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2 合言葉はサンタクロース
しおりを挟む「まったくお前は出来が悪いなあ!」
「そうそうぜーんぶあんたが悪いのよ!」
そういってこの人達は今日も笑って私をぶつんだ。
1回。
2回。
3回。
避けるともっとぶたれる。
だから私はぶたれて、ふっとぶ。
そうした方が早く終わるから。
「えへへ…ごめんなさい」
私は笑って
謝って 謝って
泣かないようにしてきた。
泣くともっとぶたれるから。
私が悪いんだ。
もっと良い子にしてたら
ぶたれないよね?
痛いのはいやだもん。
がんばらなきゃ。
もっと もっと。
だから神様
お願いします。
助けて下さい。
サンタクロースさん
一度でいいから、来てください。
いっぱいお祈りするから
私のところへ来て下さい。
でも……
でも……
(叫ばねえと届かねえぞ)
あのちょっと怖そうだけど優しいおじちゃんはそう言ったよ。
叫べって言った。
祈っても届かないって。
私だって 生きてる
私だって 私だって……!
「合言葉は……サンタクロース……」
「はぁ?なんだって?」
「あんたのとこにサンタなんか来ないわよ!だいたいサンタなんて……」
私だって 生きたい!
だから…! 叫ぶんだ!
「サンタさーん!助けて―!」
「てっめえ!大きな声出すなってあれほど…!」
負けない!
負けたくない!
私だって
私だって……!
「よくできたな」
そう言ってドアをけり破って入ってきたのは、サンタさんじゃなくて、さっきのおじちゃんだった。
「誰だ!ドア壊しやがって!」
「サンタは子どもにプレゼントやるためなら不法侵入上等だろ?大目に見ろよ」
「ふざっ……!」
俺がゆっくり銃口を向けたところでそいつらの口と動きが止まる。
こいつらはいつもそうだ。
逆らわねぇと思ったらやりたい放題。
「自分は正しい」
「お前が悪い」
って念入りに刷り込ませていく。
そのうち相手はその鎖に絡めとられ、思考を失う。
それを打ち破るには、より強くなるしかない。文字通り、死んでもいいという覚悟で。
────あるいは、何をしても生きたいと強く願うか、だ。
優しさ?
助け合い?
友情?
ああ、それは大切なんだろうよ。
けどな。
そのキラキラな光で隠されたドス黒さは見えてるか?
唯一信頼できると思って相談していた奴が
翌日には秘密をばらし、嘘を振りまいている
苦楽を共にした友人と思ってた奴が
裏ではクソみたいに言いたい放題言っている。
仲間だと思ってた奴らが
嘘っぱちな話を信じて爪弾きにする
次の日の保証なんてどこにもない。
この世は強者の思うがままだ。
そしてそんな強者に媚び諂う奴らが、御機嫌取りのために弱者を甚振る。
そして高らかに言うんだ。
「オマエが悪い」と。
弱者の声は、神になんて届きはしない。
誰も聞きはしない。
だから俺は「悪党」になったんだ。
「メリークリスマス。お前らにはコイツをくれてやる」
俺はそいつらの口の中に銃口をねじ込んだ。
ガタガタ震え何かモゴモゴ言ってるが、知ったことか。
ガチャリ、と撃鉄をあげる金属音が部屋に響く。
───ああ、その顔だ。ガキがしていた顔と一緒だ。
「その顔で、てめえらも笑うのか?」
なあ、神様よ。
本当にいるんなら、ちゃんと見ておけ。
お前の作った嘘っぱちな世界を、俺は信じない。
俺は人差し指に力を籠める。
そして ── 銃声が鳴り響いた。
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