すきま時間にShort Love Storyを。

辻堂安古市

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マケズギライ。

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 秋も深まる11月……いやいやいや。
 なんかここんとこ秋ってチョー短いんですけど?


 ─────────────────────────

 1月→                 →12月

 冬・冬・春・春・夏・夏・夏・夏・夏・夏・秋・冬

 ─────────────────────────


 って感じなんですけど?
 どうなってるんでしょうね?
 深まるもクソもねーよ!

 もうちょっとこう、落ち葉とか夕日の中をイイ感じで二人で歩くようなシチュが沢山あってもいいと思うんだよ。それなのにいつまでもダラダラと暑い日が続くもんだから、「歩く」という行為自体したくなくなるし。別に暑いからと言ってプールも海も開放延長するわけでもないし!


 学生の時間は短いんだぞ?
 高校生なんか3回しかないのに、しかも来年は受験生だからそんなのんびり歩くなんて余裕なくなるだろうし!
 チクショー秋を返せぇぇぇぇぇ!


「……夕貴ゆうき、さっきから何ブツブツ言ってんの?」

「……長い夏に恨み言を少々」

「まぁ今年も暑い日が長かったもんねぇ。こうやって歩くのも久しぶりのような気がする」

「だろー?乃秋のあも『外歩きたくないー!』って言うから、バスばっか乗ってたし」

「ホントだよー。暑いと余計日焼けする気がするしね。……ってさっきから夕貴、『本題』から目を背けてなーい?」

「……ナンノコトデスカ?」



 いきなり愚痴から始まってしまったが、ここで言う『本題』とは実は先日行われた「期末試験」で、「来年は受験があるから、今から学力向上を目指して勝負しよう!」という約束の……結果照合。



 いやでもなあ。
 努力家の乃秋に叶うわけないんだよ。
 こちとら自慢じゃないがノートは後から人に借りてコピる主義なんで。
 
 ……なーんて事言ってたら、「来年受験なのに!それじゃダメじゃん!」って言われて強制的に乃秋との「試験タイマン勝負」が始まったんだよなあ……。ここで手を抜いたら最悪「お別れしましょ!」って事になりかねんから、俺なりに今回は頑張ってみたんだけど、多分勝ててはない、ハズ。まぁ仕方ない。諦めてここはいざぎよく散ろうじゃないか!ちなみに乃秋は理系クラス、こっちは文系クラスだ。




「よし、後は野となれ山となれ。勝負!」
「私が負けるはずないけどね?」
「先に言うなよ、そんなん」




【国語】

「90」
「89……!1点差か~」
「でもあんま変わらないじゃん」



【数学】

「92」
「……言いたくない……パス!」
「ダ~メ!何点?」
「………10点………」





「……なんかゴメン」
「……いや、流石にもうちょっと頑張るわ……」




【英語】

「89」
「78」
「よっし3勝確定ー!」
「英語好かん…でもこれでも頑張ったんだぞ」




【社会】

「いや、これ世界史と日本史で授業違うじゃん」
「一応何点だったか確認だけ。私85」
「こっち80。『大仏の頭が何代目?』とか入試に出ねえよ!」
「……ちなみに何代目なの?」
「3代目らしい。初代はもっと細面でアフロだったらしいぞ?」
「ナニソレ」



【理科】

「なんか今回の生物、90点台3人しかいないって言ってたな」
「そー。私そっち方面(生物科学系)に進みたいのに今回90とれなかったんだよねー」


 おっとぉ?


「ねぇ何点だったの?」


 うーむ。嘘は言えないし……仕方ない。


「89」
「……!」


 あ。

 固まった?

 んでもって黙って向こうむいてぇー?





 ダーッシュ⁉
 ちょっ、待てっておーい速いな!


 
 ……おおおおお……

 いや生物には人一倍かけているのはわかってたし、マケズギライなのも知っているけど、まさかここまでとは。

 いやでもどーしよう?


 ……ん?

 向こうから女子の集団がこっちへ。
 なんか皆さん結構怖い顔していらっしゃる。
 なんかあった?




 あ。
 目が合った。

 おや?
 心なしか加速して?


「「ちょっとどーいうことなのよっ⁉」」


 げ?俺?
 どーいうことも何も心当たりサッパリないんだけど?


「さっき泣いてたのよ乃秋!机に突っ伏して話聞けないし!何かあったの?」


 あー……ナルホド。
 そーいうことか。


「いや実はだな、テストの勝負でよりによって『生物』だけ俺が勝っちゃったもんだから…」

「「……あ~~~~……なるほどね……」」


 ダカラ俺ワルクナイ。OK?


「う~ん……乃秋のマケズギライも大概だからねぇ…分かったこっちでフォローしとくわ」

「よろしく~」

「でも放課後はそっちが責任もってよね?」

「…デスヨネー」

 




 


◇◇◇



「トータルは完全に俺の負けだから別にいいじゃん……」

「ダメー!他のはまだしも『生物』は負けたくなかったんだもん!」


 やれやれ。

 ぷーっと膨れっ面をしている乃秋の頬っぺたを人差し指で押してぷすーっと空気を抜く。
 ちょっと赤い顔して上目遣いに睨んでくるこの顔は……まぁ、なんて言うか、カワイイ。
 これならもう大丈夫だろ。


「で?『負けたほうがオゴリ』だったけど、何にする?」

「そーねぇ……じゃあ、『新SUN』のフルーツパフェで」


 げ。


「ちょい待ち。マ〇クシェイクじゃダメ?」

「ダ~メ!」

「それ幾らすると思ってんだ⁉」

「イヤなら今度からちゃんと勉強してよね。一緒の大学、行きたいじゃん」


 あ~……そうか。そうだよな。
 それでこんな勝負を言い出したのか……
 

「ゴメン、少し本腰入れて勉強することにするよ」

「ん。約束だからね?じゃあお店いこっかー」

「そこはマケテくれないんだな……!」


 まぁいいか。
 乃秋のこの笑った顔を見れるんなら安いもん……いややっぱ高いわ!

 






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