
いつもの場所のはずなのに、ちょっと時間がずれるといつもの場所じゃないみたいな、この空気感と時間が私は好き。
だから今日はね、待ち合わせの時間を早めにしたんだよ。
君と一緒に、この時間を過ごしたかったから。
たまには良いでしょ?
お店とか商品を見るんじゃなくて
空気感と時間を味わうのも。
あと、いつもと違う服を着てみたんだけど…どうかな?
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